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[MOM634]法政大MF森俊貴(4年)_「今を全力で」

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MF森俊貴が準決勝で決勝点を奪った

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.5 総理大臣杯準決勝 大阪体育大0-1法政大 ヤンマーフィールド長居]

 長山一也監督の起用にしっかりと応えた。前半から好機を決めきれずにいた法政大(関東5)だったが、後半18分にMF森俊貴(4年=栃木ユース)を投入して攻撃への圧力を強める。すると同25分、右サイドのMF紺野和也(4年=武南高/FC東京内定)のサイドチェンジからボールを受けた森が、エリア内で縦に仕掛ける。左足を振り抜くと、ボールはクロスバーを叩いてそのままゴールネットを揺らした。

「和也が中を向いたら僕が動くというのは、意識しているところでした。僕のトラップもいい感じで決まって、ボディーフェイクで相手をかわして、利き足とは逆だったんですけど、いいコースに打てた。あの場面は仕掛けることしか考えていませんでした。絶対にやり切るという意識でいました」

 今大会、法大は主将DF加藤威吹樹(4年=広島ユース)を欠いた戦いを強いられている。代役としてキャプテンマークを巻いている森も「巻かせてもらって思うのは、威吹樹の存在は偉大だったんだなということ」と再認識しているという。「ただそこは割り切って、みんなでミーティングでも話し合っていますが、4年生が一丸とならないといけないと思っています」。

 3年時に北海道コンサドーレ札幌の練習に呼ばれるなど、プロ注目の存在だが、昨年のインカレ優勝後にあまり声をかけてもらえなかったことで、進路については一般企業への就職に重きを置くようになった。2月に始めたという就活。2社を受験しただけだったが、4月にはメガバンクへの就職を内定させた。

 ただサッカーへの未練を断ち切れたわけではない。特にベスト16に残る天皇杯では、東京ヴェルディやガンバ大阪を相手に通用したことが、サッカーでの自信を呼び戻している。

「就職も決まっているので、今を全力で取り組むことに徹しようかなと思っています。でもプロの相手に対してやれるという自信が芽生えてきたので、決してゼロにする必要はないのかなとも思っています。だからまずは法政大の選手として結果を残すことに集中して、もし声をかけてくれるクラブがあれば、しっかりと見極めて判断していければいいですね」

 森は法大サッカー部の中では珍しい理系の情報科学部に籍を置く。同大多摩キャンパス近くにある寮から、約1時間15分の距離にある小金井キャンパスまで通っている。午前中の授業に間に合わないことがあるため、朝練習を早退してキャンパスに向かうこともあるという。

 入学当初は「体育会なので優遇があるのかな」ということで楽観していたが、前期で取得した単位はわずか9単位。そこから気持ちを入れ替えるようになり、さらに翌年から後輩のDF村松正規(3年=藤枝東高)が入ってきたことで、「背中で見せたい。僕がパイオニアになりたい」とより気合を入れ直したという。そして今では卒業の目途も立っていると笑顔で話すことができている。

 2年ぶりの総理大臣杯優勝まであと1つとなった。今夏は法大にとってエースFW上田綺世(鹿島)の退部という大きな試練があった。ただ上田の活躍はチームにとって「刺激でしかない」とも話す。今大会に臨むにあたっても、上田からは「優勝してくれ」というメッセージが寄せられたそうで、森も「お互いの頑張りをみて、刺激し合える関係性を築いていければいい」と表情を引き締める。

「4年生はプロ待ちが多い。だからこの大会はみんな気合が入っていると思う。2年前優勝して、去年悔しい負け方(初戦敗退)をしている。また中1日となる決勝も厳しい試合になると思うが、チーム全員で一丸となって優勝を掴めるようにしっかりと準備していきたいです」

(取材・文 児玉幸洋)
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