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五輪メダリスト有森裕子さんが「もうひとつの高校選手権」に込めた「激励」と「願い]

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SOバスケット男女日本代表を紹介するSO有森裕子理事長

 知的障害のある人たちにスポーツを通じて社会参加を応援する「スペシャルオリンピックス(SO)」の理事長で、2大会の五輪で女子マラソンのメダルを獲得した有森裕子氏が10日、東京都立川市のアリーナ立川立飛で開かれたPRイベントに参加した。

 3月14日~21日まで開かれるSOのアブダビ世界大会にむけ、日本代表はサッカー、バスケットなど11種目73人が参加予定。この日はバスケットのBリーグ公式戦・アルバルク東京―滋賀レイクスターズの試合前に知的障がいのある人(アスリート)と知的障がいのない人(パートナー)の混合チームで行う「ユニファイドバスケット」を実施し、ハーフタイムには男女のSOバスケット日本代表のPRをした。

 イベント後、有森裕子理事長は16、17日に静岡・藤枝で行われる全国知的障害特別支援学校高等部サッカー選手権「もうひとつの高校選手権2018」に対して、こんなメッセージを残した。

「出場する選手たちには今の気持ちのまま、一生懸命頑張ってほしい。こちらが何も言わなくてもきっと頑張る子たちですから。むしろ彼らの姿を通して、見ている周囲の健常の人たちが気づきを得て、見方や意識が変わるきっかけになることを願っています。(障がいを持つ)彼らがチャンスを得ることによって、持っている可能性のすばらしさに目をむけてほしい。彼らは(障がいを持っているから)できないのではなく、(障がいを理由に)やらせてもらえなかっただけなんですよ」

たとえば知的障がい者のサッカー経験ひとつをとっても、特別支援学級ではサッカーをやりたいと思っていても部活そのものが存在しなかったり、普通校の中で部活に入りたいと思っていても障害を理由に入部できなかった例もある。有森理事長自身も意識を変えさせられた経験をしたからこそ、訴えたいことがある。

「私がSOのドリームサポーターとして関わらせてもらっていた時の話ですが、アイルランドで国際大会をやったときに、SOのバスケット日本代表が決勝で負けたんです。そうしたら、選手たちが地団駄踏みながら悔しがった。それを見る前は周囲の人から『(SOの日本代表は)オリンピックやパラリンピックとは違います』と言われ続けて、私も『違うんだな』と勝手に思っていた。でも彼らの悔しがる姿を見て『私たちと何も変わらない。一緒だよ』と気づかされたんです。やっぱり彼らも負けたら悔しいんですよ。必要以上に特別視してはいけないなって痛感したことが、今の活動のベースにあります。サッカーはこの日のバスケット同様、ユニファイドのチームを結成しますが、ユニファイドというのは(健常者と障がい者が)一緒にできるんだ、というメッセージです。そのことは企業にも、社会にも落とし込める。それがスペシャルオリンピックスがあることの社会的な意義だと思っています」

(取材・文 林健太郎)

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