beacon

有力選手流出に歯止めを。那覇西「沖縄からでもやれるんだぞ」「次も勝って沖縄を盛り上げたい」

このエントリーをはてなブックマークに追加

沖縄県から全国上位へ。那覇西高が初戦突破(写真協力=高校サッカー年鑑)

[12.30 選手権1回戦 駒澤大高 1-1(PK9-10)那覇西高 駒沢陸]

 沖縄の高校でも全国で戦えることを示す――。そのためにも、勝つしか無い。沖縄の名門、那覇西高の選手、スタッフはその思いも持って開幕戦に臨んでいた。

 試合は前半に先制点を奪われたものの、その後は我慢強い守りを続けて「(ハーフタイムまでに)2失点目を取られずに帰ってきたこと、気持ちが折れなかったのが(勝利した)要因」(平安山良太監督)。風上に立った後半は取り組んできたボールを繋ぐ部分が増え、ショートカウンターや相手の背後を狙う攻撃がハマっていた。そして、PK戦11人目までもつれ込む激闘の末に勝利。沖縄県勢5年ぶりとなる1勝をもぎ取った。

 注目される開幕戦で15、16年度全国8強の駒澤大高(東京)から1勝した意味は大きい。以前、那覇西の平安山良太監督は「中学生で力のある30~40人が県外に出る」という話をしていた。沖縄県では県トレセンに名を連ねるようなトップレベルの選手は小学卒業時や中学卒業時に九州や本州の強豪校やJクラブユースから勧誘されて、ほとんどが県外に出ていってしまう。

 今大会の出場校でも日章学園高(宮崎)MF比嘉将貴主将(3年)や長崎総合科学大附高(長崎)の10番MF仲田瑠(3年)や前線の柱・FW下地春也(3年)は沖縄出身。この日対戦した駒澤大高でベンチ入りしていたFW池間敦也(3年)も大志を抱いて東京で勝負している選手だ。

 沖縄県勢では05年に那覇西がインターハイで準優勝し、06年には国体少年男子の部で沖縄県選抜が全国制覇している。だが、近年は有力選手が県外へ出ていくケースが増えたこともあって、沖縄勢は全国で結果を出すことができていない。

 この日、ビッグセーブを見せたGK新垣凱斗(2年)は「(県外に出ずにみんな沖縄に)残っていたら本当にもっといける。優勝も本当に夢じゃない、というのがある」と残念がる。だが、自分たちが結果を出せば沖縄に残ってくれる小中学生が増えてくれるかもしれない。そのためにも名門である那覇西が結果を出すしか無い。その思いが彼らのエネルギーの一つになっている。

 県トレセン出身ながらも、「沖縄のチームで全国へ行く」と誓って那覇西に進学した左SB 東舟道尚吾主将(3年)は「きょうの試合を見ている小学生中学生がいたら、自分たちのプレーを見て『沖縄でも全国に通用するんだ』と届けばいいかなと思っていました」。その思いが伝わるような戦いで勝利。主将は「『沖縄からでもやれるんだぞ』と、伝えたかったんで良かったです」と笑顔を見せた。

 那覇西OBでもある平安山監督は「県産品で頑張る」という。那覇西で全国を目指す選手たちとともに戦うだけだ。以前よりも全国で勝つことが難しくなっているのは確か。それでも自分たちが高い目標へ向かって、意識高く日々を過ごせば、取り組んできた武器で全国とも渡り合うことができる。「九州は一つ」のメッセージの下、協力してくれる沖縄、九州の高校、指導者の支えも大きかった。

 新垣は「みんな抜けて、県外では『沖縄が弱くなっている』みたいに流れているかもしれないですけれども、きょう追いついて、PKでも勝ち切って、少しは(沖縄でもやれると)証明できたんじゃないかと思います」と語り、東舟道は「県トレのメンバーは上手い個がたくさんいるので県外で勝負したいというのはあるんですけれども沖縄から全国で勝負して盛り上げてほしい。まずは自分たちが次も勝って沖縄を盛り上げたい」と意気込んだ。

 目標は選手権過去最高成績のベスト8、それ以上。1勝だけでなく、全国上位で活躍するところを見せて、沖縄の高校サッカーを盛り上げる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

TOP