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目標とされる存在となった青森山田。彼らを選手権決勝まで勝ち上がらせた力、決勝で欠けていた力

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前王者となった青森山田高の選手たちだが、敗れても真摯な態度。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

「絶対王者」「ラスボス」「高校サッカーで一番のチーム」「打倒・青森山田」「青森山田と戦いたい」……。今回の選手権、最も戦いたい相手として前回大会優勝校・青森山田高の名を挙げる選手はとても多かった。

 今回を含めた最近5大会の選手権で4強以上4度、うち3度が決勝進出。青森山田は19年のプレミアリーグファイナルを制し、2度目となる「高校年代真の日本一」に輝いている。プレミアリーグでは、Jクラブのアカデミーチームや強豪校相手に毎年のように優勝争い。ポゼッション型やカウンター型のチームなど、どのような相手に対しても上回ることができる総合力の高さが最大の強みだ。

 中でも、「ゴールを隠す(シュートコースを消す)」「走らせない(相手選手が加速できないように守る)」「(PAへ)侵入させない」など青森山田が使うキーワードは近年、全国の強豪校からも耳にすることが増えた印象だ。青森山田は現在、高校サッカーのスタンダードを高め、全国各地の高校から最も目標とされる存在になっている。

 その青森山田は、今回の選手権で史上10度目(通算9校目)となる2連覇に挑戦。“死のブロック”と評される組み合わせに入ったが、米子北高(鳥取)、富山一高(富山)、昌平高(埼玉)、帝京長岡高(新潟)といずれも日本一を掲げて選手権に臨んできた強敵を打ち倒して決勝まで勝ち上がってきた。

 そして、決勝戦でも得意のセットプレーからU-17日本代表CB藤原優大(2年)が先制ヘッドを叩き込み、ショートカウンターからU-18日本代表MF武田英寿主将(3年/浦和内定)がPKを獲得。そのPKを自ら決め、前半33分までに2点を先取した。前半はテクニカルな静岡学園に対して高い位置で守備ブロックを構築し、その鋭いプレッシングで相手のビルドアップを封殺。5-0で制した16年度大会決勝のように、快勝の予感も漂わせるような戦いで試合を進めていた。

 だが、前半終了間際にクリアミスから失点。すると、後半もチャンスの数を多く作られた訳ではなかったが、21分に相手のファインゴールで追いつかれてしまう。そして40分、得意とするセットプレーで逆にゴールを破られて2-3で逆転負け。黒田剛監督は「この敗戦は徹底できなかった。徹底することでこれまでの青森山田の勝利があった」と指摘する。

 特に1点目と3点目は、普段徹底していることを実行していれば防げた失点だった。この日も相手のクロスやセットプレーを跳ね返す部分、ゴールを隠す守備、切り替えの速い攻守などを徹底していたが、それを90分間やり通すことができず。黒田監督も「平常心でやってきたことを(どんな状況でも)出せるのが強いチームだと思う。トレーニングでずっとすり込んできたものが、こういう局面で一瞬の判断を奪ってしまうということも全国大会決勝というステージの怖さ」と分析していた。

 昨年度の選手権日本一メンバーから残った主力は武田のみ。そのチームがプレミアリーグを制し、選手権ではライバルたちからターゲットとされる中で決勝に戻ってきた。非常に難しいノルマを彼らは徹底する力で実現。決勝戦では敗れたものの、黒田監督はその成長を認める。そして、「優勝したチームに比べながら、彼らは自分たちで力の無さを自覚しながら日々成長を遂げてきた。ここまで伸びるんだな、ここまで人間って変われるんだな、サッカー選手って変われるんだなと私自身も見せてもらった。本当に1年間通して力以上のものと言ったらおかしいかもしれませんけれども、最高の一年間を過ごしてくれた」と讃えていた。

 そして、黒田監督は武田やMF古宿理久(3年/横浜FC内定)といった3年生たちへの労いの言葉をかけると同時に、「優勝と準優勝の違いというものをもう一度青森に帰って意識するとともに、来年度の強化に繋げていきたい」と語っていた。また、武田は後輩たちへ向けて「来年は絶対に優勝して欲しい」とエール。静岡学園が優勝の表彰を受ける際、青森山田の各選手はその喜ぶ姿を毅然とした態度で目に焼き付けていた。この悔しい敗戦は必ず力に。来季のチームリーダーとなる藤原や右SB内田陽介(2年)、MF松木玖生(1年)をはじめ、1、2年生たちはどんな状況でも徹底できる力と、ライバルたちのマークを乗り越える心技体を身に着けて、また一年後の選手権ファイナルに戻ってくる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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