beacon

なでしこジャパン東京五輪メンバー発表 高倉麻子監督会見要旨

このエントリーをはてなブックマークに追加

●今井純子女子委員長
「まずはコロナ禍にあって最前線でご尽力いただいている皆さんに感謝申し上げたい。大変多くの方のご協力でここまで代表チームの強化活動を重ねてくることができた。10年前の2011年、W杯でなでしこジャパンが優勝し、日本の社会にポジティブなインパクトを残した。東京で行われる五輪でしっかりしたパフォーマンス、あきらめない心、最後まで粘り強く戦う姿を見せることで、また日本社会にポジティブなインパクトをお伝えしたい。10年前のパフォーマンスを見て、多くの選手が影響を受けたように、今、女子サッカーを頑張っている女の子たちに勇気を与え、より多くの女の子に女子サッカーをやりたい、女子サッカーをやらせたいと思ってもらえるような姿を見せたい。9月にはWEリーグが開幕する。その開幕に向けていい波がつくれるように、WEリーグの開幕と合わせて女子サッカーの大きな発展の契機をここで作り出せるように五輪を頑張っていきたい。7月21日、東京五輪の開幕に先立って女子サッカーが先陣を切って戦いを始める。是非いい波を送れるように頑張っていきたい」

高倉麻子監督
「これまで多くの強化キャンプ、遠征を行っていく中で、たくさんの素晴らしい選手たちを選出してきた。そこで選手を気持ちよく送ってくださったなでしこリーグのチーム関係者の方々にお礼を申し上げたい。関係者のみならず、その合宿に参加してくれたメンバー、先日のキャンプには名前がなく、ここまで残ってこれなかった選手も、チームの選手とともにトレーニングしたことでどれだけなでしこのレベルアップのパワーになったかは私自身、感じている。その努力をしてきた選手たちにもお礼を言いたい。

 先日の親善試合を戦う中でいよいよ五輪まで1か月を切った。選手のパフォーマンスを用心深く見てきた。すぐそこに五輪の試合は迫っているので、選手のパフォーマンスやコンディション、もちろん心の中の様子は全部は見えないが、私なりに選手の思いなどを観察してきた。チームを作るうえで総合的、複合的に考える一方、特異性、特殊性を考えると矛盾も出る。こちらが良ければこちらが立たないではないが、サッカーのゲームの中でも起きるような混沌の中で、だれを選んでいけば、今、日本の女子サッカーが持ち得るベストなチームを作れるか。心を込めて選んだ。

 今朝まで最後の1ピース、2ピースのところは正直悩んだし、朝も1時間ほど近所を散歩して、最後はこのメンバーでいこうと私自身は決心を固めて、メンバーを選んできた。選手個々の日頃の努力やプレーというのを間近で見た中で、どの選手も世界で戦っていける要素は持っていたが、総合的に見て、18人の選手を選んだ」

▽代表質問
――このメンバーで戦う東京五輪への自信は。
「チームを作ってきた中で、私自身が日本の女子サッカーが進むべき方向へ選手とともに歩んできながら、トライもありエラーもありという中で、時間をかけてようやく選手自身が躍動し、私自身の目指していくサッカーに関しても、いろんな意味で歯車が合ってきたと感じている。もちろん、今の時点でベストな状況ということではなく、五輪が始まる初戦から決勝の第6戦目まで1試合1試合、チームが成長する。それはプレーのみならず、選手自身の心の中も成長していく中で、金メダルを取りに行くチームが出来上がっていくのではないかと私自身は確信している」

――キャプテンマークを巻く選手は。
「ずっとこのチームになってからキャプテンを任せている熊谷紗希にキャプテンを託そうと思っている」

――熊谷に期待することは。
「もちろん彼女の年齢もチームの中で上になるし、何より2011年の優勝メンバーの一人でもある。海外で長くさまざまな外国の選手とともに、チャンピオンズリーグで連覇するようなチームでレギュラーを張ってきた選手。とにかくメンタルが強いし、人の意見を聞く耳を持った器の大きい選手であり、人間だなと感じているので、このチームのキャプテンは(熊谷)紗希以外考えられないと思っている」

