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清水ユースとの全勝対決を制した青森山田は開幕7連勝も、視線は既に”8連勝”とその先へ

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MF松木玖生のPKで青森山田高は3-1と清水ユースを突き放す

[5.23 プレミアリーグEAST第7節 清水ユース 1-3 青森山田 J-STEP]

 プレミアリーグEASTでの開幕連勝記録を塗り替える7連勝を成し遂げた試合後も、視線はさらなる高みを見据えているのが、頼もしいし、恐ろしい。「EASTでは記録達成だけど、WESTではサンフレッチェが8連勝してるでしょ。狙うからには、やっぱりそこを狙っていきたいですよね」(黒田剛監督)「監督から資料を戴いた時に、サンフレッチェ広島が8連勝ということを知ったので、自分たちはまだまだなにも成し遂げていないですし、7連勝は嬉しいですけど、これが青森山田のベースかなと思っています」(松木玖生)。青森山田の飽くなき向上心は、とどまる所を知らず。23日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグEAST第7節、開幕5連勝の清水エスパルスユース(静岡)と、開幕6連勝の青森山田高(青森)が激突した無敗同士の頂上決戦は、3-1で青森山田が快勝。開幕からの連勝を7に伸ばし、首位をがっちりとキープしている。

 立ち上がりから、勢いを持って入ったのはアウェイチーム。前半8分には左からキャプテンのMF松木玖生(3年)が蹴ったCKに、DF多久島良紀(2年)が合わせたヘディングは枠を越えたものの、14分にも松木の左FKに、飛び込んだDF三輪椋平(3年)が清水ユースのGK福井レオナルド明(3年)にキャッチを強いるヘディングを枠内へ。さらに、16分にも松木の左CKから、DF丸山大和(3年)が当てたヘディングはゴール右へ外れるも、「セットプレーだったらディフェンダーの4人が『絶対決めてやる』と思って、全員中に入っています」と右SBの大戸太陽(3年)が話したように、青森山田はディフェンスラインの3枚が、セットプレーからそれぞれ惜しいチャンスを掴む。

 一方の清水ユースは、U-18日本代表候補のDF菊地脩太(3年)とDF田端琉聖(3年)のセンターバックから丁寧に繋ぎつつ、右のU-16日本代表候補MF安藤阿雄依(2年)、左のMF渡邊啓佳(2年)の両サイドハーフに仕掛けさせる狙いを鮮明に。ただ、プレミアEASTの得点ランクトップタイとなる6ゴールを挙げているFW千葉寛汰(3年)には良い形でボールが入らず、フィニッシュを取り切れない。

 すると、やはりゲームを動かしたのはセットプレー。43分。ここも左サイドで獲得した青森山田のCKを松木が丁寧に蹴り込むと、三輪のヘディングから最後はFW渡邊星来(3年)の放ったシュートが、相手に当たりながらもゴールへ吸い込まれる。今季のチームの躍進を担っているストライカーが貴重な先制弾。青森山田が1点をリードして、ハーフタイムへ折り返す。

 後半は清水ユースもようやく手数。8分に左サイドへ流れた千葉がクロスを流し込み、安藤のシュートは丸山が体で防いだものの、10分に輝いたのは王国のエースストライカー。キャプテンのMF鈴木奎吾(3年)、MF金子星太(3年)と繋いだパスから、エリア内で千葉は強さと上手さを融合させて反転しながら、そのまま左足でシュート。ボールは左スミのゴールネットへ到達する。得点ランクトップに躍り出る9番のゴラッソ。清水ユースがスコアを振り出しに引き戻す。

だが、青森山田の反発はその5分後。15分。「攻撃参加が自分の特徴なので」と言い切る大戸が右サイドから高いクロスを送り、逆サイドで拾った田澤は再び中へ。「ふかさないということだけは頭の中にあって、あとはボールをしっかり見て、当てることを意識しました」というMF藤森颯太(3年)の左足ボレーは、ゴールを一直線に貫く。「嫌な雰囲気だったんだけど、よく抑えて、しっかり打ってくれましたね」と指揮官も納得の一撃。スピードスターの華麗な勝ち越し弾。2-1。青森山田がまたも一歩前に出る。

 22分に到来した追加点機。ギャップで巧みにパスを受けた渡邊が、丁寧なスルーパス。走った藤森がエリア内へ潜ると、運んだボールをDFが手で止めたという判定を主審は下し、青森山田にPKが与えられる。キッカーの松木がこれを冷静に沈めて、再び千葉に並ぶリーグ7点目をゲット。3-1。青森山田が突き放す。

 1点ずつ返したい清水ユースは、32分に途中出場となった期待のルーキー、FW田中侍賢(1年)が決定機を掴むも、「人間的にパワーがあるんです。しかも体を鍛えて相手のトップを封じるという所に関して言えば、この強さに結構みんな屈してくるので、そこは凄く成長かなと」と黒田監督も評価を口にする丸山がきっちりシュートブロック。追撃の芽を力強く摘み取ってみせる。

「山田として試合のコンセプトは失点ゼロで行くことだったので、そのゼロが達成できなかったのは自分たちの課題ですけど、それでも追い付かれながらも勝てたということは、自分たちの強みでもあって、そこは評価できるのかなと思います」と藤森。課題と収穫を手にしつつ、90分間をきっちりデザインして戦い抜いた青森山田が全勝対決を制し、2011年の創設以降、プレミアリーグEASTでは新記録となる開幕7連勝を達成した。

 試合後に鈴木が「フィジカル面でも、走力でも、球際でも、いろいろな所で劣っていて、自分たちの思っていた基準が、まったく青森山田さんより低かったというのが今日の印象です」と語ったように、ここまで無敗の清水ユースをもってしても、青森山田の牙城は揺るがなかった。

 前述した黒田監督と松木が既に“8連勝”とその先へ目を向けていたのと同様に、ディフェンスラインの一角としてスタメン出場の続く大戸も、7試合で2失点という結果の感想を問われても、こう想いを紡ぐ。「2失点でも自分たちは悔しくて、やっぱり無失点で全部行きたいという気持ちが一番なので、もっともっと詰められるところはあると感じていますし、今日の失点も自分がもうちょっと寄せられる所があったので、もっと山田でやるべきことというのを徹底してやれば、もっと失点は少なくなるんじゃないかなと思います」。

 黒田監督の言葉が印象深い。「もちろん走るとか、コンタクトの所とか、競ることとか、拾うこととか、ボールを保持してテクニカルにやること以外の所で、どれだけ優位に立てるかということはチームのコンセプトでもあるので、オフ・ザ・ボールの所で優位に立てていたということが、オンになった時の優位性に変わってきたのかなと」。

 走る。競る。拾う。シンプルではあるが、このすべてで相手より優位に立つことが、容易ではないことは言うまでもない。それでも、青森山田はこのプレミアリーグという国内最高峰の舞台でも、走って、競って、拾って、最後には必ず勝利を収めている。彼らが目指す“三冠”を達成できるかどうかは、勝負事なのでもちろん保証されてはいない。ただ、今年の青森山田が過去に類を見ないような力を持つチームになる未来は、少しずつ現実味を帯びてきている。

(取材・文 土屋雅史)
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