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【動画】流通経済大のメソッドとは?クロスからのゴールを奪う為のシュート精度向上、テニスボールを使ったインパクトトレーニング

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『インパクトトレーニング』


 大学サッカー界に常に一石を投じる存在。それこそが流通経済大だ。中野雄二監督の就任から今年が20年目。歴史ある名門大学と肩を並べ、ピッチ内外問わず挑戦を続ける。「生きていくというのはどういうことか、スポーツを、サッカーを通じて学んでほしい」と語る指揮官の下、流通経済大の“メソッド”は創られている。

 2017年の部員数は210名。大所帯だが細やかな指導ができるのが流通経済大のひとつの強み。中野監督に加え、10名のコーチ陣やコンディショニングアドバイザー、フィジオセラピストらが選手たちを見守る。大学の指導者といえば、OBが務めることが慣例となりつつあるなかで流通経済大は異色。中野監督が法政大、その他のコーチ陣も筑波大国士舘大専修大仙台大と出身校はさまざま。今季からは系列高である流通経済大柏高の“永遠のライバル”ともいえる市立船橋高出身の遠藤大志GKコーチも就任した。

 キャリアが違えばサッカーに対する考え方にも違いは出る。それでも大所帯のコーチングスタッフが一つの組織としてまとまっているのは、中野監督の強いカリスマ性があってこそ。大平正軌コーチは「これだけサッカー観の違う人間が集まるとそれぞれが不満分子になってしまいがちだけど、うちはそうならない。あのくらい監督の個性がないとまとまらない」と言う。ライバル校のスタッフを迎え入れるなど、一見、タブー視されかねないやり方だとしても、中野監督は気にしない。肩書きやキャリアよりも、“人”を見ての人材登用。それこそが流通経済大のやり方だ。

 日々の練習では、それぞれのコーチが目を光らせては声をかける。選手の人数が多いからといって、一人あたりの練習濃度が薄くなることはない。練習後の時間を使っての個人練習も行われており、現在は全日本大学選抜FWジャーメイン良(3年=流通経済大柏高)が大平コーチとともに、テニスボールを使ったトレーニングに励んでいる。

 裏への抜け出しや、しなやかなドリブルで持ち込んでのシュートに特長のあるジャーメインだが、クロスに対してのシュート精度には課題があった。大平コーチは「当てればいいだけなのに面が作れていない」と判断。基礎に戻って面作りをするべきだということで浮かんだアイデアがテニスボールを使ったトレーニングだった。そして練習後の時間や昼休みを充て、特訓は始まった。

 大平コーチが手でトスをし、テニスボールを蹴らせてみると、上へ打ち上げてしまい、なかなかボールは枠内へ飛ばない。違和感を感じたコーチがジャーメインにリフティングをさせてみたところ、難なくクリア。では、なぜシュートはできないのか。思い立って股関節をチェックしてみたところ、可動域が狭く、まったく開けていなかった。リフティングをインサイドでやらせてみると、「案の定できず。面をつくれていないからボールがあっちこっちに散っていた」。問題は股関節の硬さにあったのだ。

 一つひとつ原因を解明し、インサイドでのリフティングができるようになると、股関節の可動域も広がり、しっかりと面も作れるようになっていった。練習開始当初は枠を捉えることもままならなかったが、徐々にゴール内に設置したベンチにも当たるようになった。

 ジャーメインは「ポイントとしてはしっかりとボールを見るというのと、普通のサッカーボールより小さいので足の芯で当てないといけない。それを意識してやっています」と言う。このトレーニングを行うことで「普段の練習のときから、サイドからボールが来たときに身体を被せて足の芯に当てるというのを意識している。そのおかげで、他の選手よりボールが上に浮かなくなりました」と手応えを語る。

 流通経済大にはSB小池裕太(2年=新潟ユース)やMF久保和己(2年=流通経済大柏高)、MF池田紘大(2年=旭川実高)といったライナー性のクロスが持ち味の選手がいる。彼らのパスを“アシスト”にするためにもトレーニングを続けていく。新たなる武器を見につけたジャーメインが流通経済大の最前線で輝きを放つ日は近い未来にやってくる。


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