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[MOM2524]桐生一MF小澤謙登(3年)_歓喜なきハットトリック、「もの足りない」からの脱却へ

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ハットトリックを達成した桐生一高MF小澤謙登(3年)

[6.3 関東大会準決勝 桐生一9-0東海大甲府 前橋フットボールセンターB]

 大量9得点を挙げたチームの中で、唯一のハットトリックを記録。だが、桐生一高MF小澤謙登(3年)の表情に喜びはなかった。指揮官役のコーチは「正直、もの足りない」と手厳しく、本人も「ただ結果が出ただけ」と満足せず。再びレギュラーを奪い返すには、このような活躍を続けていくしかないようだ。

 今季からプリンスリーグ関東に所属している桐生一。開幕戦から1トップの定位置をつかんだ小澤だったが、苦しむチームは第3節まで3連敗を喫してしまう。そうして迎えた第4節、ついにスタメンを外れると、代役として入ったFW若月大和(2年)が全4得点に絡む大活躍を見せ、サブ組に追いやられることとなった。

 群馬2位で臨んだ関東大会1回戦でも立場は変わらず、ベンチでキックオフのホイッスルを聞いた。1トップの若月が好調をキープしていることもあり、試合に出るには「サイドでポジションを取るしかない」(中村裕幸コーチ)というのが現実。だが、今度はスピード自慢のMF楠大樹(3年)が華々しいパフォーマンスを披露した。

「試合に出ていない時が多くて、悔しい気持ちはある」(小澤)。そんなアタッカーに先発のチャンスが訪れたのは関東大会2回戦だった。もちろん、急に序列が変わったわけではない。決勝まで行けば暑さの中での3連戦となるため、主力選手に休養を与えることを意識しての代役起用だった。

 ただ、そこで結果が出た。前半1分、「意識して動いている」というセットプレーのこぼれ球に反応し、早々に先制点を奪うと、後半25分にはFKに頭で合わせて2点目。「止まろうものなら出られないと分かっているんでしょう」(中村コーチ)と守備の貢献も見せつつ、同40分にはMF須藤礼智(2年)の“ご褒美”パスを沈め、ハットトリックを達成した。

 ただ、得点直後の表情を見ても、浮かれた様子は感じられない。「動きが良くなくて、満足できなかった。チャンスをつくる部分の質が足りない」(小澤)。そう振り返った本人に口をそろえるように、指揮を執る中村コーチも「取ってることは取ってるけど……」とあっさり。若月、楠がそろって2点を決めたこともあり、「決勝戦のチョイスには入らない」と述べた。

 そういった問題は小澤自身も重々承知している。「チームのためにという意識をしないと、試合には出られない。もっと色んな部分で貢献できるようにならないといけない」。出てくる言葉は課題づくしだ。しかし、夏はまだ始まったばかり。誰もが憧れる大舞台に立つため、「チームにとって当たり前の部分」(小澤)を大事にしていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)

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