空中vs地上の異種激闘…“7.4cm高い”矢板中央がPK戦制して2回戦へ!
[12.31 選手権1回戦 矢板中央高2-2(PK6-5)大分高 オリプリ]
第98回全国高校サッカー選手権は31日、1回戦を行い、ゼットエーオリプリスタジアムの第1試合は矢板中央高(栃木)と大分高(大分)が対戦した。空中戦で圧倒した矢板中央が2点を先行するも、地上戦で反撃に出た大分がそこから2点を返す大熱線。最後は2-2で迎えたPK戦を矢板中央が6-5で制し、大手前高松高(香川)との2回戦に進んだ。
序盤は先発11人の平均身長で7.4cmも上回る矢板中央が、ロングボール攻勢で主導権を握った。すると前半4分、GK藤井陽登(1年)のパントキックで一気に攻め込むと、相手に押し返す間を与えぬままにMF靏見拳士朗(3年)がミドルシュート。これは大分GK塩治晴士(1年)が横っ飛びで止めたが、こぼれたボールをFW多田圭佑(2年)がワンタッチで決め、先制に成功した。
試合の入りで痛い失点を献上した大分だったが、その後は地上戦の細かいパスワークで反撃を試みる。前半9分、左サイドを攻め上がったFW菊地孔明(3年)が左ポスト直撃のシュートを放つと、11分にもFW堤聖司(2年)のポストプレーから良い形の攻撃を披露。18分にはMF重見柾斗(3年)との美しいパス交換で抜け出した菊地が決定機を迎えた。しかし、このシュートは絶妙なタイミングで足を出した藤井のビッグセーブに阻まれた。
先制点以降は防戦一方となっていた矢板中央は前半20分すぎ、DF坂本龍汰(2年)のロングスローや靏見のプレースキックで戦況を打開。25分には靏見の直接FKがゴール左隅に飛んだが、塩治が横っ飛びではじき出した。その後もセットプレーを有効に使う矢板中央の波状攻撃が大分ゴールを襲うも、DF福井健斗(3年)のブロックなどで耐え抜いた。
大分は前半33分にも決定機を迎える。左サイドで堤がタメをつくると、相手の守備ブロックをうまく回避しながら右サイドにボールを展開。MF永松恭聖(3年)とMF長澤真人(3年)のワンツーからゴール前にクロスが上がった。しかし、ニアで合わせた菊地のヘディングシュートは枠を外れ、前半を0-1のまま終えた。
後半の立ち上がりも前半同様に矢板中央のペース。すると5分、左サイドを切り裂いたMF左合修土(3年)がペナルティエリア内で長澤に倒され、PKを獲得する。このキックを左合が自ら右へと沈め、またも立ち上がりの得点でリードを2点に広げた。大分は11分、1トップの堤に代わり、県予選決勝で決勝ゴールを挙げていたFW大神颯汰(3年)を投入した。
大分はさらに後半17分、左サイドバックの福井に代わって右ウイングのFW森山悠太(3年)を入れ、MF瀬藤聖人(3年)をSBに回す攻撃的用兵に打って出た。すると19分、瀬藤の縦パスから左に開いた永松がクロスを入れると、ファーで合わせたのは森山。ヘディングシュートをネットに流し込み、指揮官の起用が的中する形で1点を返した。
矢板中央は後半21分、FW西村碧海(3年)に代わってFW久永武蔵(3年)を投入し、主導権を取り戻しにかかる。ところが26分、大分は空中戦でなんとか競り勝った長澤がボールを前に送ると、これを拾った重見が相手守備陣の間隙をぬって豪快なドリブル突破を披露。そのまま左サイドのスペースにスルーパスを送ると、うまく抜け出した大神が正確なシュートを決め、土壇場で同点に追いついた。
2点差を追いつかれた矢板中央はそこから交代選手を使って再スタート。185cm長身のMF新倉礼偉(2年)、ロングスローを持つDF島崎勝也(1年)を次々に起用し、大分の弱点となる高さを突きにかかる。それでも40分、久永の左足シュートはクロスバーに直撃し、アディショナルタイム4分にのDF長江皓亮(3年)の決定的シュートは大きく枠外。互いにスタイルの違うチーム同士の激戦は規定の80分間を2-2で終え、運命はPK戦に委ねられた。
PK戦は互いに『はると』の名を持つルーキーGK対決。先攻の大分、後攻の矢板中央ともに正確なキックが続き、5人目までは全員が成功した。大分はサドンデス6人目のキックが左ポストに阻まれ絶体絶命となったが、矢板中央6人目のシュートも大きく上へ。それでも矢板中央は藤井が大分6人目のキックを止めて勝負あり。最後はMF森山真生(3年)が鋭く左に決めて大激戦を制した。
試合後、矢板中央の高橋健二監督は「全国ではこういうゲームを予想していた。選手たちがよく勝ち上がってくれた」とほっとした様子で話した。もっとも、2点リードからの同点劇には「守備力が弱いところが出てしまった」と課題も指摘。ここからの戦いでは堅守の伝統に立ち返るべく、「失点を受け止めてまずは守備から得意のセットプレーでモノにしたい」と意気込んだ。
一方、敗れた大分は前回大会に続き2大会連続でのPK負け。また矢板中央に対しても2015年度大会に続く連敗となり、先輩たちの雪辱は果たせなかった。「入りで点を取られたのがまずかった。試合に入れていなかった」と前半早々の失点を悔やんだDF佐藤芳紀主将(3年)は「守備で耐えていた中で良い流れで点が入ったけど、3点目を取れなかった」と80分間での戦いに敗因を見出した。
