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「言われてんぞ!」「やるしかねぇな!」。低評価に発奮の矢板中央が3-0で栃木制覇!

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矢板中央高が栃木2連覇を達成した

[6.20 インターハイ栃木県予選決勝 矢板中央高 3-0 真岡高 栃木県グリーンスタジアム]

 周囲の評価を覆す――。20日、令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」サッカー競技(沖縄)栃木県予選決勝が行われ、2連覇を狙う矢板中央高と2年ぶりの優勝を懸けた真岡高が激突。矢板中央が3-0で勝ち、2年連続9回目の全国大会出場を決めた。

 矢板中央は昨年度、昇格1年目のプリンスリーグ関東で12勝5分1敗の成績を残し、2位・横浜FMユースに勝ち点12差をつけて独走優勝。選手権でも8強に食い込んだ。だが、選手権から日本高校選抜CB白井陽貴主将(現法政大)ら先発11人が入れ替わった今年のチームは、プリンスリーグ関東で第6節まで1勝1分4敗で最下位。そのうち4試合で3失点以上を喫するなど苦しいスタートになっている。

 準決勝の途中に怪我から復帰したCB長江皓亮主将(3年)は「プリンスで結果出ていないので、悪い評価です。ネットでも今年の矢板中央はあんまりだとか、今年は県内同レベルとか言われている」と明かす。だがその声に対し、「みんなで『全員見返してやろう』と。『絶対にインハイは取ろう』と言っていた」(FW久永武蔵、3年)、「みんなが『言われてんぞ!』『やるしかねぇな!』と。周りからの評価は結構低いのでその評価を覆すというか頑張っています」(長江)とエネルギーにしてきた矢板中央が決勝を3-0で制した。

 公立の伝統校、真岡は矢板中央が不在だった関東大会予選の優勝校。大黒柱のMF相澤雄心主将(3年)とエースMF相澤敬心(3年)の「相澤ツインズ」を中心に丁寧なパスワークと多彩な攻撃をすることができる好チームだ。

 だが、矢板中央が相手の出鼻をくじく。前半2分、MF靏見拳士朗(3年)が左サイド後方から蹴り込んだFKをファーサイドの長江がDFと競りながらゴール方向へ折り返す。これにFW多田圭佑(2年)と久永が飛び込むと、そのままボールはゴールイン(記録は長江のゴール)。矢板中央が幸先よく先制点を奪った。

 真岡は8分に右CKからCB久保直己(3年)がヘディングシュート。その後もDFラインから丁寧なショートパスでハイサイドまで繋ぎ、右サイドの「突破口」相澤敬らがクロスにまで待ちこむ。だが、矢板中央は長江やCB矢野息吹(3年)を中心にしっかりと跳ね返し、MF在間太一(3年)がセカンドボールを拾うなど相手に連続攻撃を許さない。

 そして、矢板中央は前線での奮闘光る久永をターゲットにボールを入れ、そのこぼれ球から多田や交代出場MF大畑凛生(1年)がドリブルで仕掛ける。そして33分、右中間で前を向いたMF左合修土(3年)がPAへループパス。これに走り込んだ多田が右足ダイレクトのシュートをファーサイドに沈めて2-0とした。さらに40分にも相手のミスパスを右中間でインターセプトした多田が右足シュートをニア上に決めて3点差。高橋健二監督も「プラン通りにできた。前半は完璧だった」と振り返る40分間で3点のアドバンテージを得た。

 真岡は後半開始から俊足左SB伊藤潤平(3年)と右SB柳尚吾(3年)の位置を入れ替え、さらに11分の左SB伊藤詠人(3年)投入に伴い、柳をSHへ押し上げた。その柳が鋭いドリブルでチームの推進力に。右サイドに移った伊藤潤も前半のミスを取り戻そうと繰り返し攻め上がってきていた。

 14分には柳のスルーパスからFW笠原丈都(2年)が決定的な右足シュート。16分にもコンビネーションから交代出場FW鈴木天翔(3年)が右足を振り抜く。だが、矢板中央の右SB柿崎貴翔(3年)やGK溝口陽日(3年)に阻まれて追撃することができない。

 矢板中央は6試合で16失点したプリンスリーグ関東の中断期間に入ってから「チームづくりをしっかりした。基礎、基本に立ち返って、守備意識を高めた」(高橋監督)という。終盤は相手FW鈴木に背後を取られるシーンが幾度かあったものの、チャレンジ&カバーや球際の部分から確認してきたチームは無失点。一方で左SB加藤蒼大(3年)がポスト直撃の左足シュートを放つなど後半もチャンスを作り出して3-0で試合を終えた。

 矢板中央の久永は「自分らは去年みたいな圧倒的な個がないので『チームで勝とう』と言っていて、全員守備全員攻撃をやろうと言っているので、少しは体現できたと思います。(3-0のスコアは)相当嬉しいです」と微笑んだ。高橋監督によると、矢板中央は一昨年の県1部リーグ戦で栃木SCユースに負けたのを最後に「県内36連勝中」。栃木の戦いでライバルに差をつけ、全国での勝負を目指すだけに、指揮官も3-0で勝った選手たちを「よく成長できている」と讃えていた。

 チーム全体の守備意識が高まり、プレッシングでの寄せのスピードは昨年以上との評価も。また、攻撃でも在間太の台頭などで以前より落ち着いて組み立てることができるようになってきている。長江は「去年はインターハイ初戦で負けてしまったので、今年はまず先輩を超えるように一戦一戦大事に戦って、インターハイ日本一を目指して頑張りたい」と力を込めた。インターハイ予選優勝で力を示した矢板中央が、ここから白星を重ねて巻き返し、インターハイで高い目標に挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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