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世界初の“ブラサカ”国際大会、アルゼンチンが初優勝!

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PK戦の末に優勝したアルゼンチン代表

 3月21日(水・祝)から25日(日)までの5日間、品川区の天王洲公園にて「IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2018」が開催された。

 第1回となる今大会は、世界ランク上位の6カ国が参加して行われた。出場国は、日本(世界ランク9位)、トルコ(同6位)、イングランド(12位)、アルゼンチン(同2位)、フランス(同14位)、ロシア(同13位)の6か国。出場6か国が3チーム・2グループに分かれ、1回戦総当たりのグループリーグを行い、各グループ3位同士が5位決定戦、2位同士が3位決定戦、1位同士が決勝戦に進むレギュレーションで行われた。

 桜咲き、晴天となった25日の決勝はグループBを2勝、8得点無失点と圧倒的な強さで勝ち抜いた世界ランク2位のアルゼンチンと、グループAを1勝1敗ながら得失点差で勝ち抜けた世界ランク12位のイングランドの対戦に。一進一退の攻防が続き白熱した試合展開に会場も大きく湧いたが、0-0のままタイムアップ。PK戦で初優勝の座を争った。

 先攻はイングランド。7番のブランドン・コールマンが狙い澄ましたシュートを、GKダリオ・レンシナが横っ飛びではじき出す。対するアルゼンチンは、マキシミリアーノ・エスピニージョが確実に決めて一歩リード。続くイングランドのキッカーが枠を外し、アルゼンチンのニコラス・ヴェリスがネットを揺らすと、同国代表と同じユニフォームを纏うセレステ・イ・ブランコの歓喜の輪が弾けた。

 得点王は、4点を決めたマキシミリアーノ・エスピニージョと、ダニエル・イングリッシュ(イングランド)の2人が受賞。ベストゴールキーパーはPKを含め1度もゴールを割らせなかったダリオ・レンシナが選ばれた。大会を通して、勇敢かつフェアプレー精神にのっとったプレーを見せた選手に与えられるTANAKA Great effort awardはトルコのハサン・シャタイ、MIPにはダニエル・イングリッシュが選ばれた。MVPに選出されたのは的確な縦パスと、機を見てのドリブル突破、強烈なシュートで攻守の要として活躍したフロイラン・パディジャ。その卓越したプレーは例えるなら“チケット代からお釣りが来る”代物。かつての同国フル代表の名手、フェルナンド・レドンドのような優雅な縦パスと危機察知能力、長髪をなびかせボールを滑らすように運ぶドリブルでブラインドサッカーを初観戦する観客の感嘆のため息と歓声を呼んだ。3位には、ロシアを1-0で下したトルコが輝いている。

■2年後のメダルを視野に、日本代表も華々しく輝いた

 2年後、東京パラリンピックでのメダル獲得を視野に大会に臨んだ日本も、大会を通して鮮烈な印象を残した。21日の初戦イングランド戦で、エース黒田智成が素晴らしい2ゴールを決め2-1と幸先の良い船出。23日のトルコ戦では引き分け以上で決勝進出が決まる優位な立場だったが、そのトルコ戦はアクシデントと、コンディション変化に泣いた。

 エース黒田が開始早々の接触プレーで耳を負傷。それでも押し気味にプレーを進める日本だったが黒田が途中でピッチを退くと、流れは徐々にトルコに傾いた。試合途中から雨足が強まりだすと、持ち前のパスワークに乱れが出始める。結局11分、17分と連続失点し、0-2とリードを許すと反撃及ばず試合終了。グループAはイングランド、トルコ、日本が1勝1敗で並んだが、総得点の差で日本は24日のフランスとの5位決定戦に進むこととなった。

 トルコ戦で負傷した黒田は左耳鼓膜穿孔(せんこう)で全治4週間の重症で、フランス戦の出場は叶わず。しかしフランス戦チームを鼓舞し続けた黒田の姿に、日本が奮い立った。

 世界ランク14位のフランスに、ポゼッションで圧倒する。川村、佐々木ロベルト泉、加藤健人のドリブル、パスワークで相手を翻弄すると、9 分には川村怜がゴールネットを揺らした。ガッツポーズをつくった川村は、高田敏志監督と、黒田の元に。コート内外で喜び合う2人のエースの姿は美しかった。1-0での勝利の瞬間、日本は全員で喜びを爆発。2年後、東京でメダルを目指すチームが世界の強豪相手に素晴らしい一歩を踏み出した。

 大会を振り返って高田監督は「海外の強い相手でも、チャンスは数多くつくることができた。あとは決定力。われわれは、自分たちが主導権を握って勝つ攻撃的なサッカーを目指している。(トルコ戦も)引き分け狙いで決勝に行けたという意見もあると思うが、われわれにはその選択肢はなかった。攻撃的に勝つ。2020年に向けて、選手もスタッフもそこは全員統一している」と力強く語った。

 ブラインドサッカー日本代表が志向するのは、守備でも攻撃でも主導権を持って、積極的に仕掛ける攻撃的サッカー。言葉にするのは簡単だが、その方法論は実に痛快で分かりやすい。相手陣内高いサイドで起点をつくり、背後にサポート。逆サイドに展開しシュートに持ち込む。守備時から攻撃の際には、素早いゴールスローで相手陣内サイド深くへと攻撃の起点となるボールを送り込む。攻撃の形、フィニッシュの形が見えているためゴールへの期待が自ずと高まる。

 大会5日間でのべ3千人を超える観客が観戦に訪れ、多くのボランティアスタッフも参加した。ブラインドサッカー体験教室やフードコートも大盛況。サッカーとスタジアムグルメを楽しむ家族連れも数多く見られた。

 同大会は引き続き、2年間同会場にて行われる予定だ。また、大会の映像は。[公式HP]で楽しむことができる。優勝したアルゼンチンの妙技、そして日本のプレーヤーの心技体揃った勇姿を堪能してほしい。

 最近サッカーから足が遠ざかっている方にはぜひ間近で見ていただきたい。ブラインドサッカーには忘れかけたサッカーの魅力、すべてが詰まっている。見ていただければ、その理由が必ず分かる。

「IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2018」
優勝:アルゼンチン
準優勝:イングランド
3位:トルコ
4位:ロシア
5位:日本
6位:フランス
[大会HP]

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