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「心が折れかけていた」からの「こんな思いをもっと」…川崎F鈴木雄斗が苦難を乗り越えるまで

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J1デビューを果たしたMF鈴木雄斗

[5.12 J1第14節 柏1-2川崎F 三協F柏]

 J1デビュー戦で劇的な決勝点をマークした川崎フロンターレMF鈴木雄斗だが、ここまで公式戦でのベンチ入りは2試合のみ。J2リーグからJ1王者への“個人昇格”ということで、「覚悟はできていた」としながらも、試合後には「ここまで長かったです」と苦難の跡を明かした。

 今季、山形から川崎Fに移籍してきた鈴木は、4月18日のACLグループリーグ蔚山現代戦に続き、わずか2試合で2ゴールを記録。だが、その他の試合ではベンチ入りもままならず、振り返ると苦しい思い出ばかりだという。「ACLで結果は出せたけど、リーグ戦では試合に絡めなかった。ずっといろいろ悩みながら練習していた」(鈴木)

 そんな悩みは、チームスタイルと個人のスキルとのギャップにあった。細かい技術を生かしたプレーを武器とする川崎Fにあって、積極性や力強さを持ち味とする個性はやや異質なもの。水戸、山形で過ごしたJ2時代はチームの中心選手だったこともあり、当初は「初めての経験で、心が折れかけていた」という。

 だが、周囲の声が後押しとなった。「監督だけじゃなくて、コーチや周りの選手からお前の良さをどんどん出して行け」と叱咤されながら徐々に信頼を獲得。「このままじゃダメだ、もっとやっていかないといけない、という気持ちの変化がちょうどあった」という内面の転機もあり、ようやくJ1デビューのチャンスをつかんだ。

 そんな試行錯誤の中でつかみ取った“結果”という光明。これにはチームメートも喜びを隠せなかった。DF奈良竜樹が「ずっと努力を見てきた。ああいうゴールにふさわしい活躍」と述べれば、FW小林悠も「忘れられない日になるでしょう」と優しい言葉。MF中村憲剛は大勢の取材陣に囲まれる鈴木に対し、拍手を送りながらその場を通っていった。

 また、鬼木達監督にとっては「必然的」な活躍だった。試合後会見で「今日はもともと中盤の前か、サイドバックで入れようと思っていた」と明かすと、「今日は頭でしたが、足も良いモノを持っている」とゴール前での働きに期待した起用だったと説明。まさに“采配的中”の殊勲弾だったようだ。

 もっとも、こんな華々しい活躍を1試合にとどめるつもりはない。「今は浸っている感じはあるけど……」と認める鈴木だが、「一回点を取ってもすぐ次がやってくるし、監督の評価もすぐに変わる」と気を引き締める。「こんな思いをもっとしたい。チームで勝ちたいし、自分で点も取っていきたい。もっと頑張ろうという思いになりました」。苦難を乗り越えた24歳は貪欲に前を見据えていた。

(取材・文 竹内達也)

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