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自ら志願して主将になったアンプティ日本代表・古城暁博の男気

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ゴールを狙って萱島比呂(右)が後半、攻撃に加わったが、得点ならず

[10.29 アンプティサッカーW杯C組 日本代表 0-3 コロンビア代表]

 両手で顔を覆ったまま、しばらく立ち上がれなかった。0-0で迎えた後半14分、最終ラインにいたFP古城暁博が相手のキックインボールをクリアしようとジャンプして頭で合わせたが、そのまま自陣ゴールに吸い込まれた。主将の古城は、与えたくなかった先制点を奪われたショックを隠し切れなかった。

 大会前、古城はこう明かしていた。

「目標とするベスト4は簡単ではないかもしれないが、自分たちの目指す組織力を発揮できれば、手が届かない場所ではない」

 明日対戦するポーランド代表は、大会の優勝候補にもあがる実力国。決勝トーナメント進出を目指す上で、初戦のコスタリカ代表とコロンビア代表には勝ちたかった。前半10分すぎに、古城は相手選手と交錯した際、激しく顔面を蹴られた。しばらく立ち上がれず、退場してから再びピッチに戻った主将の熱い責任感は、「勝利」という形で実らなかった。

 古城は昨年6月のポーランド遠征で主将に初めて選ばれたが、正式に就任したのはW杯に備えて行った7月の宮崎合宿の後。杉野正幸監督に半ば志願する形で申し出た。

「そのとき4人の副将も選んで、杉野さんに『やらせてほしい』とお願いしたんです。経験ある選手の中に若い選手も入ってきていたので、今回いい結果を残すことだけでなく、将来さらに強くなるにはどうすればいいかを考えました。若手のお手本となる存在を意識してほしい、という気持ちもこめて、ヒッキ(エンヒッキ松茂良ジアス)や萱島(比呂)もリーダーに指名したんです」

神妙な面持ちで君が代を歌う古城暁博(右から3人目)

 今大会の日本代表の年齢層は43歳のFP若杉幸治から代表から漏れたがチームに帯同中の15歳、近藤碧まで幅広い。39歳の冨岡忠幸や33歳の平賀智行とともに副将に指名した29歳のエンヒッキや23歳の萱島は、若手にとっては憧れの存在。2人に引っ張る意識を持たせることで若手をなるべく遠慮なくチームに溶け込ませ、チームの結束を高める狙いがあった。この日は勝利という形で実らなかったが、明日、目標としてきたポーランドとの決戦を控える。グループ内の順位は明日の結果で決まる。

「非常に残念な結果となってしまった。やりたいサッカーができなかった。選手・スタッフは何か成し遂げる力のある者ばかりなので、明日以降、挽回したい」

 肩を落とした杉野監督も前を見据える。今まで培ってきた結束力を、土壇場で発揮させるつもりだ。

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