beacon

三ツ沢に響いた大声、憧れカズとの記念撮影…規格外の仙台大“DFW”本吉「やれることは全部やりたい」

このエントリーをはてなブックマークに追加

憧れのカズとマッチアップする仙台大DF本吉佑多(4年=仙台ユース)

[7.10 天皇杯2回戦 横浜FC2-1仙台大 ニッパツ]

 Jクラブとの一戦に挑んだ仙台大の意気込みは、試合前の記念撮影からあふれ出ていた。ニッパツ三ツ沢球技場に響いた大声の主はDF本吉佑多(4年=仙台ユース)。昨季は9番を背負ってストライカーを担っていたが、今季は最終ラインへの転向を遂げている異色のフィジカル系ムードメーカーだ。

 あまりに大きな叫び声のため内容はうまく聞き取れず、チームメートからは「いつもより長いな」と苦笑いも。「向こうの選手にもサポーターにも『熱いプレー見せようぜ!』ってことを言っていました(笑)」(本吉)。鍛えられた肉体、底抜けに明るい性格、そして背番号5。初見の報道陣や観衆から「槙野っぽい」という声が聞こえるのもうなずけるキャラクターだ。


 もっとも“本家”同様、その気合はしっかりとチームに乗り移り、仙台大は立ち上がりから対戦相手の横浜FCを圧倒した。強度の高いプレッシングとカウンターで相手を飲み込むと、前半のシュート数は相手よりも多い5本を記録。それも大半を決定機に結びつけ、複数得点が入っていてもおかしくない展開を演じてみせた。

 すると後半には、ムードメーカーの攻撃参加から先制点が生まれた。スコアレスで迎えた後半2分、本吉は果敢な攻め上がりから敵陣右サイドで相手のファウルを誘発すると、MF鯰田太陽(2年=柏U-18)が蹴り込んだFKに豪快なジャンピングヘッドで反応。そらしたボールからDF藤岡優也(4年=日体大柏高)のゴールを導いた。


「自分たちは大学生なので。ジャイアントキリングという言葉もある中で、チャレンジャーという気持ちが自分にも合っていると思っていました」(本吉)。その後は次々に主力メンバーを投入してきたJクラブに屈し、セットプレーから逆転の2点を奪われたが、堂々のパフォーマンスを見せた大学生チームには相手サポーターからも大きな拍手が贈られていた。

 試合後、本吉の表情は晴れやかだった。その理由は憧れのFW三浦知良との記念撮影をしてもらうため。「ずっとカズさんスタメンで来い!って思ってました。日本全国に何十万人も対戦したい人がいて、こんなチャンスないですから」。担当広報にも事前に根回しをする用意周到っぷりで、念願のツーショットをゲットしていた。

 しかし、未来に話が及べばその言葉には自然と熱が宿る。「近い目標としてはプロになってステップアップしたい」。ポジションも進路も未定。ただ、CBで出場した直近のリーグ戦ではハットトリックを記録。「FWはいつもゴールチャンスだけど、DFだと“その瞬間”しかない。得点能力は発揮できるし、見せ場だと思う」とアピールポイントを語る。


 何より、新たな持ち場に楽しみを見出し始めている。「めっちゃ面白いですね、DFも。今までは『オレ、オレ!オレによこせ!』って感じだったけど、オレが守って仲間に決めてもらう責任とか、違う見せ場が多く作れるんですよね。考えようによってはめっちゃ面白いポジションになりました」と目を輝かせていた。

 だからこそ、ひとまずは自らの能力に身を任せ、このまま突き進んでいくつもりだ。「CBをやっていて思ったんですけど、自分はここで勝負していきたいというのがないんですよね。やれることは全部やりたいんです」。プロ入りという唯一絶対の目標を掴むため、規格外の22歳はピッチの上で己を表現する。

(取材・文 竹内達也)
●第99回天皇杯特設ページ
●[天皇杯]2回戦2日目 スコア速報
★日程や順位表、得点ランキングをチェック!!
●2019シーズンJリーグ特集ページ
●第93回関東大学L特集

TOP