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清商の伝統受け継ぐ清水桜が丘が新たな一歩踏み出す!静岡学園破り、選手権初出場!

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初優勝を喜ぶ清水桜が丘高イレブン

[11.18 選手権静岡県予選決勝 清水桜が丘高 1-1(PK4-3)静岡学園高 エコパ]
 
 清水桜が丘が開校5年目で初優勝! 第96回全国高校サッカー選手権静岡県予選決勝が18日に行われ、清水桜が丘高が1-1で突入したPK戦の末、静岡学園高に4-3で勝利。全国優勝3回の名門、清水商高と庵原高が統合する形で13年4月に開校した清水桜が丘は、開校5年目で全国高校選手権初出場を決めた。

 名門・清水商の伝統受け継ぐ清水桜が丘が新たな一歩を踏み出した。清水商時代は選手権3回、インターハイ4回、全日本ユース(U-18)選手権5回の全国タイトルを獲得し、GK川口能活(現相模原)やMF小野伸二(現札幌)、名古屋・風間八宏監督ら数々の名選手を輩出。高校サッカー界を牽引してきた存在は清水桜が丘へ姿を変えてからも激戦区・静岡で存在感を示していたものの、全国出場は15年インターハイの一度のみだった。

 注目エースのFW白井海斗主将(3年)は「僕達の代は入学した時から桜が丘。(ただし、)『清商の時は強かった』と言われることが県内では多かった」と振り返る。その中で、選手、コーチングスタッフたちは過去を振り返るのではなく、少しずつ、前へ、前へと前進してきた。名将・大瀧雅良監督は「後ろを振り返ってもしょうがないですから。前を向いて行かなければいけない。校歌も変わって、いつまで経っても後ろの校歌を歌っている訳にもいかないですから、前へどういう風に進むかが大事」。この日の試合前、清水桜が丘の校歌を、胸を張って歌っていた選手たちがピッチで歴史を塗り替えた。
 
 決勝戦の対戦相手は、徳島内定MF渡井理己主将(3年)擁する“元祖技巧派軍団”静岡学園。人気チーム同士の対決ということもあって、会場のエコパスタジアムには雨の中、10,325人の観衆が集まった。5分、まずは清水桜が丘が決定機を作る。右MF渡邉唯人(3年)が斜めに入れたパスを白井が1タッチでPAへラストパス。これで抜け出したFW松永颯太(1年)が決定的な右足シュートを打ち込んだ。

 立ち上がり、MF川口慶祐(2年)やMF築地健人(2年)がセカンドボールをよく回収していた清水桜が丘は、その後も築地や白井がカウンターから一気に持ち上がろうとする。対して、静岡学園は後方からボールを丁寧に繋いでゲームをコントロール。ボールを支配すると、左SB東山達稀(3年)の縦突破などからチャンスも作り出した。

 試合は前半30分、注目MFのスーパーゴールによって動いた。敵陣中央でボールを持った静岡学園MF渡井理が、右前方へのドリブルでDF2人の間を抜け出す。さらに切り返しで1人、2人とかわすと、そのまま左足シュートをゴールへねじ込んだ。

 圧巻の4人抜きゴール。清水桜が丘の白井が直後のセットプレーの際、渡井理に対し、笑顔で「上手かったね。ビックリしたよ」と声を掛けたというほどのゴールだった。その後も静岡学園が主導権を握ってボールを繋ぎ続けるが、清水桜が丘は前半アディショナルタイムに相手のミスを得点に結びつける。静岡学園のサイドチェンジをインターセプトしたMF松下祐也(3年)が縦に仕掛けてそのまま左足シュートを放つ。このこぼれ球を1年生FW松永颯太が左足で押し込んで同点に追いついた。

 後半立ち上がりは清水桜が丘がカウンターからチャンスを作る。一方の静岡学園は前半同様にショートパスを繋ぎ続けるが、相手のカウンターを怖がってしまい、後方でボールを動かすばかりで縦パスの本数やSBの攻撃参加の回数が増えて来ない。川口修監督も「ウチらしくもっと行って良かった。カウンターがあるという心理になって、リズムが狂わされた」と指摘していたが、静岡学園は後ろに重いサッカーとなってしまう。

 清水桜が丘の守りに隙が無かったことも確か。CB勝村永遠(3年)を中心にパスコースを開けず、我慢強く守り続ける。選手同士の距離感が良く、そこへパスを通されても各選手が相手を2度3度と追い続けてその攻撃をスピードアップさせない。個々が責任感強い守備を見せる清水桜が丘は、数こそ少ないながらも白井や松永がカウンターからPAまで持ち込む怖さを示していた。

 試合は1-1のまま延長戦へ突入。その前半6分、静岡学園は渡井理の縦パスからMF清水綾馬(2年)が右足シュート。こぼれ球をFW伊藤稜馬(3年)が詰めようとするが、清水桜が丘DF陣の好守によって決めきることができない。

 延長戦でもスコアは動かず、決着はPK戦に委ねられた。ともに3人目が外し、静岡学園は4人目も失敗。だが、先攻の清水桜が丘は決めれば優勝の決まる5人目が外してしまう。それでも雨中の激闘は6人目に決着する。清水桜が丘の左SB大石悠暉(3年)が決めたのに対し、静岡学園6人目のシュートは枠上へ。この瞬間、清水桜が丘の初優勝が決まった。

 清水桜が丘は今季、プリンスリーグ東海で5連敗を経験。だが、10月の首位・名古屋U-18戦での勝利が変わるきっかけとなった。白井は「グランパス戦からみんなが止めないこと、やり続けることが勝ちにつながることが分かってきて、止めないプレーができるようになってきたので、そこが一番デカイと思います」。この日も名古屋U-18戦と同じようにボールを支配されたが、集中力を切らさずに自分たちがやるべき、パスコースを消す動き、球際の厳しいチェックなどをやり続けたことが勝利に繋がった。

 大瀧監督も「(選手権開幕前の)9月よりも物凄く成長している」と評した選手たちはさらに成長して選手権を迎えるはずだ。大瀧監督は選手権初優勝時の主将である千葉・江尻篤彦コーチたちからメールがあったことを明かし、「彼ら(清水商時代の選手たち)がつくってきたものが受け継がれて、次の代が受け取ることを示すチャンスですから。魂みたいなね、高校のスポーツはそこにあるんだという姿を見せたいですね」と語った。選手権は新しい歴史を築き始めた清水桜が丘が、伝統の力を受け継いでいることも示す機会だ。白井は「全国でも勝てば、『復活』という言われ方もすると思うので勝っていきたい」。全国で1試合でも多く戦い、“新たな名門”清水桜が丘の名を広める。

(取材・文 吉田太郎)
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