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夏の屈辱から研ぎ澄ましてきたスタイル。全国でのリベンジ誓う三重が初の選手権出場に王手:三重

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FKから同点弾を奪い、喜びを露わにするFW藤村泰士(3年)

[11.4 選手権三重県予選準決勝 三重高 2-1 いなべ総合高 四日市中央緑地公園陸上]

 第96回全国高校サッカー選手権三重県予選の準決勝が4日に行われ、三重高がいなべ総合高に2-1で勝利した。11月11日の決勝では四日市中央工高と対戦する。

 夏の屈辱的な大敗から3か月。全国でのリベンジを狙う三重が初の選手権出場に一歩前進した。「相手に対して構えすぎてしまった」と伊室英輝監督が反省を口にしたように、序盤は相手のロングボールを想定し、後方に守備ブロックを敷いたが、いなべ総合が選んだ攻撃手段は地上戦。CB鈴木裕大(3年)らがDFラインからボールを動かしつつ、機を見てはFW伊藤陸(3年)とFW菅原寛斗(3年)へと縦パスを通し、チャンスを伺った。前半13分には、MF市川朝暉(2年)が伊藤と縦のワンツーで相手エリアを前進。遠目から思い切りよく放ったシュートが決まり、いなべ総合が先制点を奪った。

 出鼻を挫かれた三重も、ここからは最終ラインからの丁寧なビルドアップでゲームをコントロール。MF南出紫音(3年)のドリブルやMF榎本響(3年)とMF羽柴臨(3年)の両ウイングバックによる攻撃参加、そしてFW平嶋諒馬(3年)のスペースへの飛び出しで、いなべ総合を押し込んだが、「シュートまでは良い形で行けたと思うけど、何本打っても入らなかった」(南出)。同点弾が奪えず前半を終えた。

 1点を追いかける展開ながらも、「試合を追うごとに、ボールは持てるだろうという考えはあった」(伊室監督)と三重に焦りの色は見られない。遠目からのシュートが多かった前半とは意識を変え、「相手が嫌な所でプレーしようと考えた」(南出)。結果、ゴール前での仕掛けが増えると、後半6分に相手エリアを仕掛けた平嶋が倒され、FKを獲得。キッカーを務めるFW藤村泰士(3年)が、「ここで決めれば、流れが変わると思っていたので、しっかり集中していた」と冷静に放った一撃がゴール左隅に決まり、試合は振り出しとなった。

 この1点を機に攻撃の勢いは更に加速し、後半27分には南出が放ったミドルシュートがポストに直撃。こぼれ球からのシュートも再びポストに嫌われたが、、3度目は落ち着いてゴール前で繋ぎ、最後はフリーの羽柴がゴールネットを揺らして勝負あり。逆転勝ちをおさめた三重が四日市中央工とのファイナル行きを決めた。

 初の選手権出場にかける思いは例年よりも強い。2年連続で出場したインターハイは確かな手応えを持って、前橋育英高に挑んだが、0-7で完敗。「三重の代表として出させてもらったのに、7発もぶち込まれたのは不甲斐ない。悔しさは我々以上に選手自身が感じたと思う」(伊室監督)。

「球際や空中戦の強さ、相手を見るタイミングなどで上との差を感じた。普段通りやれば、ちょっとは通用したとは思うけど、みんな動揺して、思い通りのプレーができなかった」と振り返るのは南出。「もう一回選手権で全国に出て、絶対にリベンジしたいと思った」(南出)。夏の屈辱からは、持ち味であるポゼッションサッカーの質を高めると共に、練習でも球際の激しさに拘ってきた。

 成果は如実に表れ、選手権予選では県内最多となる3試合で25得点をマーク。「決勝も相手の研究はするけど、どれだけうちのサッカーで主導権を握ってやれるかが鍵」と伊室監督が話すように夏以降、懸命に研ぎ澄ました三重スタイルを全面に押し出し、頂点を狙いに行く。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2017

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