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【連載】南アフリカへのサバイバル(1)MF小笠原満男(鹿島)

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[1.29 練習試合 日本代表8-0鹿屋体育大 指宿]

 挨拶代わりの一発だ。MF小笠原満男(鹿島)が岡田ジャパンでの対外試合初陣で直接FKを叩き込んだ。主力組の右MFで先発した1本目の27分。左45度の位置でFKを獲得すると、小笠原が右足でクロス性の速いキックをゴール前に送る。ゴール前につめた味方には合わなかったが、GKの眼前でワンバウンドしたボールはそのままゴール右隅へ。だれかが触れば1点。触らなくても直接ゴールを陥れる技ありFKで“岡田ジャパン初ゴール”を記録した。

 ピッチを縦横無尽に駆けた。15分過ぎからは左サイドにポジションを移すなど神出鬼没な動きでボールを呼び込み、ワンタッチパスでリズムをつくり、チャンスと見るや鋭いスルーパスを前線に供給した。11分の先制点は、中央でボールを受けた小笠原が絡みながらの細かいパス交換から生まれた。

 初実戦とは感じさせない中盤の連係。ダブルボランチのMF遠藤保仁、MF稲本潤一とは「黄金世代」としてユース代表時代から一緒にプレーしてきた旧知の仲ということもあり、阿吽の呼吸は健在だった。「やり慣れている選手もいるので、そこは大丈夫です」と平然と語った。

 守備でも精力的にプレッシャーをかけ、球際の強さを発揮した。高い位置でスライディングタックルでボールを奪うシーンもあり、ゲームメイクやラストパスといった攻撃面だけでなく、ボール奪取力に長けた守備面でもアピール。「できるだけ前から取りに行くという守備の部分は意識していた。もっとボールを奪い取るところまで行きたい」と貪欲だった。

 「引いて守ってバランスを取る守り方じゃない。どれだけ失ったときの切り替えを早くして、寄せて取れるか。あのポジション(2列目)ではシュートまで行くか、ボールを失ったときに奪い返すことが求められている」。流暢に岡田ジャパンのコンセプトを語る姿は、初めての合宿参加とは思えない。

 2本目は鹿島と同じボランチでプレーしたが、「どこのポジションでも走る量は多い。走れないと話にならない。さぼっちゃいけないし、切り替えを早くしないといけない。長い距離も走らないといけない。やることは多い。鹿島でやっていることも基本的には同じだけど、前から取りに行く部分とかはここ(代表)はさらに強い」と、岡田武史監督が要求する役割を黙々とまっとうした。

 W杯イヤーに入ってからの初招集。限られた時間の中で自分を最大限にアピールするためにも、まずはチームコンセプトを理解しようという姿勢がはっきりと伺える。しかも、その順応度は驚くべき早さだ。

 エスパニョールで出場機会が激減しているMF中村俊輔がW杯をどんなコンディションで迎えるのか、不安もある。少なくとも小笠原が見せた可能性は、俊輔とは違ったチームの色、武器を期待させるのに十分なプレーだった。3大会連続となるW杯出場へ。国内最強の司令塔が確かな、そして大きな一歩を踏み出した。

<写真>直接FKを決めるなど中盤で存在感を発揮したMF小笠原満男

(取材・文 西山紘平)
※この連載では南アフリカW杯での登録メンバー23人入りを目指すボーダーライン上の選手をピックアップしていきます

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