(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019
第98回全国高校サッカー選手権は31日、1回戦を行い、ゼットエーオリプリスタジアムの第1試合は矢板中央高(栃木)と大分高(大分)が対戦した。空中戦で圧倒した矢板中央が2点を先行するも、地上戦で反撃に出た大分がそこから2点を返す大熱線。最後は2-2で迎えたPK戦を矢板中央が6-5で制し、大手前高松高(香川)との2回戦に進んだ。
序盤は先発11人の平均身長で7.4cmも上回る矢板中央が、ロングボール攻勢で主導権を握った。すると前半4分、GK藤井陽登(1年)のパントキックで一気に攻め込むと、相手に押し返す間を与えぬままにMF靏見拳士朗(3年)がミドルシュート。これは大分GK塩治晴士(1年)が横っ飛びで止めたが、こぼれたボールをFW多田圭佑(2年)がワンタッチで決め、先制に成功した。
試合の入りで痛い失点を献上した大分だったが、その後は地上戦の細かいパスワークで反撃を試みる。前半9分、左サイドを攻め上がったFW菊地孔明(3年)が左ポスト直撃のシュートを放つと、11分にもFW堤聖司(2年)のポストプレーから良い形の攻撃を披露。18分にはMF重見柾斗(3年)との美しいパス交換で抜け出した菊地が決定機を迎えた。しかし、このシュートは絶妙なタイミングで足を出した藤井のビッグセーブに阻まれた。
先制点以降は防戦一方となっていた矢板中央は前半20分すぎ、DF坂本龍汰(2年)のロングスローや靏見のプレースキックで戦況を打開。25分には靏見の直接FKがゴール左隅に飛んだが、塩治が横っ飛びではじき出した。その後もセットプレーを有効に使う矢板中央の波状攻撃が大分ゴールを襲うも、DF福井健斗(3年)のブロックなどで耐え抜いた。
大分は前半33分にも決定機を迎える。左サイドで堤がタメをつくると、相手の守備ブロックをうまく回避しながら右サイドにボールを展開。MF永松恭聖(3年)とMF長澤真人(3年)のワンツーからゴール前にクロスが上がった。しかし、ニアで合わせた菊地のヘディングシュートは枠を外れ、前半を0-1のまま終えた。
後半の立ち上がりも前半同様に矢板中央のペース。すると5分、左サイドを切り裂いたMF左合修土(3年)がペナルティエリア内で長澤に倒され、PKを獲得する。このキックを左合が自ら右へと沈め、またも立ち上がりの得点でリードを2点に広げた。大分は11分、1トップの堤に代わり、県予選決勝で決勝ゴールを挙げていたFW大神颯汰(3年)を投入した。
大分はさらに後半17分、左サイドバックの福井に代わって右ウイングのFW森山悠太(3年)を入れ、MF瀬藤聖人(3年)をSBに回す攻撃的用兵に打って出た。すると19分、瀬藤の縦パスから左に開いた永松がクロスを入れると、ファーで合わせたのは森山。ヘディングシュートをネットに流し込み、指揮官の起用が的中する形で1点を返した。
矢板中央は後半21分、FW西村碧海(3年)に代わってFW久永武蔵(3年)を投入し、主導権を取り戻しにかかる。ところが26分、大分は空中戦でなんとか競り勝った長澤がボールを前に送ると、これを拾った重見が相手守備陣の間隙をぬって豪快なドリブル突破を披露。そのまま左サイドのスペースにスルーパスを送ると、うまく抜け出した大神が正確なシュートを決め、土壇場で同点に追いついた。
2点差を追いつかれた矢板中央はそこから交代選手を使って再スタート。185cm長身のMF新倉礼偉(2年)、ロングスローを持つDF島崎勝也(1年)を次々に起用し、大分の弱点となる高さを突きにかかる。それでも40分、久永の左足シュートはクロスバーに直撃し、アディショナルタイム4分にのDF長江皓亮(3年)の決定的シュートは大きく枠外。互いにスタイルの違うチーム同士の激戦は規定の80分間を2-2で終え、運命はPK戦に委ねられた。
PK戦は互いに『はると』の名を持つルーキーGK対決。先攻の大分、後攻の矢板中央ともに正確なキックが続き、5人目までは全員が成功した。大分はサドンデス6人目のキックが左ポストに阻まれ絶体絶命となったが、矢板中央6人目のシュートも大きく上へ。それでも矢板中央は藤井が大分6人目のキックを止めて勝負あり。最後はMF森山真生(3年)が鋭く左に決めて大激戦を制した。
試合後、矢板中央の高橋健二監督は「全国ではこういうゲームを予想していた。選手たちがよく勝ち上がってくれた」とほっとした様子で話した。もっとも、2点リードからの同点劇には「守備力が弱いところが出てしまった」と課題も指摘。ここからの戦いでは堅守の伝統に立ち返るべく、「失点を受け止めてまずは守備から得意のセットプレーでモノにしたい」と意気込んだ。
一方、敗れた大分は前回大会に続き2大会連続でのPK負け。また矢板中央に対しても2015年度大会に続く連敗となり、先輩たちの雪辱は果たせなかった。「入りで点を取られたのがまずかった。試合に入れていなかった」と前半早々の失点を悔やんだDF佐藤芳紀主将(3年)は「守備で耐えていた中で良い流れで点が入ったけど、3点目を取れなかった」と80分間での戦いに敗因を見出した。
(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019