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藤枝順心、大会無失点で高校女子サッカー選手権を制覇!!2年ぶり3度目の「藤枝NO.1!」

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円陣時に続き、優勝を飾りスタンドのサポーターと共にNO.1ポーズで記念撮影する藤枝順心

[1.7 全国高校女子サッカー選手権決勝 作陽0-2藤枝順心 神戸ユニバー記念競技場]

 第26回全日本高等学校女子サッカー選手権大会決勝は、2年ぶり4回目の決勝進出となった藤枝順心高(東海2/静岡)が、初の決勝進出を果たした作陽高(中国1/岡山)を2-0で下し、3度目の優勝を果たした。

 前半、キックオフからしばらくしてからは作陽の時間帯が続いた。左SHに吐いたDF山田優衣(2年)が積極的なミドルシュートを立て続けに放つなど、前への勢いをそのままにフィニッシュに結びつける。

「相手の3トップに対して引くと好きにやられてしまう。だから、ハイプレッシャーをかけ、SBの攻撃参加も積極的にして、相手にやりたいことをやらせないようにしました」とは、作陽の池田浩子監督が試合後に明かしたプランだ。

 だが、藤枝順心も準決勝まで無失点の安定した守備で苦しい時間を耐える。すると前半40分、相手が中盤でスルーしたボールの連係が上手くいかず、ボールを奪ったFW今田紗良(3年)がドリブルでカウンター。ゴール前のFW青木なつみ(3年)がパスを受けると、左足で貴重な先制点を奪った。

「紗良はスピードもあるしいけると思ったのですが、自分も相手DFをひきつけつつゴールへ向かう姿勢をとろうと思ったらピンポイントでパスを出してくれました。狙った通りのゴールです」と青木は笑う。

 FWになったのは昨夏のインターハイ初戦から。それまではCBだったが、途中交代でいきなりFWと言われ「え?」と聞き返したという。選手権は1年時からメンバー入りしていたが出場は今大会が初めて。「今までは紗良が決めてくれていたけど、今日は彼女のマークがきつくなると思ったので自分がやってやろうと思った」会心の先制ゴールだった。

 先制し気持ちが楽になった藤枝順心は、前半終了間際にも追加点を奪う。45分、CB大村琴美(3年)のクロスがゴール前フリーのMF並木千夏(3年)へ。オフサイドかと思われたが作陽DFが残っておりプレーは続行。冷静にゴールへボールを流し込んだ。

「(作陽の最終)ラインは見ないで抜けたらいけました。前半は苦しんで、でも耐えてカウンターで1点取ったところで相手がバタついたので一安心しました」

「この2点が大きかった」と、藤枝順心の多々良和之監督は語る。「前半は押されて苦しい時間帯を耐えたところで効果的に点が取れた」。後半は気持ちをさらに押し出す作陽に対し、藤枝順心がいなす展開。藤枝順心はポゼッションも考慮に入れつつ、安定した守備で作陽の攻撃を防ぎ切った。

 90分間の試合を通して両チームとも集中力が高く安定したバランスを崩さず、攻守ともに互角の展開だったといっていい。だが、前半に作陽に見せた2度にわたる一瞬の隙がことごとく得点につながった。

 作陽の池田監督はチームの成長と手応えを感じつつ、悔しさもにじませる。「輝かしい舞台で選手に悔し涙を流させてしまったことが悔しいです。(作陽に流れがきていた)いい時間帯に点が取れなかったのが反省。ただ、この舞台で戦えた経験は彼女たちの人生にとっても糧になる。自信をもって次のステージで進んでほしいです。ここまで来れたのは先輩たちが残してくれたものが原動力になっている部分もあります。やり続けてきたことがあるからこの舞台に来られました。でも、優勝できなかったことにも意味はあるはずです」。

 一方、藤枝順心の多々良監督は「狙って取った優勝」だとホッとした様子。「(2年前の)前回の優勝はたまたまという部分もありました。優勝できるとは思っていませんでしたから。でも、今回はしっかりと狙いました。無失点で優勝できたことが一番うれしい。今大会で対戦した日ノ本学園高(関西1/兵庫)や大商学園高(関西2/大阪)もそうでしたが、大きくロングフィードして、そのルーズボールを拾おうとするチームが多い傾向の中、ルーズボール争いに負けなかったのが勝因です。ただ、今日は作陽さんにヘディングですらされたりと苦しみました」。

 前々大会の優勝後、インターハイでも優勝を飾った。だが、そこから勝てなくなった。選手権の前回大会は大商学園に0-2で敗れ、昨夏のインターハイでは決勝で日ノ本学園に0-1で敗れた。

「今年のチームは前回の選手権で大商学園に負けたところからのスタート。2年前の選手権は相手の良さを消すサッカーで優勝しましたが、それだけでは勝てなくなりました。それから、セットプレー対策など、ひとつひとつをコツコツと積み上げてきました。あれらの敗戦があるから今日があります」

 相手の良さを消すサッカーは今でも継続中である。だが、その内容はさらに突き詰められた。それを証明してみせたのが、日ノ本学園と大商学園にきっちりリベンジを果たしつつ達成した無失点優勝だったのだ。

 1年の時からチームの主力で、前回の優勝も経験している藤枝順心のキャプテンMF千葉玲海菜(3年)も無失点優勝を喜ぶ。「CB2人と自分、GKも含めて連係し合えたことが大きかったと思います。全員の守備意識が高いチームでした。最後に笑って終われて良かったです」ととびきりの笑顔だ。

 作陽も一方的に敗れたわけではなかった。公式記録のシュート数は藤枝順心の8本に対し9本。池田監督も「相手がやりたいことを抑えられた実感はあります。あとは自分たちの時間帯に点を取る攻撃力が課題です」と前を向く。「ここ(決勝)まで来られる自信はつきました。彼女たちが一歩一歩成長してくれれば日本一になれると思います」。

 2016年度のインターハイでの決勝進出に続く今回の選手権での決勝進出。一歩ずつ成績を上げていく作陽。ファイナリストに上り詰める回数も増えてきた。決勝の経験を増やした同校が今後どのような成長曲線を描くのかにも注目だ。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 伊藤亮)

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