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「正直覚えていません」駒澤大MF中村一貴が延長後半ATに劇的同点弾!!直前で負傷した左足振り抜く

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中村一貴(11)が劇的な同点弾を奪った

[5.9 天皇杯東京都予選決勝 法政大2-2(PK3-4)駒澤大]

 まさに無我夢中。「正直覚えていません」と振り返った言葉がすべてを物語る。延長戦開始と同時に途中投入されていたMF中村一貴(4年=駒澤大高)が、延長後半アディショナルタイム2分に起死回生となる同点弾を決めた。

 自然と体が動いていたという。日頃からFWが競り勝ったボールでDFの背後に抜け出す練習を繰り返していたからだった。「とにかく流れを変えないとという感じだった。僕がいいプレーをするというよりは、チームがとにかく勝つことを意識しいました」。

 しかしゴール直後の喜びもつかの間、中村の顔からは笑みが消えていた。ゴール直前のプレーで相手のMF松井蓮之(4年=矢板中央高/川崎F内定)との接触で痛めた左足が原因だった。ゴール直前、目の前にボールがこぼれてきても、頭には「蹴ったら痛いだろうな」という感覚がよぎったという。

 それでも送り出してくれたベンチの期待に応えるため、そして何より諦めずに戦う仲間のために、痛みを忘れて「とにかくゴールにねじ込むこと」、そのことだけに集中して痛めている左足を振り抜いた。

 中村の同点弾が決まって間もなく、主審の試合終了のホイッスルが鳴った。決着はPK戦に委ねられることになったが、中村には踏ん張って立つ力さえ残っていなかった。もしもPK戦で順番が回ってきても蹴ることができないことから、ピッチから離れることを決断。やれることはやった。あとの可能性は仲間に託すだけだった。

 ただ決着がついたあと、中村の顔には再び笑みが戻っていた。「(大学の公式戦で)初ゴール。試合に出たのも7試合目です」と教えてくれた表情にも達成感が漂った。チームを救ったヒーローは、会場を離れる際はスタッフの車に乗せられ、そのまま病院に向かったが、仲間の声掛けにも笑顔で応答。最後までその表情は柔和なままだった。

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