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神奈川覇者・東海大相模は変則“0トップ”が猛威…きっかけは『K1敗戦』からの『居残り練習』

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“カモン・ロッソ”ならぬ“カモン・東海”で喜ぶ東海大相模高の選手たち

[5.6 関東高校大会神奈川県予選決勝 東海大相模高4-0三浦学苑高 保土ヶ谷公園サッカー場]

 創部以来初めて関東大会神奈川県予選を制した東海大相模高。快進撃の要因の一つには変則“ゼロトップ”システムの存在があったが、大会1週間前の敗戦がもたらした副産物だったという。有馬信二監督は決勝戦の試合後、「あの負けが大きかったです」と感慨深そうに振り返った。

 4月21日、東海大相模はK1(神奈川県1部)リーグ第3節で湘南工科大附高に1-2で敗れた。「勝負の年」と位置づけ、優勝を目指すチームにとっては痛い敗北。引いて守ってくる相手に対し、「中央を崩そうとするばかりで、サイドを使えなかった」(有馬監督)ことが敗因だった。

 試合を終えたのが午後5時ごろ、怒れる指揮官は選手たちに対し、再びグラウンドに集合するよう命じた。用意したのはコーンとボールのみ。ゴールは設置しなかった。「選手たちの様子がおかしかったので、走らされるとでも思ったんでしょうね」(有馬監督)。怪訝な表情を浮かべる教え子を尻目に、コートにグリッドを引き、準備に取りかかった。

 そこで始めたのは、中央エリアのタッチ数を段階的に制限し、サイドはフリータッチでプレーする10対8だった。ウイングの突破によるサイド攻撃を促し、中央では数的優位を生かして崩し切るためのトレーニングだ。「試合が終わった後で疲れてたと思うんですけど、試合より良い動きをしてくれましたよ」(有馬監督)

 この練習で見えてきた布陣が、関東大会予選で猛威を振るった5-1-4気味の“0トップ”システムだった。両ウインガーを最前線のサイドに張らせ、中央の前線2人はビルドアップに関わる一方、得点機ではシャドーストライカー役を担うという仕組みだ。このシステムにより、中盤中央の密集でポゼッションがしやすく、サイドで一気に侵攻することができるため、より選手の個性が生かせる形となったという。

 指揮官の息子であるMF有馬和希(3年)は帰宅した後、このシステムへの手応えを報告したという。また、攻撃の中心を担うMF中山陸(3年)も「あれでみんなの意識が変わった」と回顧。「良い負けと言ったら変ですが、切り替えるチャンスになった」(中山)。悔しい敗戦で表れた課題と向き合い、居残りトレーニングで乗り越えた先に、今大会で成し遂げた快挙があったようだ。

(取材・文 竹内達也)

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