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ブラインドサッカー日本代表が活動再開 国内初の専用コートも完成

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提供:日本ブラインドサッカー協会

 日本ブランドサッカー協会(JBFA)は19日、新型コロナウイルスの感染拡大によって2月24日の日本代表合宿を最後に活動をしていた男子日本代表が再開についてのオンライン会見を行った。活動休止中の様子や今後のプランなどについて、日本代表・高田敏志監督が説明した。

「とにかく先が見えない状況だったので、選手には、家族との時間を大切にしてもらって、安全第一で過ごしてもらうことを優先しました。サッカーのことは考えなくていい、ぐらいの話をしました。コロナが原因で亡くなってしまった人はいるけど、2、3カ月サッカーがなくなったことが原因で死ぬ人はいない。新型コロナに感染した場合に何が起こるかわかりませんから」

 新型コロナによりプレパラリンピックと位置付けられた3月のワールドグランプリは中止、8月下旬開幕のパラリンピックも延期となった。

「ブラインドサッカーが開幕する予定だった8月30日にピークを持っていくために様々なプランをたててきたので、延期が決まったときに『どうなるんだろう』と混乱しました。でも考えても変えられることは何一つない。選手に話していたことを自分にも言い聞かせました。だから焦ってプランを立てても仕方がないので、変えられるところからやりました」

 感染拡大を防ぐため、「3密回避」「ステイホーム」が推奨されたため、練習どころか、集まることすらできなくなった。それでも、今までの取り組みが力を発揮した。選手のコンディション管理については、ラグビー日本代表なども採用したクラウドサービス「One Tap Sports」で数年前から遠隔管理していたことによって、大きな混乱は生じなかった。

 体重、睡眠時間、脈拍などに加え、肉体的、精神的疲労度に加え、体の各場所の状態の主観を選手各自で毎日記入。新型コロナの感染予防のため、体温チェックを1日3回に増やし、行動履歴を書く欄も加えた。感染した場合に行動履歴を追えるよう、何人と関わったか、家族の健康状態などの情報も伝えることも義務付けた。

 感染しないことを最優先していたが、選手の方から「トレーニングをしたい」との声が出てきたことを受け、視覚障がい者も使えるオンラインのツールを使い、身体操作、ボールフィーリング、両方合わせたトレーニングを1回1時間、週3回続けた。

 東京都やパラリンピック組織委員会や日本サッカー協会などが示すガイドラインをもとにJBFAで個別のガイドラインを作って6月10日から再開した。「1時間以上、電車に乗って通ってはいけない」「トレーニングでもソーシャルディスタンスを保つ」などの制限もあるが、うれしいビッグニュースもあった。JBFAのスポンサー企業のひとつ、株式会社丸井グループが東京・小金井市にある同社の施設内にブラインドサッカー専用ピッチを2面作り、クラブハウスも併設した。節目となった6月10日は、国内初のブラインドサッカー専用ピッチで再開のスタートを切った。高田監督が明かす。

「グラウンドを借りるところから大変な思いをしてきた中で、世界に誇れるピッチを用意してもらった。丸井さんの施設の中にあるので、トレーニング中に電車や車の音を気にする必要もない。選手と一緒にピッチに立った時は本当に鳥肌が立った。男子だけでなく、女子も育成年代の選手もキッズキャンプもできる。涙が出るほどうれしかったです」

オンライン会見にのぞんだ高田敏志監督

 新型コロナの感染拡大により、経済活動がストップ。企業の経営状態は深刻だが、丸井以外のスポンサー企業との契約についても「状況が厳しい企業さんもありますが、手を携えてより強い連携をしていこうという言葉をいただいた。撤退の話は出ずに更新させていただいた」(松崎英吾専務理事)と明かし、代表強化を縮小しなければならないほどの現時点で大幅な減収はない見通し。年内の公式戦や国際試合の実施の見通しは立っていないが、7月4~5日の1泊2日の合宿を皮切りに、可能であれば、月1度ぐらいの割合で続けていきたい考えだ。高田監督が続ける。

「サッカーは自分たちにとってすごく大事なことで、人生そのものぐらいのことであるのは変わりない。でも一方で、語弊があるかもしれませんが、スポーツは生活する上での最優先事項ではなく、それより大事なのは生命であり、家族であることを再認識しました。   
 自分たちにとって大事な人の顔を見る、話をする、一緒の時間を過ごすこと、それがサッカーを通してなのか、違う分野を通してかは人それぞれでしょう。スポーツの価値、果たす役割は再開後、これからわかってくる。1年後に本番が延期される難しい状況や混乱の中で、このチームが培ってきたプロセスが生きると思っています」

 来年夏、無事にパラリンピックを迎えられても、8月から9月にかけて猛暑の中での戦いが予想される。体力は消耗し、ただ「サッカーがうまい」だけでは通用しない過酷な戦いになるだろう。日本代表はブラジルやアルゼンチン、中国などに比べると代表による拘束期間は短時間に限られるが、「One Tap Sports」によるコンディション管理に代表されるように、日々、自分と向き合うプロセスの小さな積み重ねが、窮地を救う底力になると信じている。

(取材・文 林健太郎)

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