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福岡の新王者・飯塚は“壊して”より大きく構築中。インハイの目標は「飯塚旋風」「初出場初優勝」

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左SB中川智哉主将(左)ら飯塚高はチームを再構築し
インターハイで初出場初優勝を目指す

 令和3年度全国高校総体(インターハイ)「輝け君の汗と涙 北信越総体2021」男子サッカー競技(福井、8月14日開幕)に、相洋高(神奈川2)、比叡山高(滋賀)、山辺高(奈良)、飯塚高(福岡)の4校が初出場する。中でも、福岡県予選準決勝で9連覇を目指したプレミアリーグ勢・東福岡高を破り、決勝でもプリンスリーグ九州の強豪・筑陽学園高に勝利した飯塚は、前評判の高い初出場校だ。

 15年の中辻喜敬監督就任から、本格強化7年目。技術力高い選手たちが戦術トレーニングを重ね、近年は激戦区・福岡で安定して8強、4強に食い込み、新人戦九州大会出場も果たしている。加えて、2年連続でJリーガーを輩出するなど育成面でも成果を残している新勢力が、早くも福岡制覇。指揮官は、「(特に守備の部分で)サッカーの原理原則を徹底してできた」ことを予選の勝因に挙げる。

 キープするドリブル、運ぶドリブル、破るドリブルを状況に応じて使い分け、自陣の低い位置からも相手を見ながら前向きにボールを繋ぐ「ドライビングフットボール」が特長だが、最大の強みは守備。県予選では各選手が原理原則を徹底し、全4試合無失点で頂点に立った。普段のトレーニングから高い守備強度を意識し、その中で自分たちの攻撃の質も向上。エースFW高尾琉生(3年)やFW村越琉威(3年)といった個の力も活かして歴史を塗り替えた。

 今月17日には、福岡県1部リーグでアビスパ福岡U-18Bと対戦。SB吉田龍介(3年)やMF長崎偉大(3年)、CB片山敬介(2年)、MF森吉世凪(3年)を怪我で欠く中での戦いだったが、前半にMF中隈聖大(3年)のゴールで先制。内容よく試合を進めたものの、後半はボールの運び方を変えてきた相手に苦戦を強いられた。

 立ち上がりからボールを握られ、10分にはゴール前での守りが甘くなったところを突かれてFW入江優仁(1年)に左足シュートを決められた。その後、村越やともに怪我明けで途中出場の高尾とMF池田光希(3年)が縦への迫力ある動きやサイド突破を見せ、22分にはセットプレーの流れから1年生右SB坂本海凪太が勝ち越しゴール。だが、33分、MF西村活輝(1年)にカットインシュートをねじ込まれてしまう。

 飯塚は42分にワンツーから池田光が左足を振り抜き、直後にもMF池田悠夢(2年)の右足シュートがゴールを脅かしたが3点目は奪えず。45+3分にMF岩永創太(1年)のラストパスからDF藤海太(2年)に放たれた決定的なシュートはGK別所利樹(3年)が止めたものの、引き分けに終わった。

 飯塚の左SB中川智哉主将(3年)は「(同サイドを崩すというトレーニングをしてきたが)2、3回はマッチした攻撃があったけれどなかなか上手くできなくて、守備もゴール前の守備対応で原理原則を疎かにして簡単に決められてしまったという印象です」と首を振る。

 中川は「自分は人間力だけなので。サッカー面で足を引っ張ってしまう分、キャプテンとしてチームを鼓舞するという自分の良さを全面に出して行って、ちょっとでもチームに貢献したいと思います」というチームリーダー。チームのために何ができるか考え、全体を見て行動することで出番を掴み、勝利に貢献してきたが、主将はまだまだ甘さのある集団が自立して主体的に行動、プレーすることを求める。

 怪我人が増え、ベストメンバーを組めていないことは確かだ。また、中辻監督は「一回、壊す」ことを実行中。目先の勝利を目指すのではなく、より土台を大きくした状態で選手権を迎えるため「新たな取り組みをしている」という。「プレス回避の仕方や最後の崩しのところ、そしてゲームメデルの再構築」(中辻監督)に取り組んでいることもあり、ここ2試合は勝ち切ることができていない。だが、ノッキングを起こすことは想定通り。ここからの1か月弱で現状のベストの形へチームを再構築し、インターハイを戦う。
 
 現3年生は、1年時に開催された“全国級”のU-16大会、ニューバランスチャンピオンシップ(NEW BALANCE CHAMPIONSHIP)で星稜高(石川)や前橋育英高(群馬)、静岡学園高(静岡)を破って初出場初優勝している世代。初のインターハイでもインパクトを残すか。中川は「『飯塚旋風』巻き起こして、『初出場初優勝』というのを目標に一戦一戦、雰囲気とか緊張とかに飲まれず自分たちらしさを出していきたい」。飯塚サッカー部は「MERICAN BARBERSHOP FUK (メリケンバーバーショップ福岡)」と提携するなど、新たな試みにも意欲的にチャレンジ。野心と実力を兼ね備えた福岡の新王者が今夏、初出場初優勝に挑戦する。

人間力でチームをまとめる左SB中川智哉主将

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2021

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