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神村学園が2年前の王者・前橋育英撃破!「食ってやるぞ」の気持ちで引かずに戦い、PK戦制す!

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PK戦勝利を決めた神村学園高がGK吉山太陽中心に喜びを爆発させる

[12.31 選手権1回戦 前橋育英高 0-0(PK4-5)神村学園高 浦和駒場]

 神村学園が2年前の王者を撃破――。第98回全国高校サッカー選手権は31日、1回戦を行った。2年ぶりの優勝を狙う前橋育英高(群馬)と夏のインターハイ16強の神村学園高(鹿児島)との一戦は、0-0で突入したPK戦の末、5-4で神村学園が勝利。神村学園は20年1月2日の2回戦で富山一高(富山)と戦う。

 相手は2年前の全国王者。それでも、神村学園のMF軸丸広大主将(3年)は「『食ってやるぞ』という感じでした。(前橋育英を) 過大評価はしていなかった」と振り返り、有村圭一郎監督も「『引かずにらしくやろう』と言っていた」と説明する。

 神村学園は夏のインターハイ初戦で前評判の高かった関東王者・國學院久我山高(東京)を3-2で撃破。また、PK戦で敗れたものの、プレミアリーグ勢の尚志高(福島)相手に優勢に試合を進めている。この日、自信を持って戦った神村学園は相手のプレスバックや囲い込みの速さに苦しみながらも引かずに攻め続けて劇的白星。2回戦進出が決まると、殊勲のGK吉山太陽(2年)を中心に喜びを爆発させた。

 前橋育英はU-17日本代表候補MF櫻井辰徳(2年)が左足首の負傷によってベンチ外。群馬県予選決勝で決勝点のMF熊倉弘達(2年)もケガでベンチを外れた一方、188cmDF関礼恩(3年)、185cmDF松岡迅(3年)、181cmDF相原大輝(3年)の3バックという新システムで強豪対決に臨んだ。

 一方の神村学園は鹿児島県予選決勝で左SBを務めていたMF軸丸広大(3年)を1ボランチに配置。攻撃時は左SB下川床勇斗(2年)と右SB中島吏九(3年)が軸丸と並ぶような形で攻撃を組み立てる。ただし、「中盤のところでもっとギュッとしたかった」(有村圭一郎監督)という神村学園だったが、3人の距離感が離れすぎてしまうなどパスワークのテンポ、精度が上がらない。

 前半は30分頃まで前橋育英のプレスが機能。狙いを定めてボールを奪い取り、連続攻撃に繋げていた。23分には、MF山岸楓樹(3年)のラストパスに左WB並木歩己(3年)が走り込み、ターンから左足シュート。だが、神村学園GK吉山が身体を投げ出してストップする。

 神村学園は前半終わり頃から中盤でボールを運ぶ回数を増加。そして、スペースのできた左サイドを活用し、MF濱屋悠哉(3年)がカットインからゴールを狙う。前半終了間際には中央からドリブルで割って入ったMF永吉飛翔(2年)の下に相手のクリアボールがこぼれるが、シュートを打ち切ることができない。

 後半、前橋育英は山岸の配球などからFW中村草太(2年)やMF倉俣健(3年)がPAに飛び出すが、神村学園GK吉山が勇気ある飛び出しで阻止する。前半に比べてボールを保持する時間、押し返す回数を伸ばした神村学園も22分に中央からボールを運び、PA内左寄りの位置から濱屋が狙い澄ました右足シュート。ボールはGKの横を抜けたが、カバーしていた前橋育英DF相原がゴールライン上でクリアして得点を許さなかった。

 前橋育英は山岸の弾丸ミドルやMF渡邉綾平(3年)の右足FK、並木のロングスローなどでゴールを脅かし、神村学園もバイタルエリアにできたスペースを突く形でPAに迫る。迎えた後半アディショナルタイム、前橋育英は中盤で山岸がボールを奪ってカウンター攻撃。そして、倉俣の左足シュートが枠を捉えたが、神村学園GK吉山が再びビッグセーブではじき出す。神村学園は思うような攻撃を展開した訳ではなかったが、それでも吉山やCB成富勝仁(3年)、CB 稲田翔真(2年)中心に粘り強く守ったことで白星を引き寄せる。

 PK戦は先攻・神村学園4人目、スーパーサブ・MF樋渡鯉太郎(3年)のシュートを前橋育英GK高橋怜士(3年)が右へ跳んでストップする。だが直後、前橋育英はチームリーダー・渡邉の右足シュートがクロスバー上方へ外れてしまう。神村学園は6人目の成富のシュートがポストを叩きながらもGKに当たって入るなど幸運もあった。そして、前橋育英の6人目、エース格のレフティー・倉俣の左足シュートを神村学園GK吉山が左へ跳んでストップ。この瞬間、決着がついた。

 神村学園はシュート数で上回るなど、前橋育英相手に引かずに、また我慢強く戦い抜いて勝利。濱屋は「自信になりましたけれど、ここで気持ちが舞い上がっていたら次の試合でスカッとやられてしまう。しっかりと調整して次に臨んでいきたい。鹿児島のために勝ち進んで、結果として全国制覇で恩返ししたい」と力を込めた。目標は鹿児島県勢にとって15年ぶりとなる全国制覇。強豪対決を制した神村学園がここから内容を向上させながら攻撃的なサッカーを続けて勝ち上がる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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