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「東京五輪への推薦状」第50回:背中で語れる「昭和の子」。中京大中京の“小さな巨人”本山遊大

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中京大中京高本山遊大

 2020年東京五輪まであと3年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ

「昭和の子です」

 中京大中京高を率いる岡山哲也監督はそう言って自慢の息子を紹介するように、10番・本山遊大について語り始めた。

「もう本当に『いまの時代にこういう子がいるんだな』と思わせるような一所懸命さとひたむきさを持った選手なんです。いろいろな人に観てほしい選手だと率直に思っていますし、観る人が観てくれさえすれば彼の良さは絶対に分かってもらえるという確信もあります。プレーであれだけ味方にメッセージを伝えられる選手はなかなかいませんから」(岡山監督)

 11月11日に行われた選手権愛知県予選準決勝・岡崎城西高戦では右サイドハーフとして先発。積極果敢なドリブルでの仕掛けで目立ち、決勝点も彼の単独突破からのアシストで生まれているが、攻めだけの選手ではない。相手ボールに猛然と襲いかかって奪い返し、スライディングタックルで窮地を救うシーンもあった。「ドリブルには自信を持っていますし、自分の武器はやっぱり球際の強さや運動量だと思います」(本山)。攻撃も守備も“全部やる”ようなスタイル、その源泉は中学時代にさかのぼる。

 大会の資料に記載されている前所属チームは「愛西市立佐屋中学校」。強豪クラブチームの名前がズラリと並ぶチームにあって、ちょっと目を惹くものだ。実際、「こういう言い方はあれですけれど、やっぱりチームの中では結構飛び抜けた存在だったと思います」と本山は振り返る。「もう守備は一人で走り回って頑張って、攻撃もドリブルで自分が持って行くしかないみたいな試合が多かった。でも、そのおかげで鍛えられたし、いまのプレースタイルになれたと思います。中体連にいたからこそ成長できた部分は絶対にあります」と言う。

 実は小学校時代にクラブチームからの誘いも複数あったというが、「自分は母子家庭で、まだ小さかった妹の面倒を見る必要もありました。だから夜に練習するクラブチームは難しかった。お金も掛かりますから」と笑って言ってのけた。だが、地元の中学校チームで着実に力をつけた男を観る人はしっかり観ていたようだ。「ずっとあこがれていた」という中京大中京から誘いの声が掛かり、高校年代では県を代表するチームでプレーすることとなった。「もう妹も大きくなったので、遅くまで練習していても大丈夫なんです」と言う。

「すごくいい選手が就職活動中だと書いておいてください」と岡山監督も念押ししていたが、本人も「まずは実業団とか働きながらでもサッカーをプレーできるチームに入って、いつかプロになりたい」と熱く夢を語る。そのための大きなアピールチャンスだった夏の高校総体は第5中足骨の骨折で棒に振ってしまっただけに、選手権へ懸ける思いは人一倍だ。「絶対に選手権へ出ます」。

 熱いプレーで自然とメッセージを伝えることのできる中京大中京の小さな巨人。最後の全国舞台へチームとして挑む中で、自分自身の未来をもつかみ取りに行く。


執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
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