beacon

「香川、乾が出だした時はまだ前やったから」鹿児島DF酒本憲幸、17年目のFW起用

このエントリーをはてなブックマークに追加

鹿児島ユナイテッドFCのDF酒本憲幸

[8.11 J2第27節 東京V3-3鹿児島 味スタ]

 鹿児島ユナイテッドFCにやってきたDF酒本憲幸は移籍1年目の今季、1トップのポジションを任されている。「与えられたポジションはもちろんですし、自分に何を求められているかを考えながらやるしかない」。プロ入り1年目に出会った指揮官の下で、34歳の新たなチャレンジが続いている。

 2003年から16年間過ごしたセレッソ大阪を昨季限りで退団。「正直引退しようかなと思っていたら、監督が声をかけてくれて、もう一回頑張ろうかな、もう一回サッカーしようかなっていうことで入団させてもらった」。過去2年間のリーグ戦出場はゼロ。02〜03年、C大阪のサテライトコーチを務めていた金鍾成監督との再出発を決めた。

 昨季J3リーグ2位の鹿児島にとっても、琉球を昨季J3優勝に導いた金監督にとっても、初めてのJ2リーグ挑戦。圧倒的な実績を持つスター選手も、強烈な個性を持つ外国籍選手もいない。アマチュア時代を支えてきた古株、地元出身の有力選手、期限付き移籍で連れてきた若手をなんとかミックスさせながらチーム力アップに挑んでいる最中だ。

 そんな中、34歳のベテランに委ねられたのは前線のポジションだった。シーズン当初こそボランチで先発していた酒本だったが、チームが5連敗中にあった4月中旬、4-2-3-1のトップ下に“異動”。そこでチームが一定の成果を挙げられるようになると、今度は1トップを任されるようになっていった。

 C大阪時代には右サイドバックのイメージが定着していた酒本。もっとも、当人はいたって冷静だ。「僕もこの前、数えたんですけど、SBと前目のポジションをやっていたのは半分半分か、ちょっとSBのほうが長いくらいで」。プロ入り当初は前線が持ち場。むしろ右SBは2010年前後、レヴィー・クルピ監督によってコンバートされた結果だった。

「香川(真司)、乾(貴士)が出だした時はまだ前やったから。俺やったり(柿谷)曜一朗、当時は苔口(卓也)と濱ちゃん(濱田武)でベンチに座っていて、奴ら(香川、乾)のコンビプレーがエグすぎて出れんくなったんで、あれが2009年かな。09年くらいにウイングバックに下がって。10年は3-5-2から4-4-2にレヴィが戻したんで、その時からSB。03年から7年は前目をやって、8年はSBをやって…で、1年は1トップ。まあおかしいですけどね(笑)」。

 シーズン当初は加入1年目で22歳のFW韓勇太が1トップに君臨。しかし、近頃はジョーカー起用が続いている。金監督は「関わりを作るという点で、酒本はヨンテより関わりを作れる」と起用の意図を説明。得点力は韓がチームトップの7ゴールを挙げている一方、チームの攻撃を構築するにあたり、水準以上の技術と器用さを持つ酒本に委ねた形だ。

 だからこそ「1トップに違和感はあるけど、チームに貢献せなあかんと感じます」という酒本。「自分にできることは全部やるということで入団しているので、ポジションは何やりたいとかはなくて、このチームのためにやりたいというだけ」というモチベーションを攻撃面で活かしていく構えだ。

 チームは現在、自動降格圏が迫っている20位。ボールをつないでいくスタイルで攻撃に出ていく意識は高い一方で、なかなかそこからゴールに結び付けられていないのが現状だ。もちろん、これは地力で劣るクラブに共通するテーマ。だからこそ特効薬はなく、ひたむきに取り組んでいくしかないと考えている。

「(得点につなげるためにやるべきことは)いっぱいあると思うけど、やっぱそこがサッカーやってて一番面白いところで、『ここからどうやって崩すねん』ってところが楽しい。一人一人のアイデアで…っていうのは監督が求めているものの一つなので、すり合わせが必要かなっていうのと、そうも言ってられないチーム状況の中で、シンプルにゴールへ…という兼ね合いもありながらですね。最後はもっと突き詰めていく必要がある」。

 今季2度目の5連敗というトンネルを抜け、直近2試合は1勝1分と復調傾向にある鹿児島ユナイテッドFC。ここ3試合はいずれも複数得点と攻撃スタイルも実りつつある中で、J2リーグ定着、そして未来のJ1リーグ昇格に向け、経験豊富な34歳に任された使命は大きい。

(取材・文 竹内達也)
★日程や順位表、得点ランキングをチェック!!
●2019シーズンJリーグ特集ページ
●“初月無料”DAZNならJ1、J2、J3全試合をライブ配信!!
●[J2]第27節2日目 スコア速報

TOP