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大会中の負傷から戻ったユニバ代表MF三笘薫、鋭い個人技でPK奪取し先制点

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大会中の負傷から復帰、結果を出してアピールした筑波大MF三笘

[8.27 第29回ユニバーシアード競技大会・台北大会準決勝 日本代表3-1メキシコ代表]

「お待たせしました」といったところだろうか。戦列復帰したアタッカーは、鋭い個人技で貴重な先制点を生み出した。第29回ユニバーシアード競技大会・台北大会の男子サッカー準決勝が27日に行われ、ユニバーシアード日本代表は3-1でメキシコを破って、3大会ぶりの決勝進出を決めた。先制点は、自ら獲得したPKをMF三笘薫(筑波大2年=川崎F U-18)が決めたものだった。

 ターンオーバー制で全員が2試合以上に出場する中、三笘は第2戦のカナダ戦で左足首を負傷したため1試合の出場に留まっていた。宮崎純一監督(青山学院大)は「負傷で2試合空いて『もっとやりたい』という気持ちが募ったところでの先発起用になった。最初は、だいぶ硬くなっていましたけど、前半の最後にやってくれた。(相手が一人、ピッチ外に出ていた時間帯で)きん差の勝負は、少しでも相手の隙を突かないといけない。思い切って突いてくれた三笘を褒めたい」と大会終盤に戻って来たアタッカーを称えた。

 負傷直後は歩けないほどだったというが、治療の甲斐あって回復。三笘は「ドクターたちのおかげで痛みはなくなった。決勝トーナメントには間に合わせたいと思っていたけど、準決勝になってしまった。ケガをして迷惑をかけた分、今日は結果を出さないといけないと思っていた。得点で一つ貢献できた」と復活をアピールした。

 PKを獲得したのは、武器としているドリブルだ。優位に試合を運びながらも無得点だった前半の終了間際、左からカットインで中央へ侵入すると、右足のシュートコースを消しに来た相手の逆を取って、左足から縦に前進。ペナルティーエリアに侵入すると、焦った相手がファウルを犯した。

 得点以外にも、ドリブルで台湾の人々を何度も沸かせた。しかし、三笘は、ドリブルで沸かせるだけでは満足できないという。川崎F U-18からトップに昇格できるだけの評価を受けながら大学を進路に選んだのは、自分の長所を伸ばすためだけでなく、むしろ弱点を克服するためだ。

「今のままでは、プロでは通用しないと思った。体力もスプリントも足りない。ボールを持ったらできるけど、持たなかったらできないというのでは、いけない。課題は分かっている。大学では時間を作って自分を見つめ直せる。今はまだ、プロである程度はできても、違いを作れるかというところになるとまだ足りない」と課題を挙げる。

 より力強く、ドリブルだけでなく、あらゆるプレーで沸かせる選手になる。同じ2年生でユニバーシアード日本代表のチームメートとなったドリブラーには刺激を受けてイメージを膨らませている部分もある。

「ドリブルのイメージが付くことは悪くないと思うけど、パスもシュートもできないといけないし、ゴールを決めないといけない。ドリブルだけじゃなくて(ドリブラーでもFWとして活躍している)旗手怜央(順天堂大2年=静岡学園高)みたいにゴールを決めて結果を出せる選手にならないといけない」

 だから、PKは譲らなかった。チームのエースで大学の先輩でもあるFW中野誠也(筑波大4年=磐田U-18・磐田内定)が「いいですって遠慮する感じだったら自分が蹴ろうと思いましたけど、アイツが蹴りたいかなと思って」と渡したボールを受けた三笘は「誠也君……誠也さんが渡してくれたし、自分も蹴ってやろうと思っていた。ここは自分でと思った」とキッカーを務め、ゴール右にしっかりと決めた。

 川崎の育成組織で常に中心を担って来た三笘は、天皇杯でJ1の仙台から2得点を挙げるなど、能力の高さはすでに証明している。しかし、見据えているのはプロの世界での即戦力であり、その先での活躍だ。

 三笘は「ユニバは、世界で自分の技量を測れる大会。(大学4年で迎える)次のユニバに向けても大事だし、自分の成長のきっかけにもなる。プロに行くなら、世界でできないといけない。(世界に通じる)アタッカーとして生き残れるように頑張りたい」と話した。見据えるステップを踏んでいくために、まずはユニバの金メダル獲得を狙う。

(取材・文 平野貴也)
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