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[MOM3125]國學院久我山GK村上健(2年)_“どうぞどうぞ”の最終キッカー「みんな『お前が蹴れ』と(笑)」守護神がPKを止めて決めてヒーローに!

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勝利のヒーローとなった國學院久我山高GK村上健(2年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 選手権2回戦 専修大北上高0-0(PK5-6)國學院久我山高 NACK]

 大役は直前に決まった。勝利が懸かった7人目のPKキッカー。「みんなから『お前が蹴れ』って言われました(笑)」。國學院久我山高(東京B)のGK村上健(2年)が左足で放ったシュートは、相手GKに触られながらもゴール左へ。PKストップも見せた2年生守護神が攻守で見せ場を作り、チームを3回戦に導いた。

 前半から看板のパスサッカーで主導権を握っていた國學院久我山だが、トラブルが起きたのは後半11分。センターバックのDF加納直樹(3年)が裏へ抜け出そうとした専修大北上高(岩手)のFW阿部耀仁(2年)を倒して止め、2枚目のイエローカードで退場を命じられた。

 國學院久我山は10人となった後も攻撃の姿勢を貫き、カウンターのピンチも懸命にしのいで0-0でPK戦へ。「(フィールド選手が)PKまでつないでくれたことに感謝して、ここで自分が止めないと今日は何もできないまま負けてしまうと思ったので、自分が絶対に止めてやろうと思いました」。チームメイトの頑張りにGKの村上が応える。

 先攻の専修大北上3人目のキッカー、MF福浦瑠星(3年)のシュートコースを読み、左に飛んで見事にストップしてみせた。しかし、後攻の國學院久我山5人目のDF河原大輔(3年)が止められ、PK4-4でサドンデスへ。両チームの6人目が成功し、PK5-5で7人目を迎えると、専修大北上DF那須永翔(3年)のシュートはクロスバーの上に外れる。3年生を中心に選手間でキッカーを決めていた國學院久我山の7人目は、村上に託された。

 勝利が懸かる7人目のキッカーを巡っては、選手たちで譲り合うようなシーンもあり、のちに清水恭孝監督が「(7人目は譲り合っていた?)そうですね。多分、(ともに2年生の)大窟(陽平)も田中(琢人)も蹴りたくないと、村上に蹴らせたと思います(笑)」と冗談まじりに語っている。

「(相手の)7人目が蹴り終わった後に、みんなから『お前が蹴れ』って言われて、その時に決まりました(笑)。本当は一番最後に蹴ると思っていたので、いきなり言われてビックリはしたんですけど、最後のキッカーを任されたので絶対に決めてやろうと思いました」(村上)

 緊張を感じつつも、「あまり考えちゃうと力んで思ったコースに蹴れないと思ったので、とにかく無心で自分たちが後攻とか先攻とか関係なしに、ただ1本蹴ろうという気持ちで蹴りました」という村上。ただ、突然の大役に蹴るコースのことまで考える余裕はなく、打ったシュートが相手GKの手に触れて一瞬ヒヤリとした。

「いきなり自分がキッカーって言われてボールを置くまでコースまでは考えてなかったので、甘いコースにはなってしまったんですけど、決められてよかったです(笑)」

 12月30日の開幕戦・前原高(沖縄)戦(8-0)のド派手なゴールラッシュから一転し、2回戦はスコアレスからPK戦を制しての辛勝。「全国なのでああいう勝ち方だけではなく、こういう苦戦も強いられるのは前から分かっていたので、これで決してネガティブにならずに前向きに挑もうと思います」。今回の経験もプラスにとらえて次の戦いに臨む。

 3回戦の相手は昌平高(埼玉)に決まった。國學院久我山と同じくパスワークを武器とし、個々のスキルも高い。「攻撃陣のドリブルが本当にすごいチームだなという印象があって、自分たちの代の須藤直輝(2年)くんが1人でディフェンスラインを打開する力を持っている」。相手の攻撃力を警戒する村上は「(チームが攻め込まれて)あまり自分が止める場面が多いのは良くないですけど、それでも最後の砦として、少しでもチームに貢献できたらなと思います」と活躍を誓った。

(取材・文 阿部哲也)
●【特設】高校選手権2019

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