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「全国で取れないと言われるのが…」“驚異の16戦連発男”國學院久我山FW山本航生が全国初得点から開幕ハット

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シュート12本でハットトリックを達成したFW山本航生(写真協力=高校サッカー年鑑)

[12.30 選手権開幕戦 國學院久我山高 8-0 前原高 駒沢]

 打ちに打ったり、80分間でシュート数は12本に達した。うち3本を得点につなげ、ハットトリックを達成。國學院久我山高(東京B)のFW山本航生(3年)は「シュートの意識を高くしようと思っていたので、それは良かったけど、もっと決め切る場面もあった。これから(相手の)レベルが上がると、シュート1本1本、チャンス一つひとつで決め切る力も大事になる。ここから修正して、一つのチャンスで決め切る選手になりたい」と満足せずに言った。

 立ち上がりは硬さも見えた。「こういう舞台が初めてで、だいぶ力が入っていた」。前半6分、11分とFW山下貴之(3年)が得点を重ねる中、山本航は前半8分、13分の好機を逃した。全国という舞台がエースに普段とは違う緊張感を生んでいた。

「インターハイで自分が無得点でチームも敗退した。センターフォワードをやっている以上、自分にも責任がある。東京都では点を取れても全国で取れないと言われるのも悔しかった」。3月の東京都1部リーグ初戦から関東大会予選、関東大会、そして6月のインターハイ予選と、驚異の公式戦16試合連続ゴールを記録した。しかし、全国総体1回戦で國學院久我山は神村学園(鹿児島)に2-3で敗戦。山本航は無得点に終わった。

「東京都で点を取っても、全国では結果を出していない。全国で自分の力を証明したかった」。その思いは前半23分に結実する。DF山本献(3年)の右FKに合わせるヘディングシュートで全国初ゴール。「ヘディングで取れたのは自分でも意外だったけど、そこから勢いに乗れた」。後半7分には山下がハットトリックを達成し、山本航も後半20分、30分に得点。14年ぶりの開幕戦ハットトリックを2選手が記録し、開幕戦が採用された99年度大会以降の最多得点記録、最多得点差記録も一挙に更新した。

「自分たちの強みである攻撃を前面に出したことが2人のハットトリックが生まれた要因だと思う。毎年、サイドの選手は1対1が強いタイプじゃないけど、今年は両ウイングが1対1で仕掛けられる選手。久我山の特徴である中央突破も捨てちゃいけないし、そういう意味で攻撃のバリエーションが増えた」

 今年のチームの強さをそう表現する山本航自身は「裏への抜け出しからのシュート、シュートを打つまでのFWとしての駆け引き、両足でシュートが蹴れるのが自分の武器」と自己分析する。参考にしているのはFW小林悠(川崎F)、FW興梠慎三(浦和)、FWセルヒオ・アグエロ(マンチェスター・シティ)といったタイプ。「DFを見て、一瞬の駆け引きで勝つFWが好き」と明かす。

 小学6年生のとき、父親に連れられて見に行った選手権で國學院久我山の試合に衝撃を受けたことが入学の決め手になった。「渡辺夏彦選手や富樫佑太選手がいて、強いインパクトが残っている。小6の時点で高校ではここでサッカーがしたいと思った」。あこがれのユニフォームを着て、初めて立った全国選手権のピッチ。そこでハットトリックを達成し、初戦突破を果たしたが、まだ通過点に過ぎない。目指すは4大会前、先輩たちが決勝で東福岡(福岡)に0-5で敗れ、果たせなかった全国制覇の夢だ。

「もう一度埼スタのピッチに立って、久我山が成し遂げていない日本一を成し遂げようという気持ちでいる」。次なる戦いは来年1月2日の2回戦。専修大北上(岩手)と龍谷(佐賀)の勝者と対戦する。「試合前に監督からも『今日勝つだけじゃない。どういう試合をするかで選手権が変わる』という話があった。試合を見ている人に自分たちのサッカーを見せてやろうという気持ちでいたし、(初戦に大勝して)よく言えば勢いに乗るけど、悪く言うとフワッとなる。気を引き締めて、一戦必勝でやっていきたい」。記録ずくめの大勝発進にも気を緩めることなく、次戦を見据えた。

(取材・文 西山紘平)
●【特設】高校選手権2019

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