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[関東大会予選] 「普通の都立高校」狛江が日常から積み重ねて東京4強入り!!

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静かに勝利を喜ぶ狛江高イレブン

[4.21 関東高校大会東京都予選準々決勝 狛江高 0-0(PK5-4)大成高 駒沢2]

 平成30年度関東高校サッカー大会東京都予選準々決勝が21日に行われ、8強で唯一の都立勢・狛江高が0-0で突入したPK戦の末、5-4で大成高に勝利。狛江は28日の準決勝で関東一高と戦う。

 狛江の長山拓郎監督は「特別なことをしている訳ではないです。(準決勝進出は)奇跡ですね」と微笑む。特別な個がいる訳でも、上手い選手が揃っている訳でもない「普通の都立高校」。ただし、指揮官が「厳しい練習よりも厳しい私生活を送っている」という集団が激戦区・東京で4強入りの快挙を成し遂げた。

 初戦で選手権予選4強の東海大菅生高を1-0で破るなど2試合連続無失点の狛江に対し、大成は2回戦で15年度選手権全国2位の國學院久我山高を2-0で撃破。試合は個々の体力と技術、スピードで上回る大成が押し込む形となった

 センスある動きで攻撃の中心となっていたレフティーMF宮脇茂夫(2年)や鋭く相手の背後を狙うFW風岡信哉(3年)、左SB山梨雄也(3年)らがチャンスに絡む大成に対し、狛江は押し込まれていても最後のところで各選手の一歩が伸び、クロス、シュートを身体に当ててビッグチャンスを作らせない。特に曲木雄吉(3年)と奥村直木(2年)の両CBはクロスに対するポジショニングや身体の向きの準備が良く、しっかりとヘディングを遠くに飛ばして相手に連続攻撃をさせなかった。

「ヘディングとパスの質の追求、そして粘り強い守備の3つはとにかくやろう」と長山監督からアドバイスされているという狛江の守備は堅い。そして回数こそ少なかったものの、左の安藤貴大主将(3年)と右の伊藤潤(2年)の両SBの攻め上がりやセットプレーからシュートシーンも作り返していた。

 大成は後半、風岡やMF阪口駿(2年)が個で局面を打開してシュートまで持ち込んでいたが、最後まで諦めずに身体をぶつけてくる狛江DFの前にシュート精度を欠いてしまう。大成は延長戦でも宮脇の左足ミドルが会場をどよめかせたものの、GK八木下悠太(3年)が守る狛江ゴールを破ることができない。

 スコアは延長戦を含めた100分間動かないままPK戦へ突入。互いに4人ずつが決めて迎えた5人目、先攻・大成のシュートを狛江GK八木下が右へ跳んでストップする。直後、狛江FW前原龍太郎(3年)が右足シュートを決めて決着。狛江の選手たちは落胆する相手の心情を汲んで、ハーフウェーライン付近で謙虚に喜びを分かち合っていた。

 狛江の安藤主将は「気持ちが入っていた。防戦一方になることは分かっていたので堪えて、堪えて…。1回戦の東海大菅生戦も同じような形で延長後半に点を獲れていたので、まずは守るところから意識していました」。攻撃面のトレーニングも重ねてきたという狛江だが、まずは守備を徹底。各局面で2対1の状況をつくり、リスクを回避して守り続けたこと、やるべきことを徹底したことが3試合連続無失点、そして東京4強入りに繋がった。

「普通の都立高校」(長山監督)という狛江だが、選手たちが「どこにも負けない」と自負するほど毎日を一生懸命過ごしてきた。朝練は遅刻者が出たら連帯責任。バディー制度を採用して後輩にミスが出たら先輩も責任を負うようなシステムを取り入れているのだという。ピッチに立つ選手だけでなく、チーム全員が、周囲の人から応援されるチームを目指して毎日の練習、私生活からひたむきに積み重ねてきた。その成果が出ての東京4強。安藤は「ここまで来ると(私生活の部分を)信じるしかないですね。もっと気を引き締めてやりたい」と頷いた。

 準決勝の対戦相手は昨年、東京3冠の関東一。「まだ選手権ではないですし、いい経験だと思うので楽しんで思い切ってやりたいと思います」(安藤)。無欲の「普通の都立高校」が積み上げてきた日々の成果を王者にぶつける。

(取材・文 吉田太郎)

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