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[北京への道(10)]MF本田拓也(清水)

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 反町ジャパンの中盤のキーマンが今、大きな危機感を抱いている。MF本田拓也(清水エスパルス)は今年、U-23日本代表の3試合に出場。6月12日のU-23カメルーン代表戦では特に存在感を発揮し、中盤の底の位置で相手ボールへ次々と絡んだ。献身的な守備で役割を全うしたボランチの活躍で日本はカメルーンを完封。指揮官からも「守備に関しては“世界基準”に近づいてきている」と言わしめた。
 北京五輪メンバー発表前最終合宿である千葉合宿でも、中盤の底で球際での強さ、ディフェンス時の寄せの速さで相手の攻撃を消すプレーを見せている。その動きに対する評価は高く、五輪本番での先発も有力なように映る。それでも本田拓自身は「あせりがある」と口にする。
 原因はクラブでのプレーにあった。今季、五輪代表で唯一の大学生レギュラーとして法政大から鳴り物入りで清水へ加入した本田拓は、大分とのリーグ開幕戦で先発すると13節まですべてスタメンを務めた。昨季4位のチームで中盤の底のポジションを手中にしていた。安定したプレーを見せていた。だが、5月のトゥーロン国際大会出場後はベンチスタート。一時15位にまで順位を落とした清水は布陣を変更することで巻き返しを図りだした。そして本田拓の出番は減った。「他のチームで出ている(五輪代表)選手がいるのに。試合に出たい」と本田拓は表情を曇らせる。
 昨年まで所属した法大には確実に出られるポジションがあった。だが、現在はチームでのポジションが揺らいでいることで、これまでなかった不安が増してきている。14日発表の代表メンバー入りに対しても危機感でいっぱい。だからこそ明日の千葉戦、週末のJリーグでアピールするしかない、という決意はできている。
 大学時代、「オリンピックを意識していたことがなかった」と語る本田拓の意識が変わったのは、北京五輪のアジア2次予選、最終予選でピッチに立つようになってから。Jにいるわけでない自身にとって、五輪は遠い存在だった。それが結果を残し、チームも勝利を得ることで身近な存在となってきた。Jリーグではなく、大学サッカーの舞台でプレーしていても「頑張れば(反町監督が)見ててくれる」と思い、奮い立った。そして代表の座を渡さずにきた。五輪まであと1ヵ月まで来て落ちる訳にはいかない。今、頭の中にあるのは“五輪のために、最後まで全力でアピールする”という思いだけだ。 

(取材・文 吉田太郎)

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