beacon

“飢えていた”9番の帰還…静岡学園FW加納大「決勝に向けていい材料」

このエントリーをはてなブックマークに追加

静岡学園高FW加納大(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 静岡学園高の背番号9を任されているFW加納大(2年)は今大会、開幕前に負った左膝の負傷で限られた出場時間となっている。それでも準決勝の矢板中央高戦では後半22分から投入され、一定時間のプレーで試運転を完了した模様。「点を取って自分という存在を売り出したい」。最後の一戦では、これまでの鬱憤を晴らすような活躍を見せるつもりだ。

 本来であれば、チームの最前線で走り回っているはずだった。加納は昨年11月16日に行われた静岡県予選決勝の富士市立高戦(○6-1)で、チームを全国に導く2ゴールを挙げたものの、全国大会を目指してトレーニングしている最中に左膝の炎症が悪化。すぐに本調子に戻すことは難しく、本大会を控えの立場で迎えている。

「県予選の決勝でうまく点を取れて、これから全国で活躍しようという中のアクシデントだった」。そうした中、チームは全国の代表校を次々と無失点で破り、23年ぶりの準決勝進出という快挙を達成。代役として入ったFW岩本悠輝(3年)も5ゴールを挙げる活躍を見せ、加納に頼ろうという場面はなかなか訪れなかった。

 準々決勝までの4試合、背番号9のプレータイムは3回戦終盤の19分間だけ。「外から見る時間が多くなってしまった。その中でもチームがうまくいっていて、大量得点しているのを外から見ていた。自分も早く試合に出て点を取りたいなって飢えているというか、ウズウズしていた」。全国のピッチへの渇望は日に日に高まっていた。

 仲間たちの快進撃に複雑な思いがあったことは隠さない。「チームが勝ち上がっていくのは自分にこれからチャンスがあるという意味ではうれしさもあったけど、自分が活躍してチームを勝たせていくイメージをずっとしていたし、ここで自分の名前を大きくできればと思っていたので悔しい気持ちもあった」。それでもまずは状態を整え、その先に待つ出番に準備を続けていた。

 そうして迎えた準決勝の矢板中央戦、極端に引いて守ってくる相手を崩せない展開が続いた後半22分、ついに背番号9が呼ばれた。すると直後の24分、まずはMF松村優太(3年)のアーリークロスにボレーで合わせる。44分にはMF浅倉廉(3年)の伸びたトラップに反応し、GKを強襲するシュートも放つ。いずれもゴールには繋がらなかったが、手応えの残る約30分間だったようだ。

「外の選手を使ったり、自分で打ったりとか、攻撃のバリエーションを増やせれば得点のチャンスも広がると思った。シュートも何本か打てたし、収めてサイドの選手に散らすプレーも何本かあったし、その点では良かった」。むろん「FWなので得点を決められなかったのは課題」という心残りもあったが、そこは次の試合で乗り越えていく構えだ。

「今日はプレータイムがあったので、点を取れれば一番良かったけど、試合に出て少しは感触を掴むことができた。そこは決勝に向けていい材料になる」。そのように自身を示した17歳はチームのため、そして自分のキャリアのために爆発を誓う。「中学時代から名前を聞いてきた青森山田と対戦するチャンスがやっと来た。点を取って自分という存在を売り出したいです」。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

TOP