――選考で最後まで悩んだところは。
「6試合戦う中で、予選リーグ3試合と決勝トーナメントに入ってからの3試合を考えたときに、ポジション的なバランスが一つある。ビルを建てるのと一緒で、一つのピースを変えたら他もバランス的に変わってくるという図がある。だれかとだれかを入れ替えたら済むという単純なことではない。発想を変えて一人を変えると、それに伴って1人、2人、果たしてこれでいいんだろうかという考えがどんどん出てきてしまう。そういうところでだいぶ考えを絞り出した」

――ずっと10番をつけていた籾木ではなく、岩渕が10番になった理由は。
「代表の10番というのはただの番号といえばそれまでだが、なでしこの象徴的な10番と言えば、やはり澤さんになってくると思う。彼女のあとで10番を背負う選手というのは私の中でもとても重い意味があると感じていて、発足当時から岩渕はその候補の一人ではあった。ただ、どの選手もそうだが、グラウンドでのパフォーマンスのみならず、チームを背負う顔になるというのは、岩渕選手が持っているパフォーマンスや潜在能力を含め、人間的にも10番を託すなら成熟したときだなと思っていた。意図的に8番という番号を背負ってもらいながら、彼女の成長を待っている中で、ここしばらくのパフォーマンスや、彼女の合宿中の言動で強い自覚を感じた。今、10番を託してもしっかり責任を果たしてくれるなと感じたので、この東京五輪という大きな舞台で、彼女がチームの浮き沈みを背負って立つぐらいの気迫で、10番を背負ってグラウンドで躍動してくれることを強く期待している」

――ここから初戦までどんな1か月にしたいか。
「サッカーは集団で戦うスポーツなので、選手一人ひとりが自分の勝手ではみ出してしまうとチームの輪が乱れるとも言えるし、逆にその飛び出しがチームを引っ張っていくという両方の側面がある。選手には伸び伸びと世界一へのチャレンジをしてもらいながら、私自身はチームをとにかく同じ方向に向かせ、全員のパワーが同じ方向に向くように精一杯戦っていきたい」

――ファン・サポーターへ。
「メンバーを今朝、決断して、東京五輪という素晴らしい舞台に向かう覚悟は決まった。今、世界の女子サッカーの流れというか、非常にレベルアップの速度は速いし、スタイルとしてはフィジカル的な要素を全面的に押し出してきているチームが多い中で、私たちは自分たちの武器で戦っていくことを忘れずに、2011年(女子W杯優勝)、12年(ロンドン五輪銀メダル)、15年(女子W杯準優勝)と世界のトップトップで結果を出してきた、本当に素晴らしい奇跡のチームに追いつき、そこを追い越せるように、全員で一つになって戦っていきたい。是非みなさんの温かい、熱い応援をよろしくお願いします」

▽質疑応答
――絞り込み作業をしてきたと思うが、何か大きく違った部分はあるか。
「今回はとにかくメンバーの人数が18人だったので、その部分は本当に違った。絞り込んでいく作業が大変で、本当に悩んだ。また選手がレベルアップをして、たくさんの素晴らしい選手がいたので、そういう点でも絞り込んでいくのが難しい作業だった」

――1試合の交代人数が5人に変わったことで選考に影響したことはあったか。
「ここ最近は5人、トレーニングマッチは6人が通常だったので、頭の中もそっち側に舵を切りやすかった。果たして3人という枠だったらどうだったのかと言われると、もしかしたらちょっと変わったかもしれないが、仮定の話なのでなんとも言えない」

――日本がW杯を制して9年が経ったが、なでしこジャパンのプレーの仕方、技術はどういう進歩をしたと考えているか。
「ワールドカップ、オリンピック、各クラブチームの試合を見ていて、一番近くは2019年のW杯があったが、特にヨーロッパの国々の躍進というのはヨーロッパで開催された大会であるというプラスを抜きにしても非常に目覚ましいものがあった。技術的にも戦術的にも洗練されながら選手が戦っていると強く感じた。その中で一番最初になでしこが自分たちの存在を世界に知らしめた2011年は技術的な部分であったり、組織として攻守ともにクレバーに戦う部分が世界から賞賛されたが、そういった部分を他のチームが追いかけてくる中で女子サッカーは発展してきたと思う。技術的な部分だったり組織の力が今度はフィジカルを全面に出してきたチームがそこに着手したことで、私たちのプラスが消されていく恐れもあったが、自分たちはその中でもさらにフィジカル的な要素を今度は世界に追いつくべく細かな作業をしてきたし、育成からたくさんの方々が中学生、高校生、小学生に至るまで地域のたくさんの方々の協力の中で一人ひとりのサッカーの基本である止める・蹴る、状況の中で判断していく頭の中のレベルがとても上がってきたと感じている。そこがなでしこに上がってきたときに選手のグラウンドの中での判断、気づき、想像力、予測力は非常に上がってきたなと感じていたので、自分たちの技術的な部分だったり、献身性、クレバーさに磨きをかけていけば自分たちの武器で戦えるという手応えを感じながらチームを作ってきている。今、そういった部分で十分に世界で戦っていけるなと感じながら、まだまだ課題はあるので、そこは真摯に受け止めながら選手とともに一日一日大事にチーム力を上げていきたいと思う」

