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なでしこジャパン池田太監督 就任会見要旨

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池田太新監督

 なでしこジャパンの指揮官に就任することが決まった池田太監督が1日、オンラインで会見を行った。日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長、今井純子女子委員長も出席し、約1時間にわたって報道陣の質疑に応じた。

 オンライン会見要旨は以下のとおり

●田嶋幸三会長
「本日行われた日本サッカー協会の理事会において池田太さんが新たになでしこジャパンの監督として承認されたことをお伝えします。私は2018年、ロシアW杯の後すぐに行われたU-20の世界大会をずっと視察していた。そして私はその時、非常に鼻が高かった。世界大会で多くのFIFA関係者、アジアも欧州も含めてさまざまな関係者がいる中、日本代表が素晴らしいサッカーをしてくれたこと、ただただU-20W杯で勝つだけでなく内容的にも素晴らしいサッカーをしたことが非常に高く評価された。私自身もそのサッカーを見て、男子も女子も私たちが世界で勝っていくためにはこういうサッカーをすべきなんだろうとあらためて認識するようなサッカー、そのチームを指揮していたのが池田太氏だった。あらためてなでしこジャパンの監督を引き受けていただいたことを感謝するとともに、われわれは全面的なサポートをし、まずは来年1月のアジア杯、2023年のW杯をしっかり勝っていただきたいと思っている。その上でパリ五輪にも照準を合わせてもらいたい。しっかりサポートしていくことを皆さんにお約束したい」

●今井純子女子委員長
「JFA女子委員会で来年のアジア杯、2023年のワールドカップ、アジア予選を経ての2024年のパリ五輪に向かう新しいなでしこジャパンの監督を議論の末に推薦させていただき、先ほどの理事会で承認いただいた。東京五輪の総括をずっとしてきた。私たちのなでしこジャパンはゼロベースであらためてやり直さないといけないのか、いまあるもの、続けてきたものをさらに極めていけばいいのかを議論した。その中で私たちは、『目指す方向は間違いない。いままでの継続性をぜひとも大事にしていきたい。ただし日本の強みである技術や連動性をもっともっと徹底して高めていく必要があるということ。さらに圧倒的な武器にしていく必要がある。細部へのしっかりした詰め、ピッチ上での落とし込み、共通理解、選手をしっかりモチベートしていくことをしっかりやっていければ、歯車がしっかり噛み合えば、私たちの持つポテンシャルで世界で戦っていける』と議論をした。若手の登用は高倉さんがトライしてくれて本当に進んだと思っている。たくさんの若手が参加し、五輪・W杯ともチームの平均年齢は下から2番目だった。若手の選手は育成年代のW杯で勝ってきた選手たち。ただ、すぐにA代表で活躍できるかというとそこにはまだギャップがある。そこでしっかり経験を積み、また年齢のバランスも良いチームにしていくことが今後も求められる。またチームのことだけでなく、代表チームをしっかりサポートする体制、そしてサッカー環境。9月にWEリーグが開幕したが、その選手たちが所属する日常の環境整備・普及、サッカー環境をしっかり整えていくこともあわせてしっかり進めていきたい。これは女子委員会でも強化していく点だと認識している。こうした議論を踏まえて代表監督の要件を出し、その要件に基づいて監督を提案、推挙をした。S級プロライセンスはもちろん、2023年のW杯と2024年の五輪に向かって戦うことのできる、また世界一の奪還を目指すことができる監督であること、そして日本の持つポテンシャルを信じ、日本サッカーの強みを最大限引き出すことができる監督、若手の登用と融合をしっかり果たせる監督、代表チームの強化だけでなく日本女子サッカー全体の発展に情熱を持っていただける方という要件のもとで候補者を挙げ、池田太監督にお願いしたいと意見が一致した。そして理事会にも提案させていただいた。池田監督はいま(U-19、U-20女子代表の監督として)3期目で、アジア選手権は2回優勝、W杯は1回優勝、それ以外はコロナで中止になった。また結果だけでなく内容、プロセスがいま挙げた要件に合うということで、さきほど理事会に上げさせていただき承認をいただいた。チームをしっかりサポートして、なでしこがいままでずっと積み上げてきた、佐々木さん、高倉さん、大橋さん、上田さん、もっともっと前から積み上げてきた日本の女子サッカーをしっかり磨いて、世界で戦っていきたいと思っている」

●池田太監督
「日本女子代表監督に就任した池田太です。まず初めにこの会見に参加していただいているメディアの皆さん、いつも応援していただいているファン・サポーターに感謝申し上げます。私が監督就任の話をいただき、まず初めに頭に浮かんだことは責任の重さと、自分への覚悟の気持ちだった。そして感謝の気持ちが沸いてきた。いままでのなでしこジャパンを作ってきてくださった方、女子サッカーを発展させ、切り開いてくださった方の積み上げがあって今の女子サッカーがあると思っている。ここから未来につなげていくために、このなでしこジャパンを一歩前に進めないといけないという責任の大きな仕事になる。しかしこの仕事に全力で向かっていくという覚悟が沸いている。なでしこジャパンは子供達がボールを蹴り始めてから、その成長を見守ってくださった保護者の方、地域の指導者、学校の先生、顧問の先生、地域のトレセン、また所属しているクラブのコーチの皆さん、エリート活動やアンダーカテゴリ、そういったものの最後の最後の部分で戦わせていただいている覚悟と、そこでの結果の喜びを皆さんと共有していかないといけないという心算でいる。私は小学校3年からサッカーを始めて、サッカーから本当にいろんなことを教わった。仲間の大切さ、努力して掴み取る喜び、悔しいこともあった。そこから這い上がる強さも学んだ。サッカーは私に人生にとってとても重要で、そのサッカー界で、私がなでしこの監督を引き受け、そこで戦うことでサッカー界に少しでも恩返しができるのではないか、恩返しができるチャンスを与えてもらったという感謝の気持ちが責任と覚悟に加えて私の中に起きているのも事実です。なでしこジャパンはチームとして2011年に世界一になっているので、頂点を目指し、世界を奪還する強い気持ちでチームづくりをしていきたい。世界の女子サッカーの進歩はいま凄まじい。さまざまな戦術や環境、フィジカル、アプローチ、そういった意味で世界の女子サッカーの進歩するスピードが上がっていく中、日本がどういう武器でその世界に打って出るか、立ち向かっていくか、上回っていくかを考えている。フィジカルの話が欧米に比べて出ることもある。ただ日本人の持つ俊敏性は世界に打って出て、優っているところでもある。それも一つのフィジカル。日本人が持つ器用さ、勤勉さ、連動性、連係、そういったものをもっともっと突き詰めていければ、新しいコンビネーションで相手を打ち負かすことがもっともっとできると思っている。直近のW杯、五輪では上位に食い込めなかったが、そこで戦っている中でも相手の脅威になる守備、攻撃ができていることもあった。私はできている部分の強度をもっと上げて、トライする回数を上げて、そして細部を詰めて、選手に自信を持って、勇敢にそしてダイナミックに戦っていくチームを作りたい。もちろん世界一を取ったことはあるが、トータル的に見れば常に上位に食い込めているわけではないのは事実。日本の女子サッカーの底上げを含め、世界一を目指し、強いなでしこジャパンに、それが皆さんに応援されるチームになり、サッカーの輪をもっともっと広げて、女子サッカーっていいな、応援したいな、自分の子供にもサッカーをさせたいなという女子サッカー界も含めたサッカー界で盛り上げられれば、自分ではそこを目指していきたいと思っているし、そこに尽力する、全身全霊をかけてこの仕事に取り組んでいくこと、それだけは約束できる。ただ私だけで成し遂げられることではない。皆さんのサポートも必要。一緒にいろんなことを考えていきたいし、いろんなアイデアを聞いたりしたいとも思っている。この先の新しい女子サッカーの世界を作り上げていく上で、みんなと一緒に戦っていければと思っている。応援よろしくお願いします」

―代表選手たちに求める条件は。
「いろんな要求、条件はあると思うが、まず私が一番に考えているのは自分の持っているパフォーマンスを全て出し切れる選手。つまり全力でプレーできる選手。そこは根本だが、大切にしていきたいと思っている。それプラス仲間に何か良い影響を与えられる選手。自分のパフォーマンスや自分のポテンシャルを出すのはもちろんだが、それプラス仲間を助けられたり、よりよい相乗効果を与えられるような化学反応を起こせる選手というのが選ぶ上でのポイントかなと思っている」

―(今井委員長に)新監督の初陣はいつになるのか。
「今後の予定だが、10月のIMDは試合を予定していない。国内でキャンプを行う。11月に海外遠征を予定している。対外試合はそこが最初になると思う。12月にもう一度国内キャンプをして、1月にインドで予定されているアジア杯ということになる」

―(今井委員長に)高倉監督が退任となった理由は。また池田新監督を最も評価している点はどこか。
「高倉さんは5年間しっかり頑張っていただいた。二人三脚でやってきた。5年間で積み上がったこと、結果だけではないが、やはりもう一度違う刺激のもとで継続性を求めていくのが良いのではないかと考えていた。良い時間帯もあって、やりたいサッカーを出せた時間帯もあるし、そうでない時間帯もあって、結果的にベスト8で目指していたところに届かなかった。高倉監督だけのことでなく、サポート・強化体制で思うようにいかなかったこともあったので、高倉監督に責任を負わせるものだけでない。池田監督は連動性、細部の詰めるところ、チームビルディングに長けている。またダイナミックなサッカーを目指していて、日本の良さを違う方法で引き出すことができるのではないかと考え、池田監督を選んだ」

―(今井委員長に)パリ五輪までという話だったが、池田監督の任期は2024年8月末までか。
「五輪までの3年間のプロジェクトと考えている。ただしアジア杯、W杯でその時々の状況によって見直す可能性はあるが、まずはアジア杯、W杯と積み上げるのではなく、五輪までのサイクルを基本と考えている契約」

―2023年のW杯、2024年のパリ五輪でそれぞれどういった青写真を描いているのか。目標を教えて欲しい。
「大会に参加するので1試合1試合勝利を目指して戦っていくのがその国の代表の使命だと思っている。言葉で言えばもちろん優勝を目指すし、頂点を目指して戦っていく。世界で戦っていく上で自分たちのストロング、相手との修正点を見つけ、その大会の中で成長を目指しながら勝っていくことが目標になる」

―(今井委員長に)女子委員会として高倉前監督をどこまでサポートできたのかというところもあるが、反省点はどのようなことか。また次に池田さんをサポートするという決意は。また今後どのように発展させていくかというイメージがあるか。
「代表チームのサポートは二つある。一つは代表チーム直接のサポートがある。一生懸命に努めてきたと思うが、経験の面など不十分なものがあったと思っている。今後に経験豊かな人を配置して、しっかり代表チームをサポートしていく必要があるし、委員会でも定期的にしっかり議論して、フィードバックを担当のものを通して監督と話していきたい。体制は改めて立てていく必要があるし、アシスタントコーチ、コーチングスタッフ、テクニカルスタッフの体制も世界一を奪還したいというなかで、世界の発展も見た中で、必要な体制を立てていくこと、そしてそれを委員会もバックアップしていく必要があることを確認した。またサッカー環境の面で、欧州の現状に比べて遅れている部分がたしかにある。取り組んできているが、今回の代表を直接後押しするスピードでは進んでいない。今回WEリーグができたことも含め、選手の過ごす日常へのサポートは間接的にはなるがしっかりしていく必要がある。また女子選手の価値向上、発信という意味ではWEリーグとともにプレゼンスを高め、価値を向上し、人を惹きつけるということで、選手やリーグを核に取り組んでいくことが必要になると考えている」

―(今井委員長に)女子委員会で今井さんと手塚さん(手塚貴子副委員長)は留任なのか。
「それも含めて、今後何が一番良いかということを考えて立てていく必要がある。どういう人を据えていいのかも含めて調整中。現在のところ、私たちは責任をもって継続していく必要があるので、この役割を引き受けているところ。今後どのような方を据えて代表チームをサポートしていくかをいま検討、調整しているところになる。まだ決まっていない」

―(今井委員長に)今井さんと手塚さんも交代することが前提になっているのでしょうか。
「それも含めて検討中、調整中」

―(今井委員長に)新監督を任命される方が辞めるのか、留任するのは重要だと思うが。
「(後任は)この任命に関して、100%同意していただいて、サポートしていく方だというのが大前提になると思っている」

―(田嶋会長に)内部昇格になったが、他の監督や別の人選は考えていた経緯はないのか。
「まず先ほどの今井女子委員長の件も含め、新しい体制でしっかり池田太監督を支えることはいま考えているところ。女子委員会で議論された内容について、私が全て把握しているわけではないが、世界の中で男性でも女性でも何人でも、誰がなでしこを一番成長させて、世界で勝たせることができるのかという基準で池田太氏が選ばれたというふうに認識している。さまざまな候補も含めた上で池田太氏がなったという認識でいる」

―東京五輪では決勝トーナメント1回戦でスウェーデンに敗れたが、このチームが壁を越えられなかった最大の原因はどこにあると考えているか。
「五輪の競技は無観客の試合もあり、スウェーデン戦も私は現地ではなく映像で見ていたので、そういったところからの観点にはなると思う。もちろんチームは生き物なので、その大会に応じてその選手が、そのチームがどういう状態だったのかわからないが、試合を見るところでは予選リーグを勝ち進んで、敗戦した試合、引き分け、勝利もあったが、突破したというところでトーナメントに入って『いざ、スタートだ!』というゲームの進め方で、先に失点してしまったことがチームが戦っていく上でネックになってしまったのかなと思う。もちろんサッカーは男子でも女子でも先に点を取られたら厳しい試合になる、ゲームプランが狂っていくことはあるが、ゲーム全体のプランニングが細かいところだが、修正していききれないところがあったのかなと思う。ただその中でもスウェーデン戦は一番日本の良さが出たシーンもあったし、攻撃でも良いシーンが作れたところもあった。そういった良さと、これからの課題を、コーチングスタッフでもいろんな観点から考察して、これからのなでしこに生かしていきたいと思っている」

―日本はアンダー世代で結果を出しているのが強みだと思うが、フル代表の結果につながってきたかわからないのがいまの日本。アンダーカテゴリからフル代表までにギャップがあると考えているか。ギャップがあるとしたら、どう乗り越えたいか。
「アンダーカテゴリのところでの優勝経験や、U-17やU-20からそこからどうフル代表に繋げていくかは課題というか、繋げていくのが重要なところだと思っている。欧州ではU-20が終わってからフル代表までに自チームの国際大会、各国が近かったり、いろんな国際経験を積めている部分があるのかなと思っている。日本もアンダーカテゴリからフル代表までにいかにタフな試合を積めているかが、少しずつ経験値の差になってしまっていると感じている。ただ言い訳というかそれだけじゃ進まないので、高倉監督の時も行っているが、男子のチームの力を借りてトレーニングマッチをするとか、いろんな強度の違いや選手の負荷をコントロールをして、刺激を入れるようアプローチしていって、力をつけているチーム・選手にしていって、フル代表で差が出ないようにしたい。そういったことで日本のやれること、ストロングや武器を磨いて戦っていけるチームにしていきたい」

―代表チームの監督として、ラージグループから競争を促してチームづくりをしていくのか。それともサッカーの軸になる選手を置いていくのか。
「選手は成長するスピードはまちまちだと思っている。いろんな試合を見させていただいている中、そのチームがどういった戦術、どういったトライをしながら、そのゲームをやっているかにも興味があって、そういう話ができるように、常に選手の所属チームの監督やスタッフ・コーチにもいろんな話を聞いて、いろんなことを吸収したいと思っている。WEリーグも始まったので、どの選手を中心にという軸を決めてというよりは、まず現在なでしこジャパンで日本を代表する選手としてのポテンシャル、もちろん技術もそうだし、メンタル的にもタフネス的にも、健康のこともそうだし、全てのことを総合して選手を選び、トレーニングキャンプを繰り返すうちに、グループの中でどういう力を発揮できているかを考えて、チームづくりを固めていきたいと思っている。それが今までのやり方であり、これからのイメージとしても持っている」

―監督としてまずここから手をつけたいというところ、またここを現状の武器として使っていけるんじゃないかというイメージを持っているポイントは。
「先ほどと同じような話にもなるかもしれないが、まず選手たちに求めるのは、自分の持っているベスト、全てをピッチで出してもらいたいということが根本にある。またチームづくりの中でこれだけはというところで言うと、私はチームの中で一体感というか、自分の力プラスチームに何を与えてくれるかという選手を求めていきたいと思っている。何より選手はトレーニングでもそうだし、試合の中、ピッチの上でも自信を持って、サッカーする喜び、エネルギーを、生で見ていてもテレビで見ていても何か熱を伝えられる、そういった選手と一緒に戦っていきたいと思っている。それが自分がチームをつくっていく上で軸になっていく。選手のパワーというかフォースを大事にしていきたいと思っている」

―WEリーグが9月から始まり、日本の女子サッカーがプロアスリートになれていると思うが、多くの選手が海外に挑戦している。男子にも同じ課題はあると思うが、海外組は優先されると考えているのか。
「WEリーグが始まって選手がサッカーに集中できる環境が作られて、これから強化につながっていくんじゃないかと考えている。また環境変化によって、24時間どうデザインするかで伸びる選手もいるし、良い影響を受ける選手がいると思う。日本では環境の改善によって選手が成長するきっかけとなっていると思う。ただいまお話しいただいたように海外でも環境を変えてトライしている選手もいるのは事実。海外に行って活躍している選手だから優先するのではなく、あくまでもパフォーマンス、そのチームで何ができるのか、その選手がなでしこジャパンに入ってどういう影響をもたらしてくれるか。それは日本のWEリーグで頑張っている選手も、海外で活躍している選手も同じように考えていかないといけないと思っている」

―(今井委員長に)五輪前の親善試合は相手のレベルが課題だったが、今後はより高いレベルの相手との試合ができるのか。W杯や五輪に向けてもっとそういった機会が作りやすくなるのか。最近のなでしこジャパンは世界的な相手と戦うために海外遠征をしないといけないが、国内の女子サッカーへの関心を高めるために、そういったハイレベルの相手が来日してもらえる環境も作り上げられるか。
今井「高倉監督の時もランキング上位国というか、強豪とたくさん試合を組もうとやってきた。ランキング20位以内はほぼ複数回やっている。監督からも要望されていたし、いろんな面でトライをしていた。ただコロナの状況になり、それぞれの国の環境が違うことと、本来であれば五輪前に五輪会場の日本で試合をしたいという要望もコロナがなければあったが、コロナで状況が変わってしまった。アジアの端にある日本に複数回往復することを強豪国が避けたという事情があった。その中でも試合ができる相手ということでやってきて、十分な強度でやれなかったので、チームの準備が難しかったのは事実。ただ基本的には以前からランキングが上の相手と戦っていこうということはあった。また遠征と国内はどちらも大事だと思っている。相手のコンディションの難しさもあると思うが、日本の皆さんに国際試合を見ていただくことは大事だと思っている。両方のバランス。できる限り強豪国と対戦していきたいというのは昔から変わらないし、今後もやっていきたい。11月もその目標を達成できるようにやっている」

―Jリーグでのコーチ経験も長いが、その経験の中で指導理念、指導方針に影響を与えた思い出はあるか。
「さまざまな監督の下でコーチをさせていただいた。それは浦和でスタートした時もそうだったし、福岡時代もさまざまな経験をさせていただいた。大きなところでは私が携わらせていただいた浦和のコーチ時代は、数多くのタイトルを取ることができた時代だった。そういった意味では勝利するチームのチームビルディング、チームの雰囲気がどうなっているか。これは言葉や文章にするのは難しいが、雰囲気や匂いを嗅ぎ分けられるのは、いまの指導の中でもチームの雰囲気を感じるアンテナが養われたと思う。福岡時代にも監督が求めるサッカーをどういうふうに選手に落とし込むか、具体的にどう伝えたらピッチで輝けるかを学ばせていただいた。そういったところはいまの指導の役に立っているし、ベースになっていると思う」

―福岡時代は経営危機など厳しい経験もあったと思うが、逆境に立ち向かうという経験はどう生きているか。当時の経験からなでしこに生かしたいものは。
「自分の経験などはあるが、選手には逆境から立ち上がるというより、1試合1試合ピッチに立つときにどうやって自信を持ってピッチに立てるかが大事だと考えている。自分の経験よりも、そのチームのエネルギーをピッチ上、またボール1つに対して向けられるかというアプローチをしていきたい。そういう時に選手が迷いなく戦えるかがチーム力に出ていくと思う。そういった積み重ねをしていきながら、選手が状況をさらによくしていけるトライをしていきたいし、それを繰り返していけるようアプローチをしていきたい」

―(今井委員長に)五輪の総括がこのタイミングになった上で、さらに手短であったことに心配をしている。男子の場合、反町さんも出てきたし、森保さんもできる限り話をし、東京五輪どう戦ってどう敗れたを共有してもらった。ただ女子の場合、なでしこへの関心が低いという問題意識がある中、そのプロセスが軽視されているのではないかという心配している。情報発信は十分だったと考えているか。
今井「大会が終わった後、総括を丁寧にしようということを1か月かけて女子委員会でも共有していた。今後どういう体制でこの代表をサポートする体制を立てて、その上で監督を決めていこうかという議論と調整が始まっていたので、どのような進行になるかを待ってしまった部分がある。体制が確定していないのもあって、このタイミングになってしまったのが正直なところ。本来であれば総括を先にして、総括を踏まえて監督選定が妥当なところだと思う。ただ大会直後ではなく、TSGを含めてみんなで議論してしっかりしたものをまとめようということで時間をかけさせていただいた。結果的に現状の体制で監督を決めて、しっかりサポート体制を立てていこうというところの途中になったのでこのような形になった。発信は女子サッカーのことをしっかりみなさんに関心を持ち続けていただいて、納得感を持っていただくためには、情報発信を適切に進めていく必要があると認識している」

―(今井委員長に)東京五輪の総括は短かったと思う。東京五輪だけでないが、高倉監督はどういうところを成長させて、どういうところが足りなかったのか。どんな課題感を持っていたのか、もう少し踏み込んだ話をしてほしい。その上で池田監督はどういう部分で修正できると考えているのか。
今井「高倉監督は個人戦術というか個々の判断を非常に大事にする監督で、チームとしてのやり方を定めながらも、あまり限定していかずに選手たちの状況によった判断で適切なプレーをしてほしいということを一番大事にされていた。スタイルも限定していくことを好まないというか、限定していくことで失うものを嫌う。自由度を与えながら選手を選びながらトライしていた。監督のスタイルとしてそうしていた。ただいまの段階ではもう少し約束事、決まり事、拠り所となる軸があったほうがより選手が安心してプレーできた部分もあったのかなと思っている。ただそれは監督が確信を持ってやっていたスタイルであって、こちらもわかっていたので、それが開花するようにサポートしてきた。けれども今の段階までで言えば、高倉さんが理想とするものは長い時間発揮できたわけではないと思っている。完全に方向性を変える必要はないと思っていて、日本人が持つ賢さと技術と連動性、コンビネーションでもって戦っていきたいという基底の部分は共通していると思っていて、それに対して違うアプローチでできるのではないかと思っている。高倉さんのチャレンジには共感していて、そういうふうにできれば理想だと思えるものはたくさんあった。チームづくりはいろんな影響があるが、難しいチームづくりというか、大会に入って力を発揮していくのがシンプルじゃないこともたくさんあった。監督のチームビルディングだけでないものもあった。そういうふうに捉えていて、同じ基本を持ちながら、高倉さんが育ててきた選手もたくさんいるし、違うアプローチで強みになるものを継いで戦っていきたいと思っている。池田さんは少し違うアプローチで成し遂げてくれるのではないかと思っている」

―まずは来年1月のアジア杯が大きな目標になると思うが、そこでいま考えているコンセプト、強化のポイントはどこのようなことか。
「まずは1月に向かって、10月に選手たちと集まってトレーニングキャンプをして、チームの立ち上げをしてそこからスタートしたい。コンセプトというと自分の中ではあるが、申し訳ないが、最初に選手たちと共有したいというのが自分の中である。もちろん大まかなところでは、ダイナミックさ、日本の武器を活かして、連動連係、またメンタル的にも日本人の良さ、個人の力もあるが、周りの人への気遣い、サポートできる力、献身性といった素晴らしいところも日本のストロングだと思っている。コンセプトといえば、いま言えるのは日本の武器を磨き、その武器を持って世界に打って出るということ。細かいところは選手たちがどのくらいのポテンシャルを持っているか。もちろん自分の中には確かにあるが、そこは選手と共有し、作り上げていきたいと考えている」

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