beacon

[MOM3915]那覇西FW新城旭(3年)_指揮官も認めるここ一番での集中力…期待どおりの一発で全国へと導く

このエントリーをはてなブックマークに追加

決勝点を記録した那覇西高FW新城旭(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.4 インターハイ沖縄県予選決勝 那覇西 2-1 名護高 タピック県総ひやごんスタジアム]

 篠突く雨にうたれて時折視界が遮られようとも、那覇西高のFW新城旭(3年)は首を垂れることなく左サイドで目をギラつかせながらゴールを見据えていた。何より、彼にとっては気持ち高ぶる決勝の舞台。ここ一番の強さを買ったチームの思いを十分に背負い、彼は期待どおりにストライカーとしての本領を発揮させた。

 梅雨の最中で迎えた決勝は、総体初優勝まであと一歩と迫った名護が相手。開始3分にMF比嘉隼(3年)がインスイングで放ったCKを直接沈めて那覇西が先制するも、同22分に名護が左サイドのスローインから素早くボックス内へと進入し、捕まえきれない那覇西を後目にMF深井呂衣(3年)が押し込んで同点とする。バチバチと演じられる両者のつば迫り合い。熱戦はハーフタイムを迎える。

「正直前半は全体に緩みがあって、それが失点にもつながった。けれど気持ちを切り替えて、取られても取り返す力は俺らにはあるんだと信じて後半に臨みました」。追いつかれたものの、失点がチームが引き締めるきっかけになったと冷静に振り返った新城は後半、シュートチャンスを演出する。

 ぬかるんだピッチを逆手に、那覇西はロングボールで一気に敵陣へと展開し、2年生センターフォワードのFW頭山亮太のくさびからアタッキングサードへと進入。そしてDFラインの背後を狙う新城の足元にボールが収まれば、自らドリブルを仕掛けてゴールを狙う貪欲な姿勢を見せる。後半5分すぎにはギャップを突いた新城が鋭くボックス内へと進入し、対角線上にシュート。ボールはゴールマウスに吸い込まれるかに思えたがわずかにカーブがかかり、右ポストの外側へと抜けていき、思わず天を見上げた。

 しかしチャンスを逃しても冷静さは失わず、気持ち切り替えて迎えた後半11分。那覇西は右CKを奪うと、ニアポスト付近で待つ新城の姿があった。インスイングで鋭く巻いたボールはゴール前で待ち構える新城の頭上へ。「ほとんど感覚というか、ボールは見えていなかった」ものの、ジャンプした瞬間ひたいに合い、首を縦に振って地面に叩きつけたボールは内側のネットを揺らして勝ち越しに成功。これが決勝点となった。

 ゴールを決めた瞬間、那覇西応援席へと全速力で向かった新城は「試合前日に、チームのLINEで『ゴールを決めたらあれをやるから』ってみんなに約束していたんです」と、空中で回転し両手を広げて着地するクリスティアーノ・ロナウドのゴールセレブレーションを披露。憧れの選手のパフォーマンスを有言実行で演じ、喜びを分かち合った。

 新人戦決勝(八重山商工戦)では2ゴールを決め、頂点を決めるこの一戦でも優勝へ導くゴールを決めきった。「あいつの勝負強さは折り紙付き」と平安山良太監督も認めるここ一番での集中力。「初戦以外は控えで置いていたんだけど、それは大事なところで力を発揮してくれる選手だから」と、指揮官は準決勝まで新城をスーパーサブとして起用した意図を話したうえで「ラッキーボーイとしての存在感は無視できなかったので決勝で起用した。ただそれは運というわけでなく、練習している姿を見ていてふつふつと湧き出ている様子もあったからやってくれるだろう」と、渇望がにじみでていたという。そして「2年のときまではイライラして自分を抑えきれないところもあったけど、今はメンタルが安定している」(平安山監督)ことも、様々な場面で計算できる選手として存在価値は高い。

 何より「中途半端なプレーはできない」と話す新城の責任感の表れはチームに推進力をもたらし、「去年はひとつも県タイトルを取ることができなかったからこそ、(新人戦・総体・選手権と)全部取る意識が強い」という今年の那覇西が挑む2大会ぶりの全国総体。「自分ひとりで点が取れるわけじゃない。名護相手にも見せられた『みんなの気持ちがひとつになる』ことで全国でも点に絡んで勝ちたい」と、新城は奮い立つ。

(取材・文 仲本兼進)
●【特設】高校総体2022

TOP