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“あと一歩”を分けた天然芝への適応…西武台監督「ほんの少しの隙間を埋めてあげたかった」

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PK戦の末に敗れた西武台高の選手たち

[11.4 選手権埼玉県予選準々決勝 武南高1-1(PK3-2)西武台高 駒場]

 試合を優位に進めたが、あと一歩のところで届かなかった。2010年以来の全国選手権出場を目指した西武台高は4日に行われた準々決勝の武南高戦、相手の倍以上にあたる13本のシュートを放ちながら1得点に終わり、PK戦の末に敗戦。すぐそこに迫った“あと1点”、そして“あと1本”が遠かった。

「勝たせてあげられなかった……」。守屋保監督は試合後、魅力的な攻撃を繰り広げた選手たちを思いやりながら、そうつぶやいた。「今年は素直な気持ちでやってくれる子たちが多い。試合のなかでみんなでコミュニケーションを取って、悪いところを解決してくれるチームです」。そのような言葉どおり、前半に出た課題を後半に解決し、終盤と延長戦はほぼワンサイドゲームを展開していた。

 ところが、解決できなかった課題が1つだけあった。「これまで天然芝のピッチであまりやっていなかったので、もうちょっとボールを蹴らせてくれば良かった」とピッチへの順応に苦心。「もうちょっとテンポを上げたかったのと、もうちょっとパスが速ければ……」と振り返った。

 西武台は今季、県リーグで武南と2試合を行い、9得点0失点の圧倒っぷりで連勝している。だが、いずれも人工芝のピッチで「ボールが速いスピードで抜けていってくれる」という環境だった。それがこの日は「蹴ってもボールが止まる」という事態が頻発。チャンスをつくりながらも微妙なミスが重なり、“あと1点”が得られなかった。

 またそれは、「ふかす」と「ダフる」が続き、“あと1本”に泣いたPK戦にも表れた。指揮官は「人工芝であれば浮かさないところを、天然芝では踏み込みが浅くなって浮かせてしまう」と指摘。「日頃から『天然芝では3cmくらい踏み込みを深くして蹴れよ』と伝えていた選手が失敗してしまった」と明かした。

 もっとも、ステージが上がっていくほど天然芝での試合が多くなることは承知のうえで、「毎回そこは気にしている」と配慮はしていたところ。しかし「頭の中に入っていても、それを持って冷静に戦えるかというのが勝負になる」とピッチ上で表現できるかという点に課題があり、指揮官は「そこにあるほんのちょっとした隙間を埋めてあげたかった」と悔やんだ。

 それでも、まだまだ悔しさを晴らすチャンスはある。埼玉県リーグ1部の西武台は現在、首位の昌平高と勝ち点で並ぶ2位。今月末に直接対決があるため、自力優勝の可能性も残している。「残りリーグ戦2試合、どういう気持ちでできるか。3年生が満足して終われるように、練習をしっかりやっていきたい」。惜しくも挑戦権を得られなかった“県内王者”に対し、ここまで無敗のリーグ戦で雪辱を果たす。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2017

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