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12年ぶりの選手権で流経撃破し、静学に対抗。近大和歌山は「ここから」より高みへ

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近大和歌山高CB荒木宏心主将が身体を張ったディフェンス。強敵・静岡学園高を1点に抑えた。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[12.31 選手権2回戦 近大和歌山高 0-1 静岡学園高 フクアリ]

 1回戦最大の衝撃だった“プレミア勢”流通経済大柏高(千葉)撃破。もちろん嬉しく、反響も大きかったようだが、スタッフ、選手たちにとっては狙い通りの戦いと勝利で特別な驚きは無かったという。周囲からの目線が上がる中で迎えた静岡の名門・静岡学園高の2回戦。近大和歌山高(和歌山)は必勝を期して臨み、V候補を大いに苦しめて見せた。

 12月29日の流経大柏戦は1か月半掛けて準備し、臨んだ決戦だった。やり切った選手たちの消耗は大きく、藪真啓監督は「(静岡学園戦へ向けて)まず身体のケアのところに集中して、昨日もリカバリーのみできょうの朝のミーティングで確認だけして臨みました」と振り返る。

 選手たちに達成感はなく、前向きなメンタリティーで新たな強敵に挑戦。流経大柏戦同様、ポストに救われるシーンもあったが、近大和歌山は静岡学園得意のドリブルに距離感良く対応し、球際の攻防、スライドも徹底するなど守備意識高く戦う。クロスを上げられてもCB荒木宏心主将(3年)やCB澤一翔(2年)、GK後迫海吏(3年)が1本1本丁寧に弾き返していた。

 静岡学園のGK生嶋健太郎主将(3年)も「相手の守備が堅かった」と振り返る好守。また、攻撃面でも MF畑下葵(2年)の好パスやロングスロー、FW谷口金太郎(3年)の抜け出しなどで押し返し、流経大柏戦以上にゴール前のシーンも作り出した。後半には空いたスペースを的確についてクロス。特に前線やサイドプレーヤーの負担は大きかったが、彼らはハードワークを続けていた。

 相手が攻勢を強めた後半26分に失点。荒木は「前で身体を張ってくれている藤木(FW藤木皇成、3年)だったり、右サイドで田井(MF田井寛務、3年)が献身的に走ってくれていた。後ろは絶対に失点できないなという気持ちだったんですけれども、失点してしまったので申し訳ない気持ちです」とその1点を悔やむ。
 
 だが、全国屈指の技巧派軍団相手の1失点は想定内。藪監督は1点を奪い返せなかったこと、勝てなかったことを悔しがった。「子どもたちは勝つことを信じてやってくれました。最後スコアを動かすことができずに悔しいという気持ちがいっぱいです。(運動量が)どこまで持つかなと思ったんですけれども、最後まで走り切ってくれたのに申し訳ない。選手たちは良くやってくれたのに悔しいなと思います」と無念の表情。劣勢が予想される中、本気で勝利を目指して戦った。だが、2勝目を挙げることはできなかった。

 それでも、09年度大会初戦で近大和歌山が敗れてから12年間続いていた和歌山県勢の連続初戦敗退を自らストップ。県リーグ1部所属(来年はプリンスリーグ関西2部昇格)の進学校が、“全国リーグ”の流経大柏を破り、J内定3選手出場の静岡学園とも渡り合った。近大和歌山だけでなく、和歌山県のサッカーにとっても大きな2試合。「キンワカ、良いチームだな」「和歌山、やるな」と印象づける2試合でもあった。

 藪監督は「こっち来る前に小6のサッカーしている子に、質問されて、『流経大柏に勝てるんですか?』『勝てるよ』という話をして。和歌山の子どもたち、たくさんテレビを見てくれたと思うんですけれども、和歌山のサッカーにも少しは貢献、恩返しできたかなという気持ちと、チームとしても、チームの要求に対してより積極的に1年生、2年生がやってくれたりとか、ウチを目指してくれたりとか……ウチの成長とか、和歌山県の成長に少しでも貢献できたかなと思いますけれども、ここからだと思います」と思いを口にした。

 12年ぶりの選手権で記憶に残る戦いをした。だが、結果は悔しい2回戦敗退。目指しているステージはここではない。荒木は「まずここまでサポートしてくださった方々や、応援してくれた方への感謝は凄く持っていて、結果で恩返しできなかったのは凄く申し訳ないです。試合に出ていた2年生は経験があるので、自分たちを超えてもっと上に行って欲しいと思っています」と期待した。新たな高みへ。近大和歌山は「ここから」だ。

(取材・文 吉田太郎)

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