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“赤点”の出来ながらもしぶとく勝利。長崎日大が接戦をものにし、3度目の選手権出場に王手

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タイムアップと共に安堵の表情を浮かべる長崎日大の選手たち

[10.22 選手権長崎県予選準決勝 創成館高 1-2 長崎日大高 大村市古賀島スポーツ広場]

 第96回全国高校サッカー選手権長崎県予選準決勝が22日に行われ、長崎日大高創成館高に2-1で勝利。来月12日に行われる決勝進出を決めた。

「『やりたいことができたんです?』と聞かれたら、今日は赤点だった」。試合後、亀田陽司監督が苦笑いしたように、長崎日大が苦しみながらも決勝行きのチケットを手にした。苦戦の理由は、台風の影響による強風と創成館が繰り出した“長崎日大対策”だ。普段とは違う3バックを採用し、奪ったら素早く前線にロングボールを入れる創成館の戦いに付き合った結果、「もう少し意図を持って試合をコントロールしたかったけど、お互いに長いボールを蹴り合って、ゴール前での球際のバトルで勝負が決まってしまう感じだった」(亀田監督)。

 長崎日大はロングボールの蹴り合いによって、試合開始から一進一退の展開が続く中、前半24分にはMF長濱虎太郎(3年)に遠目からFKを直接決められてしまう。だが、前半35分に高い位置でボールを奪ったMF田口凌(3年)のパスから、FW高比良慶太(3年)がゴール前へ抜け出し、同点ゴール。「前半のうちに追いつけたのが大きかった」とFW吉川稜也(3年)が振り返ったように、価値ある一撃を決めたことで後半への望みを繋いだ。

 風が弱まった後半は、両者持ち味を活かした攻防が続いた。先に見せ場を作ったのは、創成館。司令塔の長濱を起点に積極的に前線にパスを入れると、FW井川幸人(2年)やMF田中遥斗(2年)らがバイタルエリアで切れ味鋭いドリブルを披露。17分には田中の突破から井川へのスイッチで見せ場を作ったが、ラストパスが合わず、シュートは打てなかった。

 対する長崎日大も後半に入ってからは、吉川が「今年は前に速い選手が揃っているので、ドンドン仕掛けることを意識している」と話す崩しが増加。ボール奪取から田口やMF牧村拓(2年)がサイドに配球し、吉川と高比良が積極的にドリブルを繰り出した。すると、20分には左サイドで仕掛けた吉川のパスから途中出場のFW石見和偉(3年)が決めて勝ち越しに成功。以降はピンチも見られたが、守備が集中を切らさず逃げ切り、2-1で勝利した。

 長崎日大は、1996年に亀田監督が就任して以来、強化を続けてきた。「厳しさ・激しさと楽しさ・美しさの共存」を信念に魅せるサッカーと戦う姿勢を求めた成果が実り、2008年に念願だった選手権初出場。2011年には2度目の出場を掴んだが、以降は接戦での弱さが仇となり、長崎総合科学大附高に4度の選手権出場を許した。

 ただ、今年は亀田監督が「今年は人間的にブレが少ない選手が多い。全国に出られるという確信とまでは言えないけど、手応えはそこそこある。バスで静かすぎるので、もうちょっとコミュニケーションが増えてくれば“お前らは絶対に全国に行けるよ”と言える。僕に似て、“お利口さんすぎる”から後はそこが変わって欲しい」と評するように、例年以上に期待値が高い世代。選手権予選の準々決勝でも、延長戦の末に強豪・海星高を下すなど、例年のような勝負弱さは見られず、「今年の子たちは逞しさを感じる」と指揮官は話す。

 決勝戦の相手は今年、県のタイトルを2つ獲っている長崎総合科学大附。新人戦は準決勝で、インターハイ予選では決勝で逆転負けを許すなど苦戦は避けられないが、今年らしさである勝負強さを発揮し、3度目の正直を狙いにいく。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2017

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