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プロ生活18年のFC東京レジェンド、元日本代表・石川直宏が明かす「ブラインドサッカーにハマった理由」

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寄付金を払う石川直宏氏

 JリーグのFC東京・クラブコミュニケーターをつとめる石川直宏氏は23日、日本障がい者サッカー連盟(JIFF)が主催した「JIFFインクルーシブフットボールフェスタ2018」に参加。個人のリフティングチャレンジを社会貢献につなげる寄付企画「キフティング(寄付×リフティング)」や障がいを持つサッカー選手と同じピッチに立ち、試合を通して交流した。

「障がいを抱えている方との交流が少なかった頃は、『何か特別なことをしなければ』と必要以上に気を遣うこともありましたが、今日のようにピッチの上では、普通に僕たちと同じ関係性の中でプレーするし、試合も成り立った。ほんと、楽しかったです。現役時代は気づくことが出来なかった部分を気づかせてくれますね」

 クラブのあらゆる活動に参加することで、クラブとファン、サポーター、ステークホルダーをつなぐ役割を求められる石川は、障がい者サッカーに顔を出すことも多い。7つある競技団体のうち、少なくともこれまで、ブラインドサッカー、アンプティ、デフサッカー、電動車椅子サッカーの現場に足を運んでいる。  

「ブラインドサッカーは競技としての魅力を感じていて、純粋に面白い。あるイベントで、元日本代表主将の落合(啓士)さんに挑む形でアイマスクをして1対1をやらせてもらいました。ボールには触れるんですが、チャレンジできないんです。見えていない中で相手との距離感、方向(感覚)、バランスを保たないといけない。そして見えないことによって生まれる恐怖に打ち勝って、迫力あるプレーができる。さらに、自分の位置や周囲にしてほしい情報を的確に短時間で伝えるコミュニケーション能力も必要です。引退して感じるのは、自分の中で当たり前になっている感覚をいかに言語化する難しさで、そういう意味でもブラインドサッカーからは学べることが多いんです」

石川氏(中央)はブラサカ日本代表・川村怜(右)の動きをじっくり観察

 石川は18年間の現役生活ではなかなかできなかった経験を積むことで、人間性の幅を広げている。そこに注目することは、一流競技者の伸びシロとも関係しているという。

「人間性やコミュニケーションスキルが備わっているかいないかで、現役時代の伸び代が変わってくると思います。サッカーはいろんな変化に対応する柔軟性が必要で、その変化に応じて、一緒に変化していなければいけない。選手には各自、個性がある。ただ自分の個性が強すぎて変化を受け入れないことはダメだし、逆に変化しすぎて個性がなくなってもダメ。長所をうまく残しながら、その現実を受け入れていく姿勢が大事だと思うんです。長く活躍している選手には共通してその姿勢が備わっています」

 FC東京でも実際、子供のうちからテクニックを教えることと並行して、人間の器を大きくする動きが具体化している。石川氏が続ける。

「8月に、東京やタイの聴覚障害を持つ方やJリーグ村井(満)チェアマンも来ていただいて一緒サッカーをしました。その日、ウチのスクールの子たちも(30人)も一緒にやっているんです。その日に練習をするのか、それともそういう(聴覚障害の)方たちと触れ合って何かを感じるのか。障害を持った方と触れ合った意味がその時にはわからなくても、後々変わってくると思う。育成年代でそういう経験を通して人間の幅を広げて、のちにサッカーそのものに特化するステップの踏み方が理想だと思います」

 現役時代、爆発的なスピードを生かしてあらゆる場所に顔を出して相手守備網を切り裂いた石川は、ボールがなくてもあらゆる場所に顔を出し、クラブに還元できる財産を蓄積していく。

(取材・文 林健太郎)

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