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J内定9人擁する法政大がインカレ初戦敗退!! 福岡大がリベンジ達成「何かが起きるぞと暗示をかけていた」

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途中出場のFW鶴野怜樹(3年=立正大淞南高)が決勝点

[12.11 全日本大学選手権2回戦 法政大 0-1 福岡大 前橋総合]

 第70回全日本大学サッカー選手権(インカレ)は11日、首都圏各地で2回戦を行い、前橋総合運動公園群馬電工陸上競技・サッカー場の第2試合は福岡大(九州4)が法政大(関東4/総理大臣杯枠)を1-0で破った。MF松井蓮之(4年=矢板中央高/川崎F内定)らJリーグ内定選手9人(試合登録は7人)を擁し、夏の総理大臣杯王者を制した法政大が初戦で姿を消した。

「2018年に明治さんに勝たせていただいた時も、大会パンフレットの表紙がオール明治だったんですよ。そうしたら今回もオールオレンジ(法政大)だったので、『これは何かが起きるぞ』と暗示をかけていたんです。また夏の優勝チームに勝つのが福大、そういうことをやらかすのが福大。そういう昔の話をしながら、だんだんみんながその気になってきました」。

 “格上”とみなしていた法政大とのビッグマッチ。勝利で飾った福岡大の乾真寛監督は笑顔で振り返った。初戦の高松大戦(○4-0)後、指揮官は「2回戦の中で一番面白かったと言ってもらえるゲームにするため秘策を考えたい」と語っていたが、この日も同じ11人を先発に抜擢。「(“秘策”と言うことで、法政大の)長山監督に2日間だけいろいろ考えてもらった」と冗談も飛ばした。

 それでも2019年の2回戦でも対戦していた法政対策は万全だった。2年前は0-0で迎えた延長戦に4失点を喫し、1-4で敗戦。「法政さんの長いボール、裏に対角線のボールが入ってくるのは2年前も経験しているし、0-0の延長になったところで『よく頑張った』ってなってしまったので、今回は『先に取る、先に取る』と言い続けてきた」とマインドセットを明確にして臨んでいたという。

 そうしたゲームプランどおり、この日の福岡大は相手にボールを持たれながらも、鋭いカウンター攻撃を随所に披露。前半13分、FW大崎舜(3年=大津高)とDF阿部海斗(4年=鳥栖U-18/熊本内定)の連続シュートが法政大GK近藤壱成(3年=磐田U-18)を次々に襲うと、同21分には高い位置でボールを奪ったDF岡田大和(2年=米子北高)が鋭いクロスを送り込むなど、次々に決定的なチャンスをつくっていた。

 もっとも、シードのため初戦となった法政大も譲らない。前半27分には中盤のトランジションを制し、FW大塚尋斗(3年=矢板中央高)がハーフボレー気味の左足シュート。これは右ポストに当たって弾かれるも、同38分、右サイドを攻め上がったDF宮本優(4年=清水ユース/東京V内定)のクロスをMF安光将作(4年=千葉U-18/富山内定)と大塚がつなぎ、松井がミドルレンジから惜しいシュートを放った。

 やや劣勢となった福岡大は最前線の大崎にボールを集めるが、DF萩野滉大(3年=名古屋U-18)とDF白井陽貴(3年=矢板中央高)の法政大センターバックコンビをなかなか破れない。すると法政大は前半41分、DF今野息吹(2年=三菱養和SCユース)の左サイド突破から大塚のポストプレーが決まり、落としを受けた安光が強烈なシュートを突き刺す。だが、軌道上に松井がいたためオフサイドを取られ、ゴールは認められなかった。

 スコアレスのまま迎えた後半開始時、法政大はFW中井崇仁(4年=尚志高)に代わってFW飯島陸(4年=前橋育英高/甲府内定)を投入。両サイドバックが積極的に攻撃参加し、徐々に圧力を強めていく。一方の福岡大は中盤でテクニックを見せていたMF重見柾斗(2年=大分高)を下げて長身189cmのDF榊原琉太(2年=熊本商高)をボランチに投入。高さを加え、強度の高い展開に備えた。

