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首都クラブの先頭に立つ男…FC東京MF東慶悟の決意「笑ってシーズンを終えられるように」

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FC東京のキャプテンを務めるMF東慶悟

 タイトルを獲得して涙を流した――。13年にFC東京に加入し、19年からキャプテンマークを巻いたMF東慶悟。昨シーズンは負傷で長期離脱するなど、厳しい1年を過ごしたが、シーズン最後の試合となったルヴァン杯決勝で勝利を収め、FC東京での初タイトルを獲得した。嬉し涙を流しつつ、「東京にとってこれがスタート」と決意を新たにした男に、新シーズンへの思いを聞いた。※取材は1月25日にオンラインにて実施。


本当に一年一年が勝負だと思っている
一日一日を大事にしながらやっていきたい


――新シーズンに向けて、チームは始動しましたが、ルヴァン杯を制してオフに入れたことは、気持ち的にも大きかったと思います。
「一昨年は最終節まで優勝争いをしましたが、リーグ戦を2位で終えました。本当に悔しい思いでオフシーズンを迎え、1位と2位の差を改めて感じました。ただ、昨季はルヴァン杯で優勝することができましたので、良い形でシーズンを終えることができました。ルヴァン杯決勝が年明けに行われたこともあり、休みは例年ほど取れませんでしたが、チームの編成も大きく変わらなかったので、スムーズに新シーズンに入れると思っています」

――改めてですが、ルヴァン杯を制してカップを掲げた瞬間は、どのような思いが込み上げてきましたか。
「僕自身、シーズン中の負傷で長期離脱をしていて、本来なら出場できない試合だったけれど、新型コロナウイルスによる延期の影響もあってピッチに立つことができました(対戦相手の柏でクラスターが発生。11月7日に開催予定だった決勝戦は1月4日に延期)。僕が移籍してからチームは良いときもあれば苦しいときもありました。試合後のインタビューに答えていたら、そういう想いだけでなく、僕個人の想いも含めて、込み上げてくるものがありました。カップを掲げられて本当に良かったと思うし、また優勝を味わいたい気持ちが強くなりましたね」

――昨シーズンは、再開後の7月22日に行われた第6節札幌戦で負傷し、プロ入り後、最長となる約4か月の離脱を経験しました。
「怪我をした瞬間に骨折(右第五中足骨の骨折)だと分かり、自分の中でも『これはオペをするだろう』『復帰まで長そうだな』と覚悟しました。怪我をした直後は残念な気持ちが大きかったけれど、すぐに切り替えないといけないと思いました。これまで、あまり大きな怪我をしたことがなかったので、『逆に良い経験にしよう』とポジティブに捉えようとしました」

――それまでの2シーズンではリーグ戦全試合フル出場を果たしていました。長期間ピッチに立てないことで感じたこともあると思います。
「これまで東京でもメンバーを外れることや、試合に出られない時期もありました。改めて感じたのは、プロサッカー選手は試合に出られることが何よりも幸せだということ。試合に出続けることに慣れてしまうと、ピッチに立つことが当たり前となってしまい、その部分を忘れてしまいがちです。怪我をしたことで、当たり前ではないことを再確認できた。試合ではきついことやしんどいこともあるけれど、それも試合に出なければ味わえない。やっぱりピッチに立ちたいと思いました」

――昨季のチームは橋本拳人選手(→ロストフ)や室屋成選手(→ハノーファー)が海外移籍する一方で、若手が次々と存在感を放ち始めました。
「これまでも海外移籍で東京を離れる選手はいましたが、そのあとチームとして結果を残し続ける難しさは感じます。でも、そこでチャンスを得る選手もいるし、実際に昨年は若手が躍動した試合が多かった。試合経験が少ない選手も多かったけれど、『こんなにやれるんだ』という発見もありました。僕個人としても、大きな刺激を受けたし、それはチームにとっても非常に良いことだと思います」

――ピッチに立てない中、キャプテンとして、チームに対してできたこともあったと思います。
「そこの部分は、なかなか難しかったですね。DAZNやスタンドで試合を見て、意見を言うのは簡単だけれど、的を射ていないこともあるだろうし、一緒にプレーをしていないと温度感が違い、意見も言いにくい。連敗をしている時期に、『ミーティングをした方がいい』と声を掛けて、一度だけミーティングを開きましたが、そこでも大した話ができなかった。『良い練習ができなければ良い試合もできないし結果にもつながらない』という話をしたけれど、自分は練習できていない状況で本当にもどかしかったので、怪我を早く治してピッチに戻りたかったですね」

――19年からキャプテンに就任し、当初は悩むことは多かったと話していました。
「1年目よりも、良い意味で抜きどころも分かってきたし、感覚的につかめてきたものはあるけれど、やっぱり疲れますね(笑)。自分のプレーだけでなく、外国籍選手とのコミュニケーションやケアの部分など、チーム全体のことを考えなければいけません。仕事は多いかもしれませんが、それが良い刺激になっている部分もあります」

――良い刺激というと?
「キャプテンという立場になると、ピッチ内外で感じますが、一つひとつの発言や言葉に重みがあり、良い意味でも悪い意味でも影響力が出てきます。より考えるようになったし、責任感が強くなったと感じています」

――今年もキャプテンを務め、チームの先頭を走っていくことになりました。
「僕自身を変えることはできないし、これまでもありのまま自分でやってきました。時に厳しいことを言わないといけないときもあるけれど、自分を作ることは僕にはできない。いつもどおり、ピッチに入ったら一番戦わないといけないと思っています」

――13年にFC東京に加入し、新シーズンは在籍9年目を迎えます。加入当初、キャプテンを務め、チームの顔としてプレーする自分を想像できましたか。
「東京に来たとき、『優勝するために来ました』と発言させてもらいましたが、まさか自分がキャプテンとしてカップを掲げているとは想像していなかった。ただ、東京に長年在籍することで、愛着もものすごく湧いてきたし、本当に素敵なチームだと感じています。首都・東京のクラブとして、もっともっと強くなりたいし、もっともっとタイトルを取りたいですね」

――今年の7月に31歳を迎えます。今後のサッカー選手としてのビジョンをどのように描いていますか。
「この年齢になってくると、長い目で見られなくなってきます。本当に一年一年が勝負だと思っている。自分の体と向き合い、サッカーと真摯に向き合い、一日一日を大事にしながらやっていきたいです」

――2021シーズンをどのようなシーズンにしたいか教えて下さい。
「J1リーグはチーム数が増え、試合数も増えます。東京五輪も開催される予定で、今年も過密日程になると思っています。昨年の経験を活かして、チーム全員で戦い、今年こそはシャーレを掲げられるようにやっていきたい。最後に笑ってシーズンを終えられるように頑張ります」

(取材・文 折戸岳彦)
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