beacon

前半怒濤の4ゴール!総体の悔しさを糧に仙台育英が粘る一条を振り切る

このエントリーをはてなブックマークに追加

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[12.31 全国高校選手権1回戦 仙台育英4-2一条 駒沢]

 新人戦、総体、選手権と県内三冠の仙台育英高(宮城)が、3年連続出場の一条高(奈良)に前半の4ゴールで逃げ切り、4-2で2回戦進出を決めた。仙台育英は1月2日、岡山学芸館高(岡山)と味の素フィールド西が丘で対戦する。

 一条ペースで始まった試合の流れがガラリと変わったのは1本のFKだった。前半14分、仙台育英が左サイドで得たFKをDF堀江凛太郎(3年)がゴール前へ上げる。DF小林虎太郎(2年)がヘッドで折り返したところをDF今野太勢(3年)が頭で押し込んで先制した。

「一条さんに決定的な場面もあった前半、それを凌ぐとチャンスがくるのがサッカーの面白いところ。それをものにして精神的優位に立てた」(仙台育英・城福敬監督)

 先制ゴールの今野はその10分後にもPKを決め、仙台育英が2点をリード。さらに直後の前半25分、左CKからMF柳生雄哉(3年)がヘディングで決めて3-0とする。さらに36分、堀江が上げた浮き球で裏を取ったFW三田大史(3年)は「1回バックパスが入って相手がラインを上げようとしたところで堀江と目が合ったので、わかりやすく合図していいパスをもらった。堀江がボールを止めて顔を上げた瞬間は目が合いやすいんです」。冷静な判断と連携で三田がゴールに流し込み、4-0。試合は一方的なものになった。

 一条は市立高校。特にスポーツ推薦などで選手を集めているわけではない。入学した選手をじっくりと育てていくことで力をつけてきた。「セットプレーは力的にどうしようもないところですが、下級生も多いところで甘さが出た。その後、立て直しもできず0-4。でも起きてしまったことはしょうがない。ハーフタイムは後半の40分でできることをしようと話しました。選手たちも『しゃあないな』と話してましたよ」と一条の前田久監督が述介する。

 前半、一条の選手たちは決してプレーが鳴りを潜めていたわけではなかった。やるべきことはきちんとする。そんな誠実なプレーは一貫していたが、加速する仙台育英の勢いに飲み込まれた形になっていた。だが、その誠実さが後半に実を結ぶ。後半7分、左サイドからMF松山知樹(2年)のパスが中央のMF岩本涼太(2年)にわたり1点を返す。さらに27分、左サイドMF梅景俊輔(3年)が持ち上がって、MF水本倫大(3年)を経由して松山へ。これを松山がしっかり決めて2点差に詰め寄った。

 一条の前田監督は「後半立て直せるかもと思ったら2点返した。0-6になってもおかしくない試合でよくやった」と選手を労う。この追い上げを仙台育英の城福監督は恐れていた。「一条さんが後半点を取りに来るのは分かっていてゼロに抑えようと言っていたのにあっさり取られた。それですぐ2点目も取られると思った。3点目を入れられていたら分からなかった」と振り返る。

 ギリギリのところで仙台育英が踏みとどまれたのは総体の苦い経験があったからだ。初戦で日章学園にアディショナルタイムに追いつかれPK戦で敗れた。その際、城福監督は「勝って終わり切る力がない。まだちょっとスキがある」と言っていたが、「総体では受けに入ってしまった。あの経験は大きかったかもしれません。勝負はそんなに甘くないことを知っていたから3点目が奪われそうになっても体を張って踏ん張ってくれた。夏が糧になったと思いますよ」と選手たちの成長に目を細めた。

 敗戦を糧にできるチームは強い。そのことを実証した仙台育英がこの冬、どこまで活躍できるか見物だ。

(取材・文/伊藤亮)
●【特設】高校選手権2018

TOP