beacon

[SBSカップ]PK失敗、日本戦ベンチ外も下を向かないU-18パラグアイ代表MF松岡ジョナタン、「良い時期」目標達成へのエネルギーに

このエントリーをはてなブックマークに追加

健闘を称え合い、再び国際舞台で戦うことを誓い合った名古屋U-18の2人。U-18パラグアイ代表MF松岡ジョナタン(右)とU-18日本代表DF菅原由勢

[8.19 SBSカップ第3節 U-18日本代表 1-2 U-18パラグアイ代表 草薙陸]

 試合終了後、2位からの逆転優勝を喜ぶU-18パラグアイ代表の一人と、敗れたU-18日本代表の背番号7が歩み寄って抱擁。わずかに言葉をかわすと、肩を組んで互いの代表チームの健闘を称え合っていた。

 U-18パラグアイ代表のMF松岡ジョナタンとU-18日本代表のDF菅原由勢。彼らは名古屋U-18で一緒にプレーしてきたチームメートだ。この日は異なる代表チームの一員として優勝を懸けて激突。松岡がベンチ外となったために直接対決することはできなかったが、彼らは貴重な機会を感謝し、今後への刺激にしていた。

 菅原は「アイツとやりたかった、と思っています。同じピッチには立てなかったんですけれども、こうやって違う国旗を背負えたのは刺激になると思いますし、これから先、(このような機会が)活発になっていけば日本のサッカーも発展していくと思います」と語り、松岡は「(菅原と)対戦したかったんですけれども、(それが実現しないことは)サッカーではよくあることなので、切り替えて次の代表のメンバーに選ばれるように頑張っていきたい」と力を込めた。

 中学時代から年代別日本代表常連で高校3年生ながら名古屋トップチームでJ1先発を重ねている逸材DF菅原に対し、松岡はこれが年代別代表初選出だった。ケガを乗り越えてSBSカップのU-18パラグアイ代表メンバーに選出され、「小さい頃からずっと夢だったことが叶った」ことを喜んだ松岡だが、U-16Jリーグ選抜歴を持つ名古屋U-18の10番でもすぐに活躍できるほど甘いものではなかった。

 静岡ユースとの初戦は後半15分から25分間の出場で、U-18オーストラリア代表との第2戦は後半アディショナルタイムからのわずかな出番のみだった。名古屋U-18とは違い、縦への速さや前線での競り合いの強さを求められる中で技巧派アタッカーは苦闘。結果を残せず、菅原との対戦を期待したU-18日本代表戦はスタンドから見守ることになった。

「勝っても負けてもチームなんで、勝ってくれたことが一番嬉しいですね。チームが勝てて良かったです」と素直に優勝を喜んでいたが、一方でとても悔しい大会に。静岡ユース戦はPK戦で10人目までもつれ込み、松岡の右足シュートがクロスバーを叩いた瞬間にパラグアイの敗戦が決定した。

 一人日本からパラグアイ代表に加わり、チームの敗戦に繋がるミス。18歳には重すぎる試練のように映った。それでも、チームメートたちが声をかけてくれたこと、また「(自分の武器は)気持ちですかね。自分の下を向かないという気持ち、ずっと前を向いてポジティブに捉えていることが、自分がここに生き残っている理由」と語る松岡はすぐに切り替えて前を向いた。

「(PK失敗は)自分がああいう形で終わったことが悔いが残ったんですけれども、サッカーではあること。メッシもクリロナも外していることなんで。自分は気にしているんですけれども、みんなポジティブな声をかけてくれたし、次の試合に出たらチャンスが来ると思っていた。(PK失敗失敗は)自分が強くなるためのものになった」

 彼は下を向かず、明るく、元気をもらえるというチームメートたちと一緒に戦った。U-18オーストラリア代表戦では味方のゴールにベンチから飛び出して仲間に抱きつき、この日はジャージ姿で優勝を人一倍喜んだ。そしてパラグアイの仲間からは「オマエのおかげだ」という言葉も。ただし、満足はしていない。

 ケガを乗り越えて代表入りを果たすなど、辛い経験を乗り越えることで充実した時期が来ることを学んできた松岡は、PK失敗やベンチ外の悔しさを次に繋げるつもりでいる。「お父さんに『辛い時期があるからこそ、良い時期が来るんだよ』とずっと言われてきた。自分、本当だなと思って、満足せずにこれ以上に越えていけるように。来年U-20のワールドカップもあるのでそれを目指して頑張っていきたい」と誓った。

 普段、地球の反対側で上を目指すU-18パラグアイ代表の仲間たちとはしばしの別れ。「最後、どのような言葉をかける?」という質問に対し、松岡は「(代表で)また、次に会いましょうですね」と応えた。育った日本と国籍を持つパラグアイ。どちらかの国でワールドカップに出場するという夢を持つ松岡に、優勝の喜びを分かち合ったパラグアイの仲間たちとまた一緒に戦うこと、次回こそ菅原ら名古屋のチームメートと国際舞台で戦うことという新たな目標ができた。

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
●2018 SBSカップ国際ユースサッカー特集

TOP