――五輪を経験したのが熊谷、岩渕だけになった。主に世界大会を経験したのが2019年の女子W杯だけで、初めての選手も多いが、ベテランの鮫島を落選させたことを含めて、世界の経験値をどう捉えているか。
「メンバーを絞り込んでいく中で若い選手の台頭は、なでしこの大きな力になった。若い選手は多くがU-17W杯、U-20W杯で世界一になった経験を持っている。もちろんフル代表の戦いは全く違う次元のもので、ましてや東京で戦う五輪ということでどれだけのプレッシャーがかかるかは想像の範囲を超えるが、選手が世界と戦った経験という意味では、育成年代から含めればあるので物怖じするとは思えない。世界でA代表で戦ってきた選手が少ないが、そういったことも若い選手に伝えながら、みんなで経験の部分でのマイナスは補っていけると考えている」

――(今井委員長へ)FIFAランキングで格下の相手と戦い、大差がつく戦いが続いた。強化の課題をどう考えているか。
今井「確かにこの状況のマッチメークは非常に難しいものがあった。その中で日本に来てくれるというところでマッチメークをすることができた。五輪出場国の中で日本を経験して、日本で戦いたいという希望を持つ国が複数あって、本来であればそういったところと戦うことを想定していたが、コロナ禍により日本に来ることを強化の準備で避けた国が多かったので、今回はこういったマッチメークになった。多くの国が計画通りの万全な準備は難しかったのではないかとは思っている。私たちは日本で五輪が行われること、コロナの制限を含め、日本で活動し続けることを選択した。1年以上の間が空いての国際試合だったので徐々に経験を得ながら進めてきた。もちろん監督としては強いところと対戦したいという希望もあったかもしれないが、できるだけメリットを引き出す形で取り組んできた。7月に対外試合をして本番に入るが、そこも合わせて強度を上げていければ。国内で男子のチームの力を借りながら強化を継続して重ねてきたので、7月に向けて細部を積み上げて仕上げていきたいと思う」

――FW4人の顔ぶれについてどう捉えているか。またその中でも田中は19年のW杯メンバーから外れていた。成長をどう感じているか。
「FWだけではなく、DF、中盤も含めて非常に魅力的な選手が揃ったと思っている。本当にターゲットタイプもいるし、一発のプレーで逆を取れるタイプ、一つのキックでチャンスを作り出せる選手もいる。それに加えて中盤、FWという境目をつけず、さまざまな選手がチャンスを作り出していく、決める場所に顔を出していく、連続してゴールを目指していくという意味でいろんな形が目に見える。それに磨きをかけるのが前提だが、楽しみにしている。田中についてはボールを引き出す動き、それをしっかり収める仕事、得点を決め切るところを要求してくる中で、彼女も自分自身のプレーと向き合い、サッカーに真摯に向き合う中で成長を強く感じたし、何より代表への強い思いをグラウンドで表現できるようになってきたと思った。非常に調子も上がってきている選手だし、これまでの自分自身のサッカーのキャリアを考えればここでやってやるという思いが非常に強いと思う。大きく期待をしている」

