beacon

V候補・神奈川県を撃破!走って、耐えた岡山県が“限界値超え”の勝利!

このエントリーをはてなブックマークに追加

岡山県がPK戦を制して準々決勝進出。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[9.30 国体少年男子2回戦 神奈川県 1-1(PK4-5)岡山県 高松緑地多目的球技場(人工芝)]

 岡山県が“限界値超え”の勝利――。第74回国民体育大会 「いきいき茨城ゆめ国体」サッカー競技少年男子の部は30日に2回戦を行い、神奈川県対岡山県戦は1-1で突入したPK戦の末、岡山県が5-4で勝った。岡山県は10月1日の準々決勝で山口県と戦う。

 岡山県が対戦した神奈川県は、過去11大会で5回優勝しているV候補。川崎F U-18と横浜FMユース、横浜FCユースの3クラブの11名で先発を構成した神奈川県は、序盤から圧倒的にボールを支配して攻め続けた。70分間のシュート数は岡山県の4に対して神奈川県は15。だが、1-1で70分間を凌いだ岡山県が、“PKストッパー”GK寺島紳太朗(岡山学芸館高1年)の活躍も加えて“ジャイアントキリング”を成し遂げた。

 PK戦は後攻・岡山県の2人目、先攻・神奈川県の3人目が連続で失敗。その直後、神奈川県はGK木村凌也(横浜FMユース、1年)が岡山県3人目のシュートを1ハンドで止めてリードを奪う。だが、岡山県GK寺島が、神奈川県5人目の中央を狙ったシュートを残した足で止めて振り出しに。そして7人目、寺島が右へ跳んで再び止めると、直後に岡山県の左SB大河原優斗(岡山U-18、1年)が短い間合いから左足シュートを右隅に決めて決着をつけた。

 歓喜の岡山。前線での奮闘光ったFW高岩流星(岡山U-18、1年)は「シンドかったです」と第一声を発し、「この試合勝たないと次に繋がらないから、まずはこの試合頑張らないといけないと思っていました」と続けた。序盤から個々の技術高さ、状況判断の良さを活かしてボールを保持した神奈川県に走らされ、試合終盤は足を攣らせる選手が続出。それでも、選手たちは体力が尽きるまで走り、準備してきたことをやり抜いて見事な勝利を果たした。
  
 岡山県が準備してきたこと、それはテクニックのある選手が揃う神奈川県のパスワークを遮断することだ。高岩とFW山地一颯(岡山U-18、1年)の2トップが後方の選手たちと連係を取りながら、相手CBにプレッシング。加えて、中盤の選手たちがスライド、挟み込みをすることを怠らずに守っていた。

 それでも、技術力の高い神奈川県はテンポの速いパスワークでゴール前のシーンを作り出す。ただし、前半の飲水タイムまでは綺麗に崩そうとし過ぎている感も。その後、スピードと高さを兼ね備えたFW田中幹大(川崎F U-18、1年)とクイックネスでチャンスに絡むFW五十嵐太陽(川崎F U-18、1年)らがシュートシーンを増やしたが、岡山県はCB植本大貴主将(岡山U-18、1年)やCB横山修也(玉野光南高、1年)が最後まで身体を寄せて、コースにシュートを打たせない。

 一方の岡山県は高岩やMF美濃祥真(作陽高2年)が幾度かボールを収めて時間を作っていた。だが、大半の攻撃はU-16日本代表CB諏訪間幸成(横浜FMユース、1年)を中心に攻守の切り替え速い相手にプレッシャーをかけられ、攻め切る前にロスト。それでも前半32分、相手のミスを得点に結びつける。

 神奈川県GKが自陣コーナー付近のルーズボールを処理しようと飛び出したが、「あそこで獲り切ったらチャンスできるかなと思って行きました」という岡山県FW高岩が強烈プレスでインターセプト。そして、右からの折り返しを受けた山地が左足で先制点を流し込んだ。

 耐えた岡山県が1点リードしてハーフタイムへ。森川潤一監督(岡山U-18)は「(先制したことで)心の余裕ができるし、プレッシャーに行けなくなることがある」と考えていたという。ただし、指揮官から「毎試合、決勝なので(体力を)残すな」とメッセージを受けていた選手たちは後半もひたむきに走り続ける。

 後半、ギアを上げた神奈川県に決定的なシュートも打たれたが、岡山県はGK西岡政智(岡山U-18、1年)のビッグセーブや右SB栢原悠聖(岡山U-18、1年)の素早い戻りなどDF陣の集中した守り、中盤、前線の選手の献身的な動きなどで1点リードのまま試合を進める。

 神奈川県は後半17分に190cmのU-16日本代表候補FW 鈴木輪太朗イブラヒーム(日大藤沢高2年)を投入。U-16日本代表FW山崎太新(横浜FCユース、1年)らのドリブルに加え、高さも活用して岡山県DFに圧力をかけた。そして、24分、右SB高畠捷(川崎F U-18、1年)のラストパスを鈴木が決めて1-1。ここで緩めることなく、逆転を目指して攻撃を継続した。

 強敵の猛攻を受けた岡山県だったが、ここで我慢強く走り続け、勝ち越し点を許さずにPK戦勝利。森川監督は「U-16ですし、(今は)自分の限界値を超えていかないと、3年後に良い選手になれない」と語っていたが、自分たちの限界値を超えるほど走った岡山県が全国舞台で成長して、白星も勝ち取った。

 高岩は山口県との準々決勝へ向けて「山口は中国地域として絶対に勝たないといけない。頑張らないといけないです。全然ベスト4も見えないことはないので勝ちたいです」と宣言。V候補を破った岡山県が、次は16年ぶりの準決勝進出を果たしてさらに成長を遂げる。 

(取材・文 吉田太郎)
●第74回国民体育大会「いきいき茨城ゆめ国体」特集

TOP