 その後も一進一退の攻防が続く中、法政大はFW佐藤大樹(4年=札幌U-18/町田内定)、福岡大はMF山口隆希(3年=鳥栖U-18)やFW鶴野怜樹(3年=立正大淞南高/23年福岡内定)を起用し、フレッシュな選手たちがバチバチの対人戦を繰り広げる。福岡大は後半33分、左サイドに開いてタメをつくった鶴野を起点に攻撃を展開し、クロスから山口が惜しいボレーシュートを放った。

 そうして迎えた後半36分、ついに試合の均衡が破られた。福岡大は中盤でパスを受けたMF倉員宏人(4年=鳥栖U-18)が相手の狙いを絞らせない持ち上がりから、右サイドに浮き球のスルーパスを送ると、これに抜け出した阿部がゴール前にクロスを供給。最後は絶妙なタイミングで飛び込んだ鶴野がスライディング気味のシュートで押し込んだ。

「秘策と言えるものがあるとすれば鶴野怜樹。彼は1回で仕事する人間なので。アビスパのエリートリーグ5試合で4点くらいに絡んでいるし、とにかく短い時間で確実に点に絡める力がある」(乾監督)。

 9月末にハムストリングの肉離れを起こし、今大会の出場も危ぶまれていたが、「奇跡的な治療とリハビリでギリギリ間に合った」という中での見事なゴール。指揮官は「当初はインカレも絶望という話だったが、戻ってきたのが奇跡だし、そのうえ彼を使えるゲーム展開になった。『ウソ?』というくらいにハマった。それが結果、秘策でした」と微笑んだ。

 その後、法政大はDFモヨマルコム強志(2年=東福岡高)を投入し、ロングスローも交えたパワープレー攻勢をスタート。もっともこれは福岡大も得意とする展開。ベンチに控えていたDF大川智己(3年=九州国際大学付高)が投入され、驚異的な高さのヘディングで何度も押し返す。そのまま試合はタイムアップ。福岡大が2年前のリベンジを果たし、優勝候補の明治大を破った18年以来となる準々決勝進出を決めた。

 対する法政大は初戦敗退。飯島が「こんなところで終わるとは思っていなかったので……」と声を落としたように、早すぎる終幕となった。長山一也監督は「選手は4年間しっかり戦って、取り組んでくれて、頑張ってきてくれていた。勝たせられなかった監督の責任が大きい」と述べつつ、敗因を語った。

「2年前のインカレでもすごくしぶとく守備をされていたけど、今日は攻撃に対する思い切りの良さがあって、前回に比べて行くところ、行かないところがはっきりしていた。シュートまで行かれるシーンがすごくあった。前回はある程度ゲームコントロールできていたが、相手の中で『チャンスあるな』という思いを持たせながらの試合になってしまった」

「攻撃では何本かシュートは打っていたけど、シュートを打てる場面もあった中でパスになってしまうシーンがあった。相手からしたらシュートを打たれると怖さ、攻められている感がある。シュートを打たれないところでブロックをつくって、跳ね返せる状況を作れていると、『守れている』というポジティブなメンタルになる。シュートを打ち切る作業を徹底できれば一つ良かったのかなと思う。狙っていてブロックを作られたから判断を変えたんだと思うが、オフサイドになったシーンも足を振ったからこそという状況だったので、あれをもっと徹底できれば良かった」

 大きな関門を乗り越えた福岡大は、同じく関西学院大という強敵を倒したばかりの阪南大と準々決勝で対戦する。阪南大は須佐徹太郎前監督が副顧問として指揮。乾監督は「須佐先生と僕の60代ジジイ対ジジイの戦い。おじいちゃん対決って書いておいてください(笑)。楽しみな対決。どっちもベスト4を狙える位置に行くのは久しぶりなので、いい試合をしたい」とニヤリと意気込んだ。

(取材・文 竹内達也)
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