――(今井委員長へ)壮行試合はどのようなマッチメークを考えているか。具体的な国名ではなくとも条件などは。
今井「最終調整中なのでまだ申し上げられない。」

――10番という話で岩渕の名前が出たが、監督はこれまで岩渕のリーダー的な部分がもっと出てきてほしいという要求をしていたと思うが、ここ数年の具体的な変化、成長をどう捉えているか。
「このチームが成長してきたということは岩渕選手のみならず、ここに名前が挙がってこない選手も含め、全員が成長を見せていると感じている。私が常日頃、選手にリーダーシップをとってほしいと伝えているが、それはたとえば持っている才能や持っている思いが人に伝わらない、グラウンドで表現できないのであれば持っていないのと同じだという私の考えがある。選手にいつも要求してきた中で、最近は自分が思っている思いを出してくるということに関して、みんながその思いを表現し出したなと強く感じている。岩渕に関しても若い頃から注目を一身に受けて、期待を受けて、心の内側を考えれば苦しい部分もたくさんあったと思うが、焦りや責任感、うまくいっていることといかないことを最近は自分で処理できるようになってきたと感じている。それをグラウンド上でもパフォーマンスや結果で出せるようになってきたと感じている。そういうところは彼女の成長というところで感じている」

――冒頭でチームの輪と個人のバランスについて話していたが、とくにアメリカやイギリスなどとの対戦になった時、個人の力で違いを生み出すことが必要になると思う。その中で期待していることは。
「ここに選んだ選手全員に関して、大会中に化けるというか、ラッキーガール的な存在が出てくれば、チームの大きな力になると思うし、とてつもない力を与えてくれると思う。ただ、そこを待つのではなく、選手全員が毎日の練習のなか、日々の生活のなか、仲間との生活のなかで、そういう自分の思いをグラウンドで表現しだすということで、チームの結束が高まっていくこと、シンプルにプレーの質が上がったり、リズムが上がっていくということが起きると思う。いま選んだメンバーはグループとしても、そういうところを表現してくれるんじゃないかと思っている」

――バックアップを選ぶときに悩んだことは。バックアップにどういうところを期待しているか。
「もし18人に何かがあったときに、そのメンバーがグラウンドに出て戦うことになる。登録上は18人だが、メンバーは22人だと捉えている。そういった捉え方をしながらも、心身ともに健康であるということ、怪我をしていないということは一つポイントになった」

――2021年に入ってデビューした北村、塩越を選んだ理由は。
「理由は一つではないので、なかなか説明をしにくいが、シンプルにパフォーマンスが良いという一言に尽きる。プレーの幅が二人とも一つのポジションだけでなく、得意なプレーだけということでなく、チーム戦術の中でどのポジションでも理解の中で自分自身を発揮できる強さを感じたので選んだ」

――2019年のW杯ではチームに対して「跳ね返りの強さ」を求めていたが、今回選手に求めることは。
「跳ね返りの強さはずっと選手に求めている。チームの約束事、私が要求することだけをやっていればチームが勝てるわけではない。そこを超えて自分自身を表現するんだという強いプライドを感じさせる選手は期待を抱かせてくれる。日々トライをして、失敗があったときに成長していっている選手というのは、この先もサッカー選手を続けている限り成長できると思っている。そういった選手は偉大な選手になっていけると思っている」

――つまり「跳ね返りの強さ」を求めることは変わらないのか。
「五輪という世界大会、ましてや東京で行われる重圧の中で、選手がどんな状況になり、選手がどんなことを思い、マイナスの要素もたくさんあると思う。その時にどれだけ強く地に足をつけて、立って前に進もうとするかが、とにかく全ての前提だと思う。チャレンジし続けること、強気で進むことは選手に求めたいし、私自身もそうありたいと強く思っている」

――冒頭でこのチームをビルに例えたらと話をしていたが、どんなビルを建てたかったのか。
「意外な質問でびっくりしました(笑)」

――面白い表現だなと思いました。土台作りではなくビルに例えていたので。
「シンプルにコンクリートでできたビルだと思ったが、本当に建てるビルに例えればピカピカな素材ということではなく、何か素材に含まれるものが高貴なものであってほしいと思うし、見えないところでしっかりした素材でできていて、シンプルで、美しいビルでありたい。いろんな人がそのビルを見て、何か心を揺さぶられるような建物であれたらと思っている」

――ロンドン五輪でもカナダ戦でスタートしたが、今回も同じカナダ戦になる。スタートは日本選手団全体にも非常に大きな影響を及ぼすと思うが、カナダ戦に向けてどんなスケジュールで、どんな試合をしたいか。
「五輪の先陣を切って戦うということを考えただけでもすごい重圧が来るだろうと想像しながら、それでもやることはサッカーのゲームなので、その試合に全神経を集中し、いまある全てを一夜に注いで集中して、全員で心を一つにして戦えればと思う」

