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[MOM2770]矢板中央FW望月謙(3年)_1年前は前半もたずに交代…ガーナ人の父持つ大器が見せた進化

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2得点に絡んだ矢板中央FW望月謙(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 選手権2回戦 日章学園高1-2矢板中央高 ニッパツ]

 1年前の悔しさとライバルに負けられない競争心がその成長を加速させた。矢板中央高(栃木)はガーナ人の父を持つ長身FW望月謙(3年)が貴重な先制点を決め、決勝点となるPKも獲得。全2得点に絡む活躍でチームの初戦突破に貢献した。

 前半20分、DF内田航太郎(3年)がPA左手前からゴール前にクロスを上げると、飛び出してきた相手GKがクリアし切れず、こぼれ球を拾った望月が右足で蹴り込んだ。「絶対にこぼれてくると思った。ファーストチャンスだったので決めてやろうと」。思い切りよく振り抜いたシュートで全国選手権初ゴール。決まった瞬間は「大舞台で全然結果を残せていなくて、やっとだなと思った」と、喜びよりも安堵の気持ちのほうが大きかった。

 ベスト4まで上り詰めた昨年度の全国選手権でも全4試合に先発した望月だが、そのうち2試合は前半途中でベンチに下がり、残り2試合もハーフタイムでの交代だった。個人としては無得点のまま大会を終え、「チームにほとんど貢献できなかった。自分の不甲斐なさに後悔しかなかった」という悔しさばかりが残った。

「去年は試合中もあまり考えていなくて、とりあえず競って、とりあえず走るだけだった。今はどう動いたら相手をはがせるかとか考えながらやれている。そこが違う」。そう胸を張る望月は高校入学時で188cmだった身長も今では191cm。登録上は190cmになっているが、高校3年生になってからさらに1cm伸びたという。

 絶対的な高さを生かした空中戦の強さと懐の深いボールキープだけでなく、後半15分にPKを獲得したドリブルでの仕掛けなど、プレーの幅も広がった。これには高橋健二監督も「予想位以上に活躍してくれたのでビックリした。得点だけでなく、PKももらって、足元もだいぶ付いてきた」と冗談交じりに目を細める。

 昨年度から10番を背負うMF飯島翼(3年)が「試合で勝つことより、レギュラーで出ることのほうが難しい」と言うほど、特に攻撃陣の定位置争いは激しい。前線では望月とU-19フットサル日本代表でもあるFW大塚尋斗(3年)がポジションを争っているが、高橋監督は「大塚が練習でケガをしたので大事を取って望月を起用した」と説明。結局、この日は後半25分から望月に代えて181cmの大塚を投入したが、「もしかしたら(望月と大塚の)ツインタワーでいくかもしれない」というバリエーションの豊富さも矢板中央の強みになっている。

 試合前、会場まで移動するバスの車中でFWハリー・ケイン(トッテナム)の映像を見てイメージを膨らませていたという望月。188cmのケインのほか、190cmのFWロメル・ルカク(マンチェスター・U)のプレーも「おさめるところや体の使い方は参考にしている」と日々、研究している。卒業後は日本体育大に進学予定。「世界で活躍するプロサッカー選手になりたい」と夢見る大型FWは「チームの目標は全国制覇。個人としては自分はFWなので、チームを助けられるように得点をたくさん取りたい。自分のプレーを100%出せれば、絶対に勝てると信じている」と力を込めた。

(取材・文 西山紘平)

●【特設】高校選手権2018

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