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ボヌッチ抜けたディフェンスラインも…ユベントスはパニックに陥る必要などない

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ボヌッチ抜けたユベントス

 守備の要をミランに放出し、プレシーズンマッチではバルセロナに敗れたが、マッシミリアーノ・アッレグリ率いるユベントスのバックラインにはクオリティの高い選手が揃う。焦る必要はないはずだ。

■トラブルの兆候?

 ヨーロッパサッカーでは物事を精査するのに理由はなく、時間もかけることも得てしてできないことが多い。では、ワールドクラスのセンターバックを国内のライバルに放出したクラブはどうか? そのような動きをしてしまった後、チームは懐疑的な目に晒される。ましてや堅守を売りにしてきたユベントスがネイマール一人に蹂躙されてしまったとあれば、トラブルの兆候とみなされても致し方ないのかもしれない。

 ユベントスは23日、メットライフ・スタジアムでバルセロナとのプレシーズンマッチ初戦に臨んだ。1-2で敗れたが、監督であるアッレグリはある質問をすぐさま受け流した。その質問はもちろん「レオナルド・ボヌッチの抜けた穴はどれほど大きいのか」というものだ。

「今夜の試合は我々にとって初めての試合だった。だから結果は重要ではない」

「明日から、8月13日にローマで行われる試合(スーペルコッパ・ラツィオ戦)に向けた準備を始める」

「やるべきことは山ほどある」

 彼の言う通りである。ユーベがチャンピオンズリーグ決勝でレアル・マドリー相手に1-4で敗れてからわずか7週間が経過したに過ぎず、スーペルコッパのラツィオ戦まではまだあと3週間も残されている。

 プレシーズンツアーのためにアメリカに集まったメンバーはバルサの誇る攻撃力に対峙する前にはほとんどチームとして一緒にトレーニングを行う機会がなかった。82104人の観衆が詰め掛けたスタジアムは素晴らしい雰囲気に包まれていたが、ユベントスの準備不足は明らかだった。プレシーズンのこの段階では、タレント軍団が戦術を重視するチームより勝るのはすでに広く知られたことではないだろうか。

 ネイマールとリオネル・メッシは前半、実験的なユーベのラインナップを見事に切り崩したが、本調子ではないユーベも後半は彼らのリズムで試合を進めることができていた。CKからのヘディングでゴールを決めた途中出場のDFジョルジュ・キエッリーニはディフェンスラインに安定感をもたらす。そして同様に後半から出場したミラレム・ピャニッチパウロ・ディバラゴンサロ・イグアインの攻撃陣もバルサの守備陣を苦しめていた。

「これがこのチームとして初めての試合だったことを考えると、良いプレーをしたと思う」

「集まったばかりの状態で、すぐに試合をするのはいつだって難しいことだ」

 アッレグリは試合後にそう語った。間違ったことは言っていない。

 もちろん、ボヌッチはディフェンダーとして最高クラスの選手だ。彼の予測能力、フィジカルの強さ、そしてフィードの精度は、現代型のCBとして完成されていることを示す要素であり、4000万ユーロ(約52億円)という移籍金はミランにとってはバーゲン価格のようなものである。

■ボヌッチ不在でも堅守に影響はない

 ユーベのディフェンスラインはたった一人の選手に左右されていたわけではない。昨季優勝を果たしたセリエAで喫した失点は38試合で「27」。カーディフで行われた決勝を除くチャンピオンズリーグの試合では12試合でわずか3失点しか奪われていない。

 もしボヌッチが7シーズン過ごしたユーベとのすでに昨季から関係が崩れ始めていたのであれば、そのような結果にはならなかっただろう。アッレグリの下でユーベは強固な守備ユニットを築いた。スペースを埋め、少しずつ確実に相手アタッカーを抑え込んでいった。選手個々も、システムも進化し、その結果として鉄壁要塞を作り上げたのである。

 キエッリーニ、アンドレア・バルザーリメフディ・ベナティア、そして22歳のダニエレ・ルガーニらユーベにはクオリティの高いセンターバックがまだ揃っている。右サイドバックのダニエウ・アウベスの抜けた穴はすぐさまマッティア・デ・シリオを獲得することで埋め、またステファン・リヒトシュタイナーもそのポジションには控えている。チェルシーからの興味がうわさされ、ユーベとの契約延長をまだ決断していないと言われている左サイドバックのアレックス・サンドロを残留させられれば素晴らしいことだ。ゴールマウスを守るジャンルイジ・ブッフォンはいまだに健在であり、新たに獲得したボイチェフ・シュチェスニーはバックアッパーとしては最高峰のレベルにある。

 確かにユーベはまだボヌッチの代わりを移籍市場で探すことができる。時間も金もあるはずだ。しかし今それをすべきだろうか? まだパニックに陥るには早すぎる。

「ディフェンスはよかったと思う」

「もし移籍市場で我々にとってプラスとなるような選手がいれば、それは素晴らしい。もしいなければ、いまのままでも十分良いと思っている」

 アッレグリの言葉からは、一人の放出で慌てるなという意思が透けて見える。ボヌッチが世界最高のCBの一人だとしても、ユベントスはまだ焦る必要などないのだ。

文=トーマス・フロイド/Thomas Floyd

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