beacon

再開8秒ゴールで奇跡の予感を演出。泥沼脱出のきっかけをつかみかけた鹿島

このエントリーをはてなブックマークに追加

Text alert@カシマ

スタジアムには強風が吹き荒れていた。自陣深い位置からの間接FKから再開した川崎フロンターレ戦。DF伊野波雅彦が蹴ったロングボールは、強い逆風に抗いながらMFダニーロの頭をかすめて相手GKの前へ。詰めたDF岩政大樹が利き足とは逆の左足を突き出し、執念のゴールを決めた。再開の笛から、わずか8秒での出来事だった。

赤く染まったゴール裏が沸き上がる。水色のユニホームが浮足立つ。徹底してロングボールを前線に送り込む鹿島は、その2分後には小笠原満男のFKを、ダニーロがヘディングシュート。これがバーを叩き、さらに押せ押せの時間帯が続いた。

16分間が過ぎ、ロスタイムは5分。誰もが奇跡を信じる中、ゴール前でチャンスを待っていた岩政の目の前をボールが通り過ぎた直後に、タイムアップの笛が鳴った。岩政は思わずその場に座り込んだ。

「すぐに点が入ったので行けると思ったし、相手もかなり悔しがっていたので、あとは時間の問題だと思っていた。勝ち点はゼロだけど、チームのアグレッシブさも出てきたし、そういうものが見えた試合。いい傾向かなと思う」と岩政。

ロスタイムに惜しいヘディングシュートを放った田代有三は「同点に追いつけるチャンスが自分にもあったので残念。でも、本当に負けたくないという気持ちをみんなが出せた」と悔しさをにじませながら手応えも口にした。

「あきらめずにやれば、こういう風にできるということを表現できた。残り6試合、変わらず頑張りますよ」。内田篤人は力を込める。ロスタイムを含めた21分間で放ったシュートは5本、そして奪った1ゴール。優勝争いは混とんとし、最後は得失点差が大きな意味を持ってきそうなだけに、鹿島にとっては意味のある再開試合となった。

<写真>鹿島が再開から僅か10秒、DF岩政(3番)の得点で1点差に詰め寄る
(取材・文・矢内由美子)

TOP