――今朝散歩をして最終的に決めたという話があったが、どれくらい散歩して考えたのか。夜の考えと変わった部分はあったのか。
「合宿中もそうだし、昨日合宿が終わってからも、本当にどの選手を選考していこうということで、昨日は悶々としていた。『寝れた?』と聞かれたが、寝るのは早かった。でも目が覚めるのが早かったので、近所の公園を1時間半くらい散歩して、さまざまに思いを巡らせながら、散歩が終わる頃にはこうしようと気持ちが固まった」

――メンバー選考で変わったことはないか。
「どうなんですかね(笑)。自分自身の気持ちの問題で、おおよそは決まっていたので、大きくいろんなものが変わったということはない」

――五輪の延期によってチャンスを得た選手がいる。北村、塩越や、宝田もそうだと思うが、若手の成長をどう見ているか。日本の女子サッカーの発展のためにどういう舞台にしてほしいか。
「誰も想像し得なかったこのコロナ禍で、本当にたくさんの人々が苦しむなか、医療従事者の日々のご苦労や、去年の今頃のことを思えば、先が全く見えない中で、選手たちはサッカーから離れた生活を物心ついてから初めてしたと思う。それは私自身もそうで、世界平和と皆さんの健康があってのスポーツ、サッカーというのを本当に身にしみて感じていたなか、サッカーがようやくできるようになった時、選手たちにサッカーへの思いがさらに強く芽生えたのかなと思っている。昨年10月、11月にJヴィレッジでキャンプをなんとかさせていただいた時、選手たちの表情を見て、チームの中のパワーと熱気が確実に上がったと肌で感じた。この1年で今おっしゃった選手が出てきたのは日本にとってプラスであるし、また以前から活躍していた選手が活躍していた中でいまの11人がいると思うので、全員の力で底上げをしてきたと思う。目に見えないところであるが、偉大な世界一を担った2011年のチームを追いかける、そこを超えていかないといけない選手の心の中にあるプレッシャーは大変なものだと思う。選手一人一人の努力があっての、この舞台だと思う。今後、このチームを見た今の小学生や中学生の選手たちが、なでしこの持っているサッカーへの思いを感じて、それを受け取って、日々の練習でレベルアップして、またいつの日かなでしこのバトンを受け取ってくれるものを作るためにも、いまここにいる18人、22人でいい結果を残したいと思う」

――選手を選ぶ作業は落とす苦しさもあったと思う。今回、鮫島の名前がない。苦しかったと思うが、なぜ鮫島を落としたのかではなく、なぜ他の選手を選んだのか。また同じく落選した選手もいるが、そういったずっと一緒にやってきた選手たちへの思いを教えてほしい。
「サメ、鮫島は私が監督に就任して少し経ってから代表に入ってきて、非常に勉強熱心で、サッカーに対する思いの強さがあり、向上心も非常に強く、さまざまな合宿の中で成長して、いまも成長を続けている選手なんじゃないかと思っている。合宿の中で良いパフォーマンスがあったり、もちろん課題があったりという中で、間違いなく日々、彼女の100%の努力をしてきたと思うし、私自身も最後までなかなか喉を通らないご飯を食べている姿や、一人で怪我の治療しているサメの後ろ姿を見ていたので、こういった大舞台にチャレンジする中でのこの決断は簡単ではなかった。一方で私自身、若い選手の勢いや成長を同じように感じていて、サッカーが進歩している中で選手に求められる役割はたとえばディフェンスの選手はディフェンスだけ、オフェンスの選手はオフェンスだけということではなく、総合力が求められるという、選手に非常に難しい課題がたくさん与えられるようになっている。私自身は日本チームを作るとき、自分たちがボールを持った時にいかに優位にゲームを進めるかというところに重点を置いており、そうして考えた時に今の選手たちということになった。サメだけではなく、他の選手も自分の特徴を精一杯出し、日々勉強する気持ち、素直な気持ち、または葛藤がありながらも合宿中にプレーしている姿は私の中にはずっとある。その選手あってのこの18人、22人だと思っている。彼女たちのぶんも背負って、最後まで諦めず、なでしこらしい戦いをしていきたい」

●東京オリンピック(東京五輪)特集ページ

TOP