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「汗ではなく、血をかけ!」ブラサカ日本代表・ロベルトが危機感を持った世界王者のハート

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取材に応じる佐々木ロベルト泉

 ブラインドサッカー日本代表が24日、千葉市内で行った2日間の合宿を打ち上げた。FP佐々木ロベルト泉は10月、アジア選手権を終えた後に約1か月、生まれ故郷であり、パラリンピック4連覇中の世界王者・ブラジルに武者修行。ロベルトは現地のクラブチーム・アパデヴィに加入し、ブラジル選手権にも4試合出場した。

「3月のワールドグランプリで対戦したコロンビア代表のエース、キンテーロが紹介してくれたみたいで、クラブの人から大会後に連絡をもらいました。クラブは僕にとってもいい経験だから『ホテルと食べ物さえ何とかなれば行きます』と返事をしてチームに加わりました。ブラジルのリーグはスピード、技術とも素晴らしいし、さすが世界一。いい経験になったね」

 ブラジル選手権に出るクラブは、ブラジルのほか、アルゼンチン、コロンビアといった強豪国のエース級の選手が集結しているという。ロベルトは選手としてのサラリーはもらえなくても、得難い経験を積み上げるため、迷うことなく海を渡った。現地で練習や試合に参加し、寝食をともにしながら、ブラジル代表が王座に君臨できる情報を集めていた。

「今、ブラジルはサッカーの練習は週に2,3回しかやらなくて、そのかわり筋トレを週に6回やっている。試合中にローテーションでエース格の選手を休ませて、違う選手が出てもレベルを維持するために、みんなの体力のベースをあげているよ。日本では僕のことをみんな強いって言ってくれるけど、あっちでは『もう少し頑張れ』って言われたね。あとは気持ちの部分が日本人とは全然違う。日本人は一生懸命やることを『汗をかけ』って言うけど、彼らは『血をかけ』って。それだけ人生がかかっている。この話は日本の代表選手にも話はしたよ」

 たとえばブラジル代表になれれば、1か月約70万円もらえる生活が五輪まで4年間、保証されるが、代表から漏れると一気に下がるという。また、打倒・ブラジルの最右翼とみられる中国も、金メダルを獲得すれば、その後一生仕事をしなくても暮らせるお金を手にできると言われている。人生の安定や保証を得るために頑張るという明確なモチベーションがあるメダル候補の国と比べると、今のブラインドサッカー日本代表は「メダルを獲得したい理由」を明確に説明できる人はきっと少ないし、それ以前に環境も整っていない。環境が生み出すモチベーションの違いに、ロベルトは危機感を覚えた。

普段は最終ラインが多い佐々木ロベルト泉が積極果敢にシュート(右から3人目)

 ブラジルに武者修行に行く直前のアジア選手権の3位決定戦・タイ戦で右足首をねんざ。完治していなかったが、テーピングを巻きながらブラジルでプレーを続けた。さらに練習中、激しくフェンスに激突し、右肋骨を骨折した。

「肋骨については、病院にいったら試合に出られなくなるからブラジルでは病院に行かなかった。(アジア選手権で痛めた)右足首も完治には3カ月ぐらいかかるようだから、付き合いながらやるしかないね」

 まさに生きるか、死ぬかの世界に身を置き、心身共に世界との差を感じたロベルトは、その危機感を他の代表選手にも身をもって伝えるため、痛みを感じながらでもハードなプレーを続けている。12月8日、来年のパラリンピックに出場する可能性が高いアフリカ王者・モロッコ戦へむけてこんなコメントを残した。

「フィジカルも強いし、足も速い。強いし、ズルさもあるけど、そういうチームを倒すのは楽しい。戦いには死ぬ気で行くよ」

【日本代表合宿参加メンバー】
GK佐藤大介(たまハッサーズ)
GK髙橋太郎(ラッキーストライカーズ福岡)
GK泉健也(free bird mejirodai)
GK佐々木智昭(コルジャ仙台ブラインドサッカークラブ仙台)
FP川村怜(パペレシアル品川)
FP佐々木ロベルト泉(パペレシアル品川)
FP寺西一(パペレシアル品川)
FP加藤健人(埼玉T.Wings)
FP佐々木康裕(松戸ウォーリアーズ)
FP園部優月(free bird mejirodai)
FP黒田智成(たまハッサーズ)
FP日向賢(たまハッサーズ)
FPアブディン モハメド(Avanzareつくば)
【注】田中章仁は体調不良のため、2日間とも欠席

(取材・文 林健太郎)

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