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[MOM3370]山梨学院GK熊倉匠(3年)_予期せぬアシスト? 16時を迎えた、その時…PKストップで8強へと導いた守護神

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PKストップのGK熊倉匠(3年)を中心に歓喜の輪が広がる

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]

[1.3 全国高校選手権3回戦 藤枝明誠高1-1(PK6-7)山梨学院高 駒場]

 6人目まで両チームともに全員が決めてきた。1-1で前後半を終えて迎えたPK戦は、7人目で勝敗が決する。見事なPKストップで山梨学院高(山梨)を10年ぶりのベスト8へと導いたのは主将のGK熊倉匠(3年)だった

 2試合連続1-0の完封勝利で3回戦へと駒を進めてきた山梨学院。前半31分にDF浦田拓実(3年)の得点で先制と優位な状況に立ったが、2分後の同33分に藤枝明誠に同点に追い付かれてしまう。今大会初失点。動揺してもおかしくなく、「少し焦りもあった」ようだが、その後はきっちりと立て直す。

 後半に勝ち越しゴールこそ生まれなかったが、「後半は固い守備ができた」という熊倉を中心とした守備陣が踏ん張り、藤枝明誠にも2点目を許さなかった。前後半を1-1で終え、勝敗の行方はPK戦に委ねられることになった。

「相手の目線や軸足、体の向きを最後の最後まで見ることを意識している」という熊倉は、1本目から3本目まで、そして6本目もコースは読んでいたがストップすることはできず。しかし、味方も6本目までを全部成功させており、PK戦でも一進一退の攻防が続く。

 先攻の山梨学院が7本目を成功させ、藤枝明誠の7人目のキッカーがペナルティスポットへと向かう。ボールをセットして助走に入り、いざボールに向かおうかという瞬間だった。16時を告げる定時チャイムが鳴り響く。

 静寂の中、突然鳴り響いた音楽。集中力を乱されてもおかしくない状況とも言えたが、守護神は「静かになって、音楽が流れた瞬間に『キタ!! 行ける!!』と思った。キッカーの方が嫌だったはず」と感じていた。その予感は的中。キッカーが放ったシュートに対し、右側に飛んだ熊倉がストップし、PK戦7-6とした山梨学院が準々決勝へと駒を進めた。

 予期せぬアシストがあったのかもしれない。しかし、「PKの練習は日頃からずっとやってきたので、PKになったら負ける気はしない。PKには自信があるので、PKになった瞬間に絶対に勝てると思った」という熊倉が積み上げてきた努力が、結果に結び付いた瞬間だった。

 準々決勝では優勝候補の一角・昌平高(埼玉)と対戦する。9月20日に行われたプリンスリーグ第3節の対戦時には0-1で敗れていることもあり、「リベンジしないといけない」と闘志を燃やす。「一致団結して全員で勝利に向かって頑張りたい」。毎試合、負傷者を出す厳しい状況だが視線は前だけを見据えている。

(取材・文 折戸岳彦)
●【特設】高校選手権2020

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