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ついに訪れた“その時”。J1デビューの浦和GK福島春樹「僕もこのくらいできるんだぞと…」

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浦和レッズGK福島春樹

[11.1 J1第30節 鹿島1-0浦和 カシマ]

 ついに“その時”が訪れた。「(試合に)出るなら周くんが怪我をするか、出場停止になる場面しか……」。1週間後に迫るビッグマッチではGK西川周作の出場停止。J1デビュー戦を迎えたGK福島春樹に託されたのは目前の一戦での勝利だけでなく、アジア制覇を見据えたつなぎ役だった。

 専修大1年時から関東大学1部リーグ4連覇という偉業を牽引し、鳴り物入りで浦和に加入した福島。しかし、プロの舞台ではなかなか出番に恵まれなかった。立ちはだかったのは元日本代表GK西川の壁。1年目の2016年に鳥取で経験したJ3リーグ戦の他は、ルヴァン杯や天皇杯でしかピッチに立つことはできなかった。

 ところが10月23日のAFCチャンピオンズリーグ準決勝第2戦・広州恒大戦、ここまでゴールを守り続けてきた西川がイエローカードを出され、アウェーで迎える決勝第1戦・アルヒラル戦の出場停止が決定。これにより、2年ぶりのアジア制覇を決める重要な一戦で福島の出番が内定する形となった。

 しかし福島は今季、天皇杯2回戦・流通経済大戦のみの出場。試合勘の乏しさが懸念される。そこでこの日、浦和は状態に問題のない西川をあえて外し、福島を起用する決断をした。福島にとっては「アルヒラルを想定して使ってくれたと思う」という普段とは異なる思いも抱えつつの一戦だった。

 前半12分、ほとんど最初とも言える守備機会は大ピンチで始まった。ロングフィードに反応したMF土居聖真の抜け出しに対して飛び出したが、一足先にボールに触れた土居がボレーシュートを敢行。もっとも、わずかに福島の身体に当たったボールは幸いにもゴールマウスから逸れていった。

「スカウティングで狙ってくると言われていたけど、あのシーンを振り返ってみると飛び出さなくても良かったんじゃないかとも思うし、飛び出した自分が触ってCKに逃げられたのは自信にはつながった」。初めてJ1のピッチに立った26歳は一つのプレーを反省しつつ、手応えとなる経験を積み重ねていた。

 その後は相手のミドルシュートを正確なキャッチングで処理し、危険なクロス対応も難なくこなした福島。それでも後半27分、波状攻撃と相手助っ人の精密シュートに屈した。MF土居聖真の「入ったと思った」(土居)というキックに対してはファインセーブを見せたものの、FWセルジーニョの“天井シュート”になすすべもなかった。

「僕らは何センチ、何ミリの世界で仕事をしていると思っている。(土居のシュートは)最後のところでボールを触ったところは少しばかり余裕があったし、ギリギリというより手の平で触れたので、そこで手を返してゴール(ライン)に逃げたりとか、瞬時の中でも時間がない中でも判断できればもっとクオリティーが上がる」。この場面でも単なるビッグセーブで片付けることなく、一つ一つのプレーの意味合いに真摯に向き合う姿勢を見せた。

「間違いなく人生で一番大きな試合だったし、そこで経験できたのは大きなことだったけど、負けてしまったのが全て」。福島自身が振り返ったように、チームの現状を考えればここでの勝ち点0は軽くはない。しかし、大胆起用の成否がこの試合だけで決まらないのも事実だ。

 来週末の11月9日、26歳の守護神はさらに“人生で一番大きな試合”を任されることになる。「アルヒラル戦に活かさないといけないし、責任を持っていく」。この一戦で蓄えた経験値と、「僕もこのくらいできるんだぞと証明できたとは思う」という意地を、アウェー・サウジアラビアの地で見せつける構えだ。

(取材・文 竹内達也)
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