beacon
TOP > NEWS > 記事詳細

「1年間、懸けてきた思いを披露する場」CPサッカーで日本一に返り咲いたエスペランサ・浦辰大の思い

このエントリーをはてなブックマークに追加

優勝カップを手に笑顔の浦辰大とゲストコーチとして参加したサッカー元日本代表・播戸竜二氏(右)

[10.6 第19回CPサッカー全日本選手権決勝 エスペランサ3-1 P.C.F.A.サルタル](長良川球技メドウ)
 
 脳性まひの選手がプレーする7人制サッカー(CPサッカー)の全国大会「第19回CPサッカー全日本選手権大会」が6日まで2日間、岐阜メモリアルセンター・長良川球技メドウで開催され、決勝はエスペランサ(神奈川)と、P.C.F.A.サルタル(東京)が対戦。エスペランサが2大会ぶりの優勝を飾った。

 エスペランサの精神的支柱であり、CPサッカー日本代表でもある浦辰大が、この大会への思いと優勝の喜びを語った。

「もう、これ以上ないくらいにうれしいです。本当に!やっぱり、このような素晴らしい大会に出場する以上は、『絶対に優勝しかない』と心に誓って戦ってきましたからね。それに加えて、昨年は準優勝だったということもありましたから。あの日、決勝戦で負けたその瞬間から『次回は必ず優勝するぞ!』と、今日まで努力してきたので…言葉が正しいか分からないですけど、今はすっきりしたというか、晴れやかというか、なんていうんだろ…『透き通った気分』です!」

 最終ラインの中央から勝利へ繋がるラストパスを通したわけでも、会場がどよめくようなスーパーゴールを決めたわけでもない。その格別な喜びは、浦が個人的な成功を一度傍に置き、チーム全体の成長と成功を目指してきたからこそのものであり、タイトル獲得という結果以上のものだったようだ。

「自分たちはチーム全員で戦うことを掲げて戦いました。その結果、素晴らしい結果を掴むことができた。『本当に誰ひとり欠けてはいけない。誰かが欠けてしまったらこの優勝はなかった』という思いと、特定の誰かではなくて、たくさんのフィールドプレーヤーがゴールを決めたり、チャンスを創り出した。みんなで勝ち取ったゴールや勝利であることが何よりうれしいです。これは『みんなのおかげで掴んだ優勝』だから」

 エスペランサは2日間の大会の中で6試合を戦い、24ゴールを奪ったが、ゴールネットを揺らした選手は実に7名。浦の言う通り、特定の選手に頼るサッカーではなく、チーム全員が直向きにゴールを目指した。その結果が数字に表れていた。

「例えば、『個』の能力だけで言えば、自分たちよりも優れているチームはあるんです。自分たちには若い選手も多いので、『大会を勝ち抜く経験』という部分でも同じことが言えると思う。チームが一つになれなければ勝っていくことは難しかった。チームとして『攻めて・守って』を積み重ねられたことが大きいですし、結果に繋がりました」

 チームの全員で勝ち取った「優勝」という結果と「攻めて・守って」という成長の証。CPサッカー界の新王者・エスペランサが見据える今後のビジョンとは。

「次となるとやはり『連覇』をしたいです。若い選手たちも自信を付けている。力を伸ばしているので、今大会以上に自分たちが求める良いサッカーをして勝ちたいです。そういう姿を見守ってくれている人たちに見せたい。決して綺麗なサッカーではないけど、たとえ泥臭くとも、体を顔を投げ出して戦う、足を引きずりながらでも、何がなんでもやってやるんだっていう、CPサッカーの素晴らしさを見てもらいたい。できたら、もっとたくさんの方々に」

提供:日本CPサッカー協会

 浦はCPサッカー日本代表選手として、7月にスペインW杯で世界と戦ってきた。様々な経験から「まだまだ世界との差がある」と痛感したという。浦は「自分たちのことをもっと知って欲しい」と思いを馳せる。自身の経験を紐解きながら語る口調は自ずと熱を帯びた。

「現在、少しずつですが、CPサッカーをプレーしてくれる選手が増えている。若い選手が増えていますし、小学生からプレーをしている子もたくさんいる。そういった子たちを育てていくことも大切なことだと思っています。脳性まひや脳梗塞などで障がいを持つ子たちはたくさんいます。自分はそんなみんなに届くような戦いを見せたいですね。自分も最初はそうだったんです。足や手が曲がってしまっていたり、障がいを持っている自分の姿を見られるのが恥ずかしくてイヤでした。でも、自分と同じような障がいを持つ人たちがCPサッカーをプレーする姿を見ると、『かっこいいな!』って思うので、多少泥臭くても、プレーをする姿や戦う姿が誰かの心に届いて、CPサッカーを始めるきっかけを作れたら、って思います。一度見てもらえば、伝わるものがあるはずだから」

 10月とは思えぬ暑さの中たくさんの選手が汗を流し、ボールを追い、ときには体を投げ出して、勝利を目指した。日没が迫るスタジアムには彼らの労をねぎらうかのような優しい風が吹き始めた。浦は、来年2020年に20回目を迎えるこの大会が持つ意義をこう明かす。

「自分たちにとって、この大会は本当に特別な意味がある大会なんです。CPサッカーの選手たちが本気で戦える場所なんです。1年間積み上げてきたことを披露する場所なんです。この大会に懸けてくる気持ちというのはみんな特別で。きっと、みんなが特別な覚悟を持って…ある意味で、選手生命を懸けて、この大会へ来ている。この大会がなければ全国にいる同じような境遇の選手たちと関われることもないという面で大切ですし、本気で取り組んで努力してきたものを出し合って、競い合う、自分たちにとって、この大会はそんな場所なんですよ。この場を与えてくださった方々にも本当に感謝しています」

(取材・文 神宮克典)

●CP/障がい者サッカー特集ページ
●日本障がい者サッカー連盟(JIFF)のページはこちら

TOP