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[MOM3640]帝京長岡DF松本大地(3年)_“タッチラインの向こう側”を目指すCBの1点が、チームに大きな勇気をもたらす!

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DF松本大地は右足インサイドの丁寧なシュートで追撃の1点をマーク!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.3 選手権新潟県予選準決勝 帝京長岡高 4-2 日本文理高 新発田市五十公野公園陸上競技場]

 一発狙ってやろうとは思っていた。ここで1点を返せば、ウチの攻撃陣なら絶対に逆転できる。無心でボールに反応すると、右足のインサイドに確かな感触が残っていた。

「正直自分は何も考えていなかったですね。勝手に身体が動きました。『頭だとちょっと低いな』と思って、とっさに出たのが足で、何とか合わせられたという感じでした」。揺れたゴールネット。上げた雄叫び。帝京長岡高が敷く3バックの一角を任されたDF松本大地(3年=グランセナ新潟FCジュニアユース出身)の貴重な1点が、チームに大きな勇気をもたらした。

 4分、11分と続けての失点。準決勝の日本文理高戦は、いきなり2点を奪われたところからスタートする。「さすがに2点は予想していませんでした」と正直に明かした松本だが、飛び出したGK佐藤安悟(2年)のさらに上から、196センチのFW相澤デイビッド(3年)にヘディングで決められた2点目は、もはや割り切っていたという。

「アレは凄かったですね。(佐藤)安悟が取れなかったので。もちろんあそこを警戒しようとは考えていて、安悟とは『お互いチャレンジしよう』とは言っていて、チャレンジしたミスだったので、そこは割り切っていましたし、正直僕は焦りはなかったです」。松本はすぐさま前を向く。

 圧倒的に押し込みながら、ゴールの遠い時間が続いた中で、37分に3番のディフェンダーが“得点感覚”を発揮する。「2点獲られた時に、自分としては逆転のことしか考えていなかったですけど、前半で点を獲らないと、後半に向けては相手も1回休めるので、勢いが出てくるんじゃないかなと思っていましたし、1点が欲しいとは考えていました」。

 右からのCK。MF廣井蘭人(2年)の鋭いボールに、ニアへ飛び込んだMF三宅凌太郎(3年)が潰れると、松本の右足がきっちりとボールを捉え、直後にゴールネットが揺れる。「蘭人や(岡村)空とコーナーキックは練習していたので、ヘディングという形ではなかったですけど、コーナーで点が獲れて気持ち良かったです」。ようやく返した1点。結果的に後半で3得点を奪い、鮮やかな逆転勝利を収めたが、前半終了間際という時間帯で追撃ののろしを上げたゴールが、ある意味でこの試合の流れを大きく左右した。

 3バックの右CBが現在の松本の主戦場。こだわりのスタイルを貫く帝京長岡のディフェンダーらしく、まず考えているのは攻撃のスタートになることだ。「相手がちょっと迷うような位置取りとか、桑原(航太)のパスコースにしっかり入ることだったり、ポジショニングを一番意識しています。 (佐々木)奈琉や蘭人はいつも自分のことを呼んでくれて、パスの選択肢にいつも入っているので、その中でもナベ(渡辺祐人)とかタケ(武原幸之介)は見るようにしています」。複数のパスコースを見極めながら、丁寧なビルドアップを繰り返す。

 選手権には“借り”があるという。「去年もメンバーには入っていたので、チームと一緒に行動はしていたんですけど、ベンチには入れなかったので、ボールボーイみたいな感じでした。あの時は悔しかったですし、県の決勝でもベンチに入れなくて、そこでも悔しい想いをした部分はあったので、『自分が3年になった時は絶対にピッチに立ってやろう』と思ってきました」。だからこそ、決勝に対する想いは人一倍強い。

「自分は声が特徴なので、チームを鼓舞する声だったり、みんなを勇気付ける声を第一に考えて、その中で守備の1対1は負ける気がしないので、その部分でチームに貢献できたらいいなと思っています。この決勝がすべてではないですし、通過点ではあると思いますけど、まずはここをしっかり勝って、チームとして全国大会に行って、また結果が出るように頑張っていきたいです」。

 1年前。近くて遠かった“タッチラインの向こう側”へ。松本の決意は、固い。

(取材・文 土屋